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【新世代Aリストが頂点へ】アーティスト格差が業界評価を逆転へ

もう過去のフォーマットは通用しない。現代を駆使し、安息を捨て、ストイックの果てにコミュニティだけを信じるアーティストが頂点に立つ。このトピックでは、「ストイックのこじらせ方」を、知ることができる。凡庸な人生のまま業界と共に枯れることを諦められないアーティストの、ために書く。

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アーティスト情報局:太一監督
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 “勝つ”とは捨てるにあり 』

夢を描き追い続けて引き寄せようとする者の時代は過ぎた。夢は叶わず追うから逃げられ、引き寄せた先で奪われた者の怒りを買いながら出世できたのは、昭和までだ。

平成を通してスタンダードの真裏に存在していた“ストイック”にこそ、現代という方程式が機能し始めた。最適化された最新フォーマットは、ストイックが持つ“シンプルさ”に適合しており、その効果は絶大だ。

そこで、日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際ニュース:ヤヒヤ アブドゥル=マティーン2世が、ハリウッドの新たな「Aリスト」としての地位を獲得

エミー賞を受賞したばかりのこの俳優は、「キャンディマン」、「アクアマンII」、「マトリックス4」など、次々と話題作への出演が決まっている。「顔を上げるとキアヌがいて、“しまった!本当にマトリックスの中にいる“と思ったよ。」ヤヒヤ アブドゥル=マティーン2世が語った。

彼のこれまでの最大の出演作は、Netflixで配信されたバズ ラーマン監督の知られていない作品「The Get Down」の6番目の役と、映画「ベイウォッチ」の警官役に過ぎない。切っ掛けは、HBOのドラマで“エミー賞の助演男優賞”を受賞したこと。無名からわずか3年で、アブドゥル マティーンはハリウッドの新しい「Aリスト」としての地位を確保したことになる。

メジャースタジオ製のハリウッド大作映画が国際映画界を牽引していた時代には、「Aリスト」というラベルの力は強大だった。企業やブランドIPの助けを借りずに、自身の知名度によって映画を製作、公開できる俳優を意味していた。現在では、その基準を満たす俳優は、ほぼいない。レオナルド ディカプリオ、トム クルーズでさえ、ヒット作や前作の“ブランドIP”に依存している。

その代わりに、「新しいAリスト」は“脇役の中で際立った存在感”を示し、その幅の広さを証明している。大手メジャーのスタジオは次の9桁台(※110億円以上)のギャンブルに彼らを起用しようと、各国ライバルと競い合っている状況である。

アブドゥル=マティーンは、映画の種類ではなく、その“映画を作る人のタイプ”を指針にしているという。「私は今、“コミュニティ”を探しています。作品の企画ではなく、作品に相応しい“人”を探しています」

賃貸住宅のキッチンでこの「Aリスト俳優」はAir Podsをいじり、健康に良さそうな緑色の飲み物を飲みながら、Zoomインタビューに臨んでいる。彼は現在、5ヶ月間の撮影期間中、1週間の貴重な休暇を取っている。

「考えすぎかもしれません」と彼は認める。「仕事をしていないときも、仕事のことを考えすぎています。次の仕事を考えたり、次のクリエイティブなことを探したりしています。これは私の脳がそういう仕組みになっているだけですよ」神経症の気配を感じ取ることはできない。「俳優は賢くも強くも面白くもない。自分が立っている地面を、確保するだけです。そこから世界レベルの演技力をはっきすれば、“映画スター”になれるのだと思います」

彼はヒーローなのか、悪役なのか。彼のプロジェクトへの取り組み方には、常に疑問符がつきまとう。また、彼はすべてをさらけ出しているわけでは無い。彼が演じる多くのキャラクターには、何かしらの警戒心がある。 - AUGUST 01, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 ニュースのよみかた: 』

もう現れない、と想われた最上位映画俳優「Aリスト」が誕生した。テクノロジーとプラットフォームを使いこなす現代的な彼は映画企画ではなく“コミュニティ”を信じる新世代、という記事。

とうとう、ここ「アーティスト情報局」で語り通してきた“最先端バカの自暴自棄ストイック”という生き方を通している俳優が、ハリウッド映画界の頂点に立った。旧来の大名商売に依存しつづけて高齢化し、“スターブランド”どころか一般人常識にも遅れた「ベテラン大物」たちが枯れ始めた現在に、誰の力も企業支援も必要とせず、「自身のブランド価値」だけでプロジェクトの全てを実現できてしまう新生代が、登場したわけだ。

「新しいAリスト」は、俳優に限らない。
監督とプロデューサーへと派生する。
もうこれまでの映画業界フォーマットは、通用しない。

『 休暇と趣味が必要な人生に、疑問を持ってみる 』

疲れるから休む。楽しむために趣味を生きる。それは、退屈な人生に疲れているのかもしれない。そもそもの“ストイック”には、休暇と趣味が必要にならない。ストレスは無くワクワクが増幅していく日々にアーティストは、ただ手を、頭を、心を解放するだけだ。気付けば作品が誕生し、その活動が評価され、成果を生む。

こんな“ご都合”だけの有頂天夢想に聞こえる生活だが、それは誰にも実現可能だ。国際的な成功者たちは軽々と生活を最適化し、自身のワクワクを積み上げて、作品を生み、評価を得て、成果を積み上げている。

『 ストイック生活の最適化方法 』

人生の中の非効率を、捨て続けるだけである。「それができれば苦労しない」なんて声が聞こえそうだが、ならば「夢」の方を捨ててしまえば良い。

徹底的にこじれたストイックは、シンプルかつしなやかで、どう痛めつけられても傷すらつかない。“失うものの無い人物”が、頂点に立ち始めていることには、気付いているだろう。何かを欲しい人、誰かを護りたい人、夢がある人は、何も持たない者にはかなわない。シンプルすぎて、書くことすら無い。

だからこそ確認せねばならない、なぜ“ストイック”がいま各界の頂点に影響を与えているのか、気付いているだろう。その“業界”が瓦解したためだ。


『 編集後記:』

車を運転していると、“移動”の意味を考えさせられる。
減り続ける燃料はしっかり観える化されており、自身の行動が消費に観合っているかどうかを問われているかのよう。継続的なストレスと緊張からくる感情のささくれに、平静は乱される。二度と合わないであろう運転席同士の譲り合いに、得も言われぬ安らぎをおぼえる。移動し続けながら、コントロール不能な時間に身を委ね、そもそもにわたしは“この移動”を価値化できているのだろうか、と自問する。やがて、“でも楽しいのだ”と認めるに至る。

わたしはまだ、弱い。

そもそもにコントロール不可能な才能たちが生み出した断片にやむを得ないルールのみを反映しながら、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記