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愚者の道

中村うさぎ
愚者の道
角川文庫
2005年

冒頭にこんなことを言っては身も蓋もないが、本当はマツコ・デラックスさんの「アタシがマツコ・デラックス!」を紹介したかったが、絶版で手に入りにくくなってしまった。
でも、でも?ますます中村うさぎさんに失礼極まりない言い方になってきたが、この本は僕の固定概念を砕ききった1冊です。木っ端みじんです。
この本は大学生の頃に出会い、最初は中村うさぎさんという人を関東ローカルTV・Tokyo MXで放送されていた「5時に夢中!」を見て知ったところからです。コメンテーターとして登場していたマツコさんとうさぎさんは僕がいままで見知ったことのないタイプ。機智に富んだ発言ばかりで食い入るように見ていました。
そんな中、中村うさぎさんへの興味がふつふつと湧き、「愚者の道」を手に取ることになった。
買い物依存とホスト狂いを総括していく流れ。そのほとんどは内省的な話。自分というものに如何なる焦点をあてて紐解いていくかということが終始繰り返される。
そして、「自分を確かめたかったワケでもない。自分の正体を知りたかっただけなのだ。何かに依存するたびに出現する「見知らぬ自分」をおびえながらも受け容れて、空白だらけだった「自分」というジグソーパズルを完成させたかったのだ。」と結論づけられた。
確かに、自分というものは実体を捕まえられそうになると、するりと手をすり抜けていってしまう。
「「自分探し」とは「他者探し」に他ならない。」とも書かれている。
自分を愚者という他者と割り切り、文章化、言語化していくことで思考を深化しているさまは、読んでいてゾクゾクさせられた。
うっかりすると思考停止してしまう私にとっては刺激的な作品だった。
私の頸動脈に刃物を突きつけてくれる、そんな啓蒙書の1つとなっている。


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