3.ラーメンタレの基本

ラーメンタレとはラーメンスープと合わせるタレです。醤油ラーメンなら醤油ダレ、塩ラーメンなら塩ダレをスープと合わせます。
※若干意味合いが違うと思うのですが、蕎麦つゆの素を「かえし」という事からラーメンタレの事も「かえし」と呼ぶ場合があるようです。

ラーメンのタレはどこの店でも秘伝中の秘伝です。なぜなら、タレの作り方さえ知ってしまえば簡単に独立されて店を辞められてしまうからです。修行中はスープの炊き方、チャーシューの作り方、味玉の作り方、などなど全部仕事としてこなしているので、タレ以外の部分は入店一ヶ月程度ですべて学んで知ってる訳です。「タレはお店で作らないの?」と思われるかもしれませんが、私が修行していた店ではマスターが自宅で作って毎日店まで持ってきてました(ベンツのSクラスで)。そのようなスタイルの店は今ではそんなに無いかもしれませんが、そこそこ流行っている店だと調味料屋さんに製造委託して作ってもらっていたり、自社製造工場(と言っても、アパートの一室だったりしますが)で作っていたりして、どちらも従業員にはレシピが分からない仕組みになっています。そんな「業界の秘密」を全部公開します。

醤油ダレとは醤油に色々な旨味を移し入れた液体だと思って下さい。
材料としては
①醤油
②みりん
③酒
④塩
⑤ナンプラー
⑥化学調味料
⑦昆布・乾物たち これくらいです。

まずは醤油から。
ラーメンタレでよく使われる醤油の種類は大まかにこのくらいです。

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・濃い口もうす口も大豆から作りますが、白醤油は小麦から作ります。

・塩分濃度:濃い口が17%前後、うす口が18%前後、白醤油が17%前後となっています。濃い口とうす口だと何となくうす口の方が塩分少ないのかと思いきやうす口の方がしょっぱいです。

最初に、自分のラーメンの味の核となる最高の濃い口醤油を決めます。(うす口と白醤油もこだわりたい場合は色々と選んでも良いと思いますが、間違えのないド定番があるので後でご紹介します)

さー、今すぐスーパーで全種類の濃い口醤油を買いに行こう!・・・
ではないです。
職人醤油というお店がありますので、そこから20〜30種類くらい取り寄せます。職人醤油さんは日本全国の醤油を100ccボトルで買える非常に便利なお店です。また、醤油の知識も豊富だったり、今ラーメン屋でよく使われている醤油の種類も把握されています。https://www.s-shoyu.com/

醤油が届いたら全種類をテイスティングします。舐めてみて一番ビビっと感じた物が醤油ダレに使うメインの醤油になりますので、決めたら直接醤油蔵へ連絡して取引をお願いします。「えっ、そんなんでいいの?」と思う方もいらっしゃると思いますが、大丈夫です!職人醤油さんに置いてある醤油はどれをチョイスしても間違えなく美味しい醤油ダレが作れます。※ちなみに、生醤油を作っているようないわゆる昔ながらの「蔵」に対しては価格交渉をしても嫌われるだけなのでしない方が良いと思います。

次にみりんです。

醤油に比べれば種類は少ないのですが、それでも何種類かはあります。一升瓶で1000円未満から5000円を超える物までありますが、無難なところで私はタカラ、ミツカン、マンジョウの本みりんを使っています。注意点として、醤油ラーメンには必ず本みりんを使います。安いからと言って「みりん風調味料」にすると本来のみりんとしての役割を期待できません。
二郎系の場合は「みりん風調味料+混合醤油」を使われるケースが多いようですが、二郎は二郎であってラーメンとは別物だと考えるようにします。

酒です。

ラーメンタレには何かしらの酒類を入れます。日本酒(料理酒は除く)、ワイン、焼酎、ブランデー、ウォッカなど何でも良いのですが、もちろんそれぞれ個性があります。実は全部試したのですが、結局のところ万人受けするのと女性受けが良いのはワインだという結論に達しました。当店の場合、醤油ダレには赤ワインを、塩ダレには白ワインを使っています。

塩もこだわればキリがないのですが、当店では瀬戸内の海水で作った粗塩を使っています。他に、岩塩や湖塩などの海水由来で無い塩もありますので塩ラーメンを看板メニューにしたい場合は色々と試してみても面白いと思います。

ナンプラー

これは隠し味的なアイテムで、東南アジア地域で魚を主原料にした醤油のような調味料です。日本で言うところの「しょっつる」とか「魚醤」と似たような物です。しょっつるや魚醤を使えればそれはそれで良いのですが、非常にコストが上がってしまいますのでナンプラーで代用するイメージですね。

化学調味料

=味の素のような調味料です。味の素と聞くだけで何故か毛嫌いされる方がいらっしゃいますが、ラーメンに化学調味料は必須アイテムです。「化調+脂(もしくは油)」がなければラーメンでは無いと言い切れます。これも種類があって、味の素、ハイミー、グルエース、いの一番など調べればもう少し出てきますが、どれも大差無いのかなという印象です。私は無難な味の素を適量使用しています。お客さんに「グルエース使ってないでしょ?」と聞かれた事が何度もあるくらい、適量を使えばかなりの補助的お役立ちアイテムになります。

昆布・乾物

これは入れれば入れるほど旨くなります。が、商売として成り立つ限度がありますので、適度な割合があります。

昆布=グルタミン酸 なので、「化調入れるんだから昆布いらないじゃん!」という意見もあると思いますが、私は昆布の旨味と化調は全くの別物だと考えます。自然由来と工場生産の物ですから当たり前ですよね。
昆布はあらゆる出汁の土台になりますので、おまじないのようにブランド品を使います。利尻昆布、羅臼昆布、日高昆布、細目昆布、真昆布など北海道の一級品を季節や相場によって使い分けています。

乾物(かんぶつです。飲み屋で言うかわきものではないです)とは、かつお節、鯖節、イワシ煮干し、アジ煮干し、タイ煮干し、干し椎茸、えび干し、アジ節、サンマ節、マグロ節、などなど数え切れないほどあります。ここは年間を通して安定して手に入れられる物であり、なおかつ、一般家庭であまり使われていない物もチョイスしましょう。

これらの物は近所のスーパーや業務スーパー等を何件か回ると家庭用で研究するには十分な材料が買い揃えられますが、乾物関係は専門店でないと手に入りにくいと思います。もちろんネット注文でも良いと思いますけれど、築地場外市場へ行くと全部揃うのと、「こんな煮干しもあるんだ!」という気づきもあるので実際にお店を回ってみるのも良い勉強になりますよ。

次は実際にタレの作る方です!


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