友②

友人も私も、高校へはいわゆるチャリ通だった。
友人の通っていた高校は、私が通っていた高校の目と鼻の先にあったので、時間が合えば一緒に下校することもあった。

ある日の下校中、友人を先頭にして、住宅街で自転車を漕いでいると、曲がり角付近で中学生の集団がたむろしていた。
急ブレーキをかけて、無言で通り過ぎた。
双方の距離がある程度離れた刹那、友人が


「あぶねぇな!ぶっ殺すぞ!」


と、叫んだ。
中学生の集団の反応があったかどうかは覚えていない。


数日後、そのイベントがあった地点の付近にある大きい本屋で友人と待ち合わせることになり、1人でゲームを物色していると、突然見知らぬ中学生4人に声をかけられた。

《俺らのこと覚えてる?》

「え、誰?」

《お前、俺たちにこの前喧嘩売ってきたよな》

「いや、知らないけど」

《この前チャリに乗ってるお前に"殺す"って言われたんだけど》


俺じゃねえ。

「いや、俺じゃねえ。」

《ウソついてんじゃねーよ、とりあえず外出ろよ》

中学生らの目を盗みつつ、俺は友人に「本屋に来ない方がいい」とだけメールしておいた。
私と友人は、中学3年生の頃に同じクラスであったことがきっかけで仲良くなったが、そのクラスでヤンチャなヤツが、体育の授業中に軽い怪我をしたことを友人が本人の目の前で笑ったことで、そいつに思いっきりボコボコにされた過去を思い出したからである。

人目のつかない高架下で、中学生に囲まれながら尋問が始まった。

《俺覚えてるけど、絶対お前だったよ。》
取り巻きもやんややんやと私を煽る。

「ちげえよ、俺じゃなくて俺の近くにいたやつだろ。(友人とは面識はないことを仄めかす。)」

《ウソついてんじゃねーって。》

何度か水掛け論を繰り返すうちに、向こうも私が言った訳では無いと思い始めたようで、

《お前じゃねえんだな、分かった 帰るわ。》

と、引き下がろうとした。

すると、取り巻きの1人が[土下座しろよ土下座ー!]と言い出した。

反射的に

「は?」

という言葉が漏れたといなや、右頬に衝撃が走った。

《調子乗ってんじゃねーぞ》

一発だけ殴られて、彼らは去っていった。


『なんで?』
『おーい』
『どこー?』
『本屋の駐輪場にいるわ』

と、友人からメールが入っていた。

耐え難い屈辱を覚えながら、友人が待つ駐輪場へ行き、開口一番
「お前が前絡んだ中学生に、私が逆に絡まれて殴られたんだけど。」
と言うと


『なんだよーお前呼べよー。』

と言われた。

「喧嘩売ったのはお前だとしても、私はお前を巻き込みたくないと思ったんだけど…。問題起こして停学になりたくなくない?」

『俺全然やるけどね(笑)』




うそつけ。

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