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【逆境が武器になる】ガラパゴス日本を極めれば、魔法が起動する

日本人アーティストたちが世界を知らないのは問題だが、世界もまた日本を知らないただし、認知度は高い。それは“知らない国日本”の印象活用効果が大きい証明でもある。このトピックでは、「マイノリティの活用法」を、知ることができる。ブランドを気取ってもインディペンデントはおろか実のところ趣味人でしかないアーティストの、ために書く。

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アーティスト情報局:太一監督
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 ローカル専業は絶望だが、ローカル専門は最強 』

断定的な物言いになるのは、正直でいたいためだ。ここ「アーティスト情報局」は完全アーティストびいきの情報エリアなので、気遣いはしない。

日本に生まれただけで日本マーケットを生きている“ローカル専業”のアーティストは間もなく、時代に忘れられて消える。食べていけるかどうかの問題では無く、存在を認識されないようになるので救えない。

一方で、各国最先端のデファクトスタンダードを理解しているここの読者たちならばこそ活用可能な武器に、「ローカル専門」という独占価値がある。

こと映画に関して概要を共有するなら、
商業マーケットの第1位は米国、第2位は中国、第3位日本。“映画ブランド”を生成する中枢は、フランス。次点でイギリス。映画マーケットの頂点は軒並み“アニメーション映画”が独占しており、そのアニメーションの最大ファクトリーは米国。しかし、アニメーション“ブランド”の頂点は圧倒的に「日本」である。

どうだろうか。
マーケットの米国、ブランドのヨーロッパ、ときどき日本というこの図式にこそ実は、日本で活躍するアーティストが“世界最強”になれる巨大なチャンスが眠る。

欧米は、アジアに詳しくない。
日本は、世界の上位にランクしつつアジアのスペシャリスト。
さらに日本のアーティストたちは、「日本マーケットの専門家」だという事実だ。日本は活用方法一つで、世界最強の地位に立てる。業界では無理、運営管理企業が弱いために。作品単位では無理、国際ロビー活動のプロフェッショナルが数名しか存在しないために。アーティスト個人では無理、デファクトスタンダードの基礎も知らないために。

各国デファクトスタンダードに精通しているプロフェッショナルと組めば、国際作品と組めば、自らの活動域を劇的に拡大する覚悟を持てば、
日本のアーティストは、世界の頂点で活動できる。

そこで、日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際ニュース:「No Time to Die」のプロダクションデザインは、古典的なジェームズ・ボンド映画へのオマージュ

「No Time to Die」では、ボンド映画の特徴のひとつである、世界各地の素晴らしいロケーションでの撮影を惜しまない。ダニエル クレイグが007を演じる最新かつ最後の作品は、イタリアのマテーラから、ノルウェー、デンマーク、ジャマイカ、ロンドンへと移動する。

驚くべきシークエンスはキューバで行われますが、当然ながらその場所は使えない。そこで制作チームは、ジャマイカでキューバに扮していくつかの外観を撮影した後、英国のパインウッド スタジオをハバナに変えて残りのシーンを撮影した。

プロダクションデザイナーのMark Tildesley氏が語る。「子供の頃に映画を見ていた時の気持ちに戻ってもいいんだ、という感覚があります。“人々を旅に連れて行く”という感覚と期待、そして非凡なオープニングへと。使命は、これらの空間を作り上げることであり、それは信じがたいことですが、ボンドの世界の中に浮かんでいるようなものです。今回の場合は、ロシア人が所有する“日本の魔法の島”などで、テストセンターにはこの島があります。私たちは90%ジャマイカ人のスタッフで、地元の大工を雇い、ジャマイカ、日本、ヨーロッパのアイデアを融合させながら進化していきました。日本で、東京での撮影もあったのですが、映画にはなりませんでした」

2週間ほどかけて旅をしましたが、これは素晴らしいことでした。私たちにとっても驚きの連続でした。私たちができたのは、最高のものをすべて集めてアウトプットすることでした。お気に入りの建物をすべて選び、それらをマッシュアップしてボンドの世界を構築したのです。 - OCTOBER 09, 2021 VARIETY -

『 ニュースのよみかた: 』

新作007の舞台設定の参考になった一端に、“日本の魔法の島”がイメージされていた。東京での撮影は映画には採用されなかったが、という記事。

“日本語”という最強の壁によってコミュニケーション鎖国を続けている日本は一方で、“不思議な魅力=魔法の国”と観られていることは否定しがたい。「世界で日本ブームが起きている!」的な話はどれもこれも全くの嘘だが、日本の“特殊な国”というイメージは実に、活用価値があるとされている。

“ガラパゴス化”はデファクトスタンダードとの乖離に絶望的な悲劇だが、全力で振り切ってしまえばともすれば、“オリジナル”へと昇華できる可能性を秘める。

『 日本、という共有資産 』

日本のアーティストたちは、世界に類を見ないほどに恵まれた環境にある。しかしまた、世界で最も“活動的でない”ローカル専業なのも現実。

日本は世界に注目など、一切されていない。
欧米で日本の成果ニュースを目にすることは、ほぼ無い。近年においては、ビットコインを法定通貨とした“エルサルバドル”の半分以下の露出量だと理解してみてはどうか。日本で見聞きする“エルサルバドルの芸術News”は、どのくらいか。その“半分”が、世界の主要各国で語られている日本の露出量だ。つまり、ほぼゼロだということ。国際マーケットの誰もが納得する日本人著名人は、存在しない。名が通っている俳優、監督、スタジオは、無い。

だが、“認知度”が高い。
わたしはかつて米国の中央エリアで撮影中に、現地人たちに日本のイメージを聞いて回ったことがある。「忍者と侍が戦いロボットが歩き車が空を飛ぶ極東の“魔法の国”」だとあった。

めちゃくちゃで、最高ではないだろうか。

わたしたちは“日本の専門家”であり、その点においては世界中の誰にも負けない。ならばこそ、イメージを逆手にとって、世界を魅了してみるべきだと想うのだ。

世界は、待っていない。
しかし日本は、魅了する力がある。
アーティストは運ぶための「作品」を持っている。

手を組もう。どうせ忘れ去られて消える日本マーケットに、敵などいない。

『 編集後記:』 

本日間もなく、「鬼滅の刃」@フジテレビがO.A.される。
ここまで詳細を明かせずにきた、原作にも映画版にも存在しない“完全オリジナル”を届けられること感無量だ。原画を描いたアニメーターは映画版の重責を背負い、公私度外視の闘いを駆け抜けた。当社スタジオの作画台にはいまも、その時の戦跡が残る。

作画台:鬼滅のなごり

闘う今が未来をつむぐと信じて妥協無く、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記