見出し画像

12月になった日本選手権を戦うミックスダブルス:2024-25シーズンのスケジュールを見る②

前回の記事で、カナダのミックスダブルス五輪トライアルの日程が変わったことで、日本のチームのグランドスラム出場に影響がありそうだという話をしたのですが、“日程が変わった”といえば、ミックスダブルス日本選手権が12月2日から8日に行われることも、大きな日程の変化だと言えるでしょう。私なんかは、例年通り、4人制日本選手権の少し後、女子世界選手権の前に行われるとばかり思っていましたが、それもミラノ・コルティナ五輪への最後のチャンスとなる大会ですから、参加する方の選手も驚いたのではないかと思います。

ミックスダブルス五輪代表候補決定戦への切符

ミックスダブルス(MD)の五輪代表の決め方は、すでにご存知の方も多いと思います。昨年7月22日に発表された“日本代表候補チーム選考方法”によると、MD五輪代表候補になるには、実質的に3つの条件のうちのいずれかを満たさないといけません

  1. 2024年2〜3月の日本MD選手権優勝&2024年世界MD選手権出場(上野・山口)

  2. 2024年12月の日本MD選手権優勝&2025年世界MD選手権出場

  3. 2024年12月の日本MD選手権3位以上、かつ、決勝3日前の世界ランキング国内最上位

この3つの条件のいずれかを満たせば、2025年9月末までに開催される代表候補決定戦には出場できます。つまり、今年12月の日本MD選手権の結果により、代表候補決定戦の3つの椅子のうち、2つが決まる可能性があるということです。

日本MD強化委員会推薦チームの顔ぶれ

現時点で今季の日本MD選手権に出場する権利を持っているのは、前回優勝の上野・山口と前回準優勝の小野寺・前田です。この2ペアに加えて、強化委員会推薦チーム6ペアと地方ブロック代表チーム10ペアに出場権が与えられるというのが、現在の日本MD選手権競技形式です。

地方ブロック代表は今後(3月開催のころよりも急ピッチで)行われる予選で決まるので、まだどういう選手が出場するのかわかりませんが、強化委員推薦チームの候補6ペアは6月21日に発表されました。

  • 小穴・青木(小穴 桃里・青木 豪):現世界ランキング4位、前回3位

  • 松村・谷田(松村 千秋・谷田 康真):現世界ランキング5位、前回4位

  • 田中・佐藤(田中 萌珈・佐藤 航英):2024年ユース五輪にMD代表とミックス4代表(セカンド)として出場

  • 札幌国際大学TA(敦賀 心羽子・阿部 悠希):敦賀選手は前回大会にも出場、阿部 悠希選手は前回日本MD出場の阿部 悠人選手(相澤・阿部)とは別人

  • 札幌国際大学MS(三浦 由唯菜・佐々木 彩斗):前回6位、今回からMDの部が始まるワールドユニバーシティゲームズ日本代表候補にも共に名を連ねる

  • 北澤・臼井(北澤 育恵・臼井 慎吾):北澤選手は2018年準優勝、臼井選手は前回5位

現状ではまだ“候補”ですが、6ペアの枠に対して合宿参加ペアも6つなので、特に問題がなければ、この6ペアがそのまま出場するのだと、私は思っています

ミックスダブルスの海外遠征はどうなる?

今季のMDスーパーシリーズの日程と開催地

すでに出場が有力視されるこの8ペアのうち、積極的に海外の大会に出場しそうなのが、小穴・青木松村・谷田です。昨季はMDの大会の中でも特にランキングの高いチームが集まるMDスーパーシリーズで共に優勝した2つのペアですが、今年もMDスーパーシリーズに参戦するのではないかと思いますし、スーパーシリーズ側からの強いお誘いもきっとあることでしょう。

今季のMDスーパーシリーズは、以下のような日程になりました。昨季から2週連続で開催されることが多く、海外からの遠征ペアに配慮されている印象でしたが、今年はさらにその傾向が強まり、7大会中6大会が2週連続での開催となりました。開催地も西部・中西部・東部沿岸部と隣接する2つの州での2週連続開催で、さらに海外からでも、カナダ国内の遠方からでも、参加しやすくなりました。

24-25シーズンの主な大会

白熱する世界ランキング国内最上位争い

MD五輪代表候補決定戦に出場するために、どのペアも優勝を狙う訳ですが、世界ランキング国内最上位を狙えるペアにとっては、国内最上位で大会を迎えることも重要です。昨季を世界4位で終えた小穴・青木と世界5位で松村・谷田が昨季と同じような頻度でMDの大会に出るのであれば、この2つのペアの争いになることが有力ではあります。日本MD開始時点で国内最上位なら、前回3位だった小穴・青木の場合は五輪代表候補決定戦への出場が決まりますし、松村・谷田の場合でも今大会で3位までに入れば良いことになります。そして、どちらのペアにも言えることですが、世界ランキング国内最上位で、なおかつ日本MDに優勝すれば、五輪代表争いを2チームでの争いに持ち込むことができます

