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激動の2シーズンで得た経験:🇰🇷韓国(チーム ハ・スンヨン)

今日は、2023女子カーリング世界選手権で、ロコ・ソラーレの9戦目の相手、韓国代表チーム ハ・スンヨンについて、調べたことをまとめてみたいと思います。

高校生チームから、世界的な次世代の有望株へ

このチームの元となるチームが最初に世界から注目を集めたのは、2016年の3月だったでしょう。韓国の16歳の高校生からなるチームが世界ジュニア選手権を勝ち上がり、3位に輝きました。韓国ジュニア代表としては、その2年前の銀メダルに続き、2つ目のメダルでした。世界ジュニアではその後も4位、6位、5位と、安定した好成績を残し、2020年には🥈準優勝に輝きます。

このチームは、キム・ミンジ選手がスキップのチームで、サードのキム・ヘリン選手(Kim Hye-rin)とセカンドのヤン・テイ選手(Yang Tae-i)は、現在のチームと同じです。ソウル郊外ウィジョンブ市(議政府市)のソンヒョン(松峴)女子高校のチームでした。2016-17シーズンからは、現在リードのキム・スジン選手(Kim Su-jin)も加わりました。その10月には🇨🇦カムループスで行われた「Kamloops Crown of Curling」という大会では、決勝で🇯🇵ロコ・ソラーレを破って、大会初優勝🥇を果たします。

一方で、韓国選手権では、キム・ウンジョン選手(Kim Eun-jung)率いる慶北(ギョンブク)体育協会が王者として君臨。キム・ウンジ選手(Gim Eun-ji)がスキップの京畿道(キョンギド)庁も含めた争いの中で、高校を卒業し春川(チュンチョン)市役所のチームとして臨んだ2018年に🥇優勝を果たします。

ついに韓国代表の座を手にした2018-19シーズン、さらに怒涛の活躍を見せます。11月のパシフィックアジア選手権では、決勝で🇯🇵ロコ・ソラーレを破って🥇優勝。この年開かれたカーリング・ワールドカップでは、第2節で🥈準優勝、第3節で🥇優勝。翌年3月には、まず、冬季ユニバーシアードに出場して🥈準優勝。その1週間後に行われた世界選手権では、3位決定戦で🇯🇵中部電力を破って、🥉銅メダル獲得。

4月には、パシフィックアジア王者として初めてのグランドスラム「チャンピオンズ・カップ」にも出場します。シーズン開始時に121位だったWCF世界ランキングも、シーズン終了時には12位まで上がっていました。

順風満帆な1年を過ごし、翌2019-20シーズンには、1学年下の現在のスキップ、ハ・スンヨン選手(Ha Seung-young)がチームのサードとして加わります。ただ、シーズン冒頭の韓国選手権は、キム・ウンジョン選手が産休で不在の大会でしたが、キム・ウンジ選手の京畿道庁に優勝と韓国代表の座を奪われました。それでも、前年度のランキング上昇により、グランドスラム「ツアー・チャレンジ」のティア2に出場すると、見事🥇優勝

そして、優勝に伴い、2020年1月のグランドスラム「カナディアン・オープン」の出場権を獲得すると、韓国女子チームとして初の決勝進出を果たし、🥈準優勝。さらに、2月には前述の世界ジュニア選手権🥈準優勝と、引き続き、輝かしい成績を残しました。

2020-21シーズンは、COVIDの影響で大会が大幅に減りますが、それでも、韓国の女子チームとしては唯一、グランドスラム2大会に参加しました。

スキップを失った21-22シーズン

このように10代の頃から優れた成績を残してきたチームですが、翌シーズン、事態が一変します。

まず、2021年6〜7月に行われた北京五輪代表選考でもあった韓国選手権では、準優勝に終わります。一方で、7〜8月に行われた韓国ミックスダブルス(MD)選手権で、当時スキップだったキム・ミンジ選手が優勝し、韓国MD代表になります。これにより、MDの活動が優先されることとなり、キム・ミンジ選手は、4人制チームでの活動から一時的に離れることになりました。

その年に出場した主要大会は、国内の大会、招待されたグランドスラム2大会と、その前後の大会だけ。出場したグランドスラムでも、予選通過はなりませんでした。その間は、セカンドだったキム・ヘリン選手がスキップを務めていましたが、十分な活動ができたとは言えなかったでしょう。

そして、MDに専念していたキム・ミンジ選手は、チームに戻ることなく、キム・ウンジ選手率いる京畿道庁チームへ移籍。スキップを失い、チームとして再出発が必要な状況に追い込まれることになりました。

韓国代表として駆け抜けた22-23シーズン

こうして迎えた22-23シーズン、今まで3強が争ってきた韓国選手権も今後は「2強」の争いかと思われた中、決勝でキム・ミンジ選手のいる京畿道庁チームを倒し、🥇優勝。新しいチームで韓国代表に返り咲くことになりました。

今季は、どうぎんカーリングクラシックから積極的に遠征を行い、ここまで12大会に出場して、9大会で予選通過。🇨🇦カナダ到着直後には予選敗退も目立ちましたが、9月には🇺🇸アメリカでの大会「CURVE US Open of Curling」で優勝するなど次第に成績が残せるようになりました。また、韓国代表として、パンコンチネンタル選手権🥈準優勝、また、前回準優勝チームでもある冬季ユニバーシティゲームズにも参加して、こちらも🥈準優勝。そして、世界選手権出場と濃密な1シーズンを過ごしていることでしょう。

次の韓国選手権に向けて

ほとんどの国では、世界選手権前の冬の時期に国内選手権を行い、世界選手権やグランドスラム最終戦が終わると、シーズンオフに入りますが、カーリング強豪国の中では、韓国だけがまったく異なる年間スケジュールで動いています。韓国選手権は、毎年6月から7月にかけて行われるからです。その年の韓国代表になるかどうかで、その先10ヶ月の過ごし方が大きく変わる、極めて大切な大会です。

韓国のトップチームにとって、春先はパフォーマンスを上げていく時期なのでしょう。前回の世界選手権でも、江陵(カンヌン)市役所へと所属が変わった🇰🇷キム・ウンジョンのチームが、準決勝で🇨🇦を破って🥈準優勝していますが、ピークの持っていき方が他の国とは違うのかもしれません。

韓国選手権は、競争の厳しい大会です。キム・ウンジ選手がスキップを務める京畿道庁のチームは、キム・ミンジ選手が加入して以来、以前にも増してグランドスラムなどの主要大会で活躍しています。反対に、地元江陵市で開催される世界MD選手権やユース五輪もあってか、🇨🇦カナダでの活動が抑え気味だったキム・ウンジョン選手のチーム江陵市役所も、韓国選手権に照準を当てているようで、引き続き怖い存在です。

この2チームに対して、今シーズンの経験を活かして韓国代表の座を守れるのか。この世界選手権は、そのための重要な力試しなのかもしれません。


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