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2組の先輩後輩は欧州選手権の再現を果たすのか: 🇩🇰デンマーク(チーム デュポン)

ここでは、2023年女子カーリング世界選手権で、日本代表ロコ・ソラーレが初戦で対戦する🇩🇰デンマーク代表について、思いの丈をつづってみました。

代表を支えてきたデュポン姉妹と念願の欧州選手権優勝

カーリング界で🇩🇰デュポン姉妹(姉 Denise Dupont:セカンド、妹 Madeleine Dupont:スキップ)の存在を知っている人は少なくありませんが、2022年欧州選手権で🇩🇰デンマークが優勝すると予想していた人は、そんなに多くなかったはずです。初戦にスウェーデンを破ったかと思えば、スイスも倒して6連勝スタート。1試合落としますが、その後も決勝でスイスに再び勝って見事な優勝でした。

そして、欧州王者として臨むこの世界選手権。それでも優勝候補に挙げる人はあまり見かけません。世界選手権には姉妹で10回以上出場していますが、最高成績は2007年青森大会の準優勝。世界大会での好成績は、ほとんどが2000年代のものです。欧州選手権の優勝者インタビューで、M.デュポン選手が「もうこの場所には立てないかもしれないと思っていた」と言っていたのも、うなづけます。

3人の若い選手たち

ただ、私は姉妹と共に戦う3人の若い選手たちに注目しています。

サードのハルセ選手(Mathilde Halse)は、2022年欧州選手権優勝の立役者かもしれません。予選でのショット率は、サードの中でトップ。つまり、🇨🇭ティリンツォーニ選手や🇸🇪ノッケンハウアー選手よりも上だったことになりますし、2位の🇳🇴ルルヴィク選手が78.2%だったのに対し、84.4%という大差をつけています。

ジュニア時代はスキップとしてB選手権からの昇格(2020年世界ジュニア出場・6位で次回の出場権獲得)を決めたこともある選手です。デンマーク代表には2017年頃からリードとして選ばれ始め、2019ー2020シーズンには、スキップとして欧州選手権で世界選手権出場権を獲得。デンマーク選手権優勝も経験しています。(ちなみに、その前はフィギュアスケートの選手だったようです。)

世界選手権代表に入ったのは、2021年(サード)からですが、🇩🇰デンマークはその大会で2011年以来のプレーオフ進出(5位)を果たすと、2022年も連続でプレーオフ進出(5位)。デュポン姉妹との相性も良さそうです。

そのハルセ選手とジュニア時代からチームメイトなのが、リードのラーセン選手(My Larsen)とオルタネイトのランダー選手(Jasmin Lander)。欧州選手権のラーセン選手は、長身から効果的なスイープが印象的でした。オルタネイトのランダー選手は、ミックスダブルスのデンマーク代表にも2回連続で選ばれている選手です。(写真左がラーセン選手、右がランダー選手)

2組の先輩後輩か、2組の姉妹か

ただ、「若い人に任せても、もう大丈夫」というほどの安定感はまだないのかもしれません。欧州選手権で唯一負けた🇹🇷トルコ戦は、姉のD.デュポン選手に変わって、ランダー選手がセカンドで先発した試合。点差、ショット率とも決して悪くはなかったのですが、ハーフタイムにD.デュポン選手を交代で戻し、それでも結局、5-10で敗戦。

やはりまだデュポン姉妹+若い選手2人という方が、バランスは良いのかもしれませんね。試合を見ていると、ポジションのせいもありますが、セカンドのD.デュポン選手はリードのラーセン選手と、スキップのM.デュポン選手はサードのハルセ選手と、よくコミュニケーションを取り合っていて、あたかも2組の先輩後輩、または2組の姉妹が助け合って試合をしているようにも見えます。

デンマークにとってのカーリングと世代交代

実は、🇩🇰デンマークにとって冬季五輪のメダルは、1998年長野五輪の女子カーリング銀メダル1枚しかありません。北欧のイメージが強いですが、グリーンランドを除けば平坦で小さな国です。だからこそ、女子カーリングデンマーク代表には、密かに期待が集まっているのではないかと思います。

とはいえ、選手層の厚い国ではありません。2023年のデンマーク選手権も出場はわずか2チーム。もう1つのチームも、デュポン姉妹の前に代表として活躍したイェンセン姉妹とその娘さんのチームです。

現在の代表チームも、自由に好きなだけ遠征ができるような環境ではありません。今季出場した主要大会はわずか5大会。それもほとんどが欧州の大会で、レンタカーでコペンハーゲンから向かっているようです。(そんな時でも「遠征の準備」とか言って、家で焼き菓子を用意したりしていて、楽しそうなのですが…。)

https://www.instagram.com/stories/highlights/18334017532036554/

そのような環境だからこそ、今回の世界選手権に出る若い3選手は、デンマーク女子カーリングの希望の星だと言って、間違いないでしょう。プレーオフのような緊迫感あふれる試合をたくさん積んで欲しいと思うと共に、今回の勝ち負けだけでない貴重な経験をたくさん積んで欲しいと思うばかりです。

とことん楽しそうなチーム

いつ見ても楽しそうなのは、このチームの良さです。日本では、一度波に乗せると手がつけられなくなることから「イケイケデュポン」(広めたのは、おそらく吉田姉妹)というフレーズでも有名ですが、このチームの楽しそうな様子は欧州選手権の実況解説陣も毎試合のように紹介されていました。(グランドスラムの中継で「彼女たちはいつも楽しそうね」と言われているのは、ロコ・ソラーレの方ですけどね。)

そんな楽しそうに試合をしている様子が見られるならば、きっと勝ち星もついて来ているでしょうし、欧州選手権に続いて、周りの予想を覆してくれる可能性も大いにあるのではないでしょうか。


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