ただ、日本MD開始時点でどういう計算式でポイントが決まるのかは、現時点ではまだわかっていません。昨年を参考にすると、「昨季のポイントの50%+今季の大会5大会分」または「昨季のポイントの37.5%+今季の大会6大会分」ぐらいの計算式になると予想されます。仮に11月までのMDスーパーシリーズにすべて出場するとなると、それで4大会分にはなりますが、できることなら、もう1〜2大会出場して、そのポイントも計算に加えたいと考えるでしょう。

ここで再びカナダMD五輪トライアルの影響が出てきそうです。11月のMDスーパーシリーズ2大会は、その前後の週に予選会があるため、1回の遠征で3大会出場するのは難しそう。かたや去年よりも2週間ほど早く開催される9月のMDスーパーシリーズ2大会の時期は、例年だとまだ大会自体が多くない時期です。仮にその前後の週に大会があっても、MDスーパーシリーズのような大きなポイントが稼げる大会かどうかはわかりません。

獲得ポイントの大きなMDスーパーシリーズのような大会では、ポイント差も大きくなるので、そこでの成績が大切なのは当然です。ただ、同時に、5大会目・6大会目でのポイントをどう加算できるかも、国内最上位争いにとって注目すべき点となるでしょう。円安のご時世でどれだけ遠征費を確保できるかも現実的には大切でしょうし、今季の強化指定がエリートAなのか、エリートCなのかも、この点で影響するのかもしれません。機会があれば、ぜひ応援するペアを支援してあげてください。

4人制との掛け持ちはどうする?

日本MD出場権を持つ前回の優勝・準優勝ペア

MDの話になると、MD専門で活動するペアの話になりがちですが、前回の日本MDでは4人制を中心に活動する選手4人が決勝を戦いました。そして、上野・山口と小野寺・前田は今季の日本MDの出場権を獲得し、優勝した上野・山口は強化指定のエリートBにも名前を連ねています。令和6年度の強化委員会の事業計画には強化事業の課題として“エリート強化チーム 3 チームに海外強化合宿を実施させる”と明記されているため、海外で有力チームと練習試合をするのか、海外の大会に出場するのか、どういう形になるのかわかりませんが、上野・山口はどこかのタイミングで“海外強化合宿”を実施するのかと思います。(とか言ってたら、三浦・佐々木ペアや小笠原コーチと一緒に6月24日から韓国でのMD合宿に行っているようですね。)同じ母体のチームに所属し、世界選手権にも出場したペアですから、4人制の出たい大会のない週にスケジュールを合わせて、スーパーシリーズに出てみる…というのは面白そうですけど、今季はなさそうかな…。(ただの予想です)

一方で、小野寺・前田は強化指定には入っていませんし、母体の違うチームの選手のペアで、日本MDの準備をどこで、どういうタイミングでやるのかな?という疑問は浮かんできます。正直に言えば、2人が優れたカーリング選手なのは当然知っていましたが、去年の推薦ペアが発表された時には準優勝まで行くとは思っていませんでした。ただ、初めて組んだペアで準優勝できるのは、個人の能力とその組み合わせの相性が良いのではないかと思います。推薦ペアになって、日本MDを一度経験して、もう1段階バージョンアップした小野寺・前田が見たいなぁという期待は、私の中では結構大きいです。(ちなみに、今年から組む北澤・臼井ペアには、去年の小野寺・前田ペアに対するワクワク感と似たものを感じています。)

4人制チームのスケジュール発表が余計に気になる

4人制のチームの中でも、次回の日本MDに選手が出ないチームもあります。ひと昔前の日本MDと言えば、“ロコ・ソラーレのどの選手のペアが優勝するのかな?”みたいな時期もありましたが、昨年あたりからの選手の発信を見る限りでは、ロコ・ソラーレは4人制に絞って活動するようですね。同じくTM軽井沢からも選手は出場しないようで、“もしかすると4人制のエリート強化指定Aのチームには4人制でがんばってもらう方針になったのかな?”という風にも見えます。前回の日本MDに複数の選手が出場していた北海道銀行とコンサドーレからも、次回の日本MDには選手が出ないようです。日本MDが12月になったことで、直前の週にあるグランドスラム「ナショナル」に出たいかどうか、そして、直後の軽井沢国際との兼ね合いをどうするかも、検討課題だったのかなという気はします。

そう考えると、私なんかは、それぞれの4人制チームの活動スケジュールを知るのが、昨年よりも楽しみになってきます。チームや選手の考えは直接聞いてみないとわかりませんが、前回の4人制日本選手権の男女上位5チームずつの中からMD日本選手権に3チームずつが選手を出していることになります。ロコ・ソラーレ偏重だった頃よりも、いろいろなチームにミックスダブルス慣れした選手が増えることは、ミックスダブルス的には良いことな気がしています。そのチームがいつカナダから帰ってくるのか?軽井沢国際には出るのか?は、日本MDが3月だった頃には問題にならなかったことですが、12月開催だとこういう各チームのやりくりも必要になりそうですね。

さぁ、世界ランキング国内最上位争いも、日本MD選手権での優勝争いも、どういう展開になるのか、今からもうすでに楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?