我がミステリ遍歴(1)

ミステリ小説、それもいわゆる本格ミステリばかりを読み出すことになったのは、島田荘司『占星術殺人事件』と出会ったからだ。

読んだのは高校一年生の時、2002年の確か8月だったと思う。

手に取るきっかけとなったのは一本のゲームソフトの存在だ。当時PS2で発売された『かまいたちの夜2』。いわずとしれたサウンドノベル不朽の名作『かまいたちの夜』の続編である。

これの評判がとにかく悪かった。

無理もない。前作は我孫子武丸という、本格ミステリにもゲームにも一家言ある作家がシナリオを手がけていた。ミステリの謎解きの面白さと、サウンドノベルという当時新進のジャンルのゲームシステムが見事にクロスし、ミステリゲームとして類のない成功を見せた。

メインであるミステリー編はとにかく歯応えがあった。漠然と考えなしに選択肢を選んでいくと、間違いなく皆殺しのバッドエンドになる(笑)。日本中でいったいどれだけ透と真理(主人公とヒロイン)が死んだことだろうか。

とにかくそんな名作の続編なのだ。期待はいやがうえにも高まる。

だが「かま2」は本格ミステリを期待したプレイヤーを大きく裏切る。メインである筈のミステリー編はほぼ一本道で、2時間程度読み進めればあっさりクリアに至る代物になった。少なくとも前作のような頭を働かせて謎を解く作品ではなくなった。かくして発売直後のゲーム雑誌の読者ランキングなどではその筋のプレイヤーからいたく酷評されることとなった。

さて、これが自分には納得がいかない。

確かにミステリー編に限っていえば前作と比べて拍子抜けするほど簡単(というか単調)になった。だが、かま2はそれ以外のグラフィックや音楽など表現力の面で格段の進化を遂げている。今回監修と一部のサブシナリオに回った我孫子武丸に代わり入った田中啓文と牧野修により伝奇・SF・電波妄想要素が全面的に押し出され、ほぼ全てのシナリオが救いのないバッドエンド(真のEDにせよ!)を迎える後味の悪さもたまらない。かま2の世界観に心底やられた自分としては実に不満だった。

しかし、ここでいわゆる「本格ミステリ」読者なるものたちがいう本格ミステリとはいったいなんなのか。それが逆に気になったのも事実だった。

――ここはひとつ、本格ミステリとやらを勉強してみるのも悪くないかもしれん。

当時我が家の本棚には島田荘司『占星術殺人事件』があった。その本は何年も前からあって、毎日それを眺めるたび、「いつかはこれを読まなくてはな」と思っていたのだ。ちょうどいい機会だ。手始めにあれから手をつけよう。

それが自分にとって人生を大きく変える一冊となるとはまさか想像していなかった。

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