はね

翼が欲しいと、暫く
空を描いていた。

悲しいね、と、笑う
嬉しいね、と、泣く
健気な蕾のまま
新しい四月を待つ。
君の名前は知らないけれど。
知っていたとしても
知らない日々を捧ぐ。

魂に触れたかったわけではなく
欲しがった願いの帰結が
偶然、翼の形になっただけ。

等高線も気圧配置も
心理戦に勝利を戴冠するためには
不要で。そんな言い回しも
下品極まりなく、吐く、吐く、吐く。
綺麗事は戯言と
舗装された金の道に、唾と煙草を棄てる。

嫌な生き物にはなりたくない、と
粋な焼き物に敵いはしない、と
紆余曲折を正道にしたくて
支離滅裂を連れ立って
まともな人間らしい群れの中
しゃがみ
また、立ち
しゃがみ
また、立ち
くしゃみ。

悲しいね、と、笑う
嬉しいね、と、泣く
移り気な風の声に
苛立ち気味な五月
髄に刻まれた君の名前と、すべて
知っていたとしても
知らない日々を捧ぐ。

微かでいい
清純な空気が吸いたいので
羽が欲しい、と。
羽くらいで丁度いい、と。

空を描き終えて
赤茶けた画板と手紙が
記憶の断片に。
乖離してしまった
愛情の余白に。

『はね』

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