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日本映画人、日本芸能人は、世界よりも恵まれている。

日本は世界から数年、ともすれば10年遅れている。しかし“日本語”という他国ブロック、自国ガード機能により、破綻することが無い。この境遇を活かさない手は無いなにしろ、“数年後の未来図である国外”を観察しながら、現在を生きられるのだから。危険なのは、ガラパゴス化した「偽ルール」。

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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 最近のはなし: 』

日本のアーティストと職人を、支援する。

美談ではない。なぜならこの活動は、世界のコンテンツ産業界を泳げるようになったいまわたしは単身でいるよりも、仲間と組むべき、という判断による。日本流の制約に縛られないアーティストでいたい、それだけだ。

ただし、この作業は、とても苦しい。
自分の創作欲求を堪えて、他のアーティストを応援しなければならない為だ。自分が遅れることを、求める作業でもある。全力で突き進むアーティストのグラビティを支えながら、構わず寄りかかって貰う作業は、片手間ですむはずもなく、負荷は凄まじい。

だが、それがいい。
味方ばかりが増えていく、なんて美しい環境なんだ。
わたし自身の活動も、支援してくれるという。

なんだ、応援は、自分のためにもなるのか。
寝不足の重い肉体をカフェインで刺し、明日の、来週の、来月の締め切りに立ち向かう。ホテルのラウンジが、仲間たちとの仮設スタジオに早変わる。

さて、はじめよう。


『 日本芸能界のいう“エージェント契約”とは 』

日本の映画界、芸能界にはデファクトスタンダードとしての、“エージェント制”が無い。最近日本の業界で耳にする機会が増えた「エージェント契約」というのは、ただの“更新型非正規雇用契約”だ。

エージェント制には、程遠い。

タレントたちは「自由度が高い」として日本型エージェント契約を選んだようだが、ただ契約の更新権限と代理保証を取り上げられただけだと気付いたのはごく最近だろう。手遅れだ。もう護っては貰えず、また、プロダクションに残った者は、声を上げられなくなった。

学ばない者は、救えない。

『 エージェント契約とは 』

個人事務所型独立、というのも流行っている。ただ“組織”から戦力外通告を受けての自営開始に他ならない。聞こえは悪いが、そもそものアーティストがあるべき環境を手に入れただけだと言える。権利と自由の代償は、リスクを負うことだ。

本来のエージェント契約とは、
アーティストとエージェント個人間の顧問契約である。弁護士を雇う環境と似ているが事実、メジャーなエージェントの多くは、国際弁護士資格を有している。

エージェントは、アーティストが自身の業界地位を向上させるための絶対的な味方であり、近未来の成功へと導いてくれる師である。

日本に本物のエージェントが現れるなら、弁護士の中から誕生するだろう。芸能事務所やプロダクション、マネジャーや映画界のプロデューサーの多くは本来の「エージェント制度」すら、理解していない。

『 次世代に備えよ 』

芸能プロダクションへの、批判が高まっている。むしろ、ここまでよく“日本流”を維持できたものだとも想うが一方で、所属俳優、タレント、スターたち自身の不勉強がためだ、とも感じる。

リスクも獲らずにただ所属して、支えられながら仕事を運んで貰う、まるで保護者の元で暮らす子のような人もいる。だが、自ら仕事を生み、獲得し、事務所に収益を運ぶプロフェッショナルも増えている。

本物のエージェントが組みたいのは、後者だけである。

日本の芸能事務所、プロダクションは間違いなく、日本芸能人の味方であった。感謝を忘れず、次世代に備えよ。数年後、日本の芸能界は消滅する。それは、コンテンツ産業におけるアーティストの、正しいブランディングである。

あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際News:ストリーミング時代に再びアーティストたちは、エージェントの“プロダクション化”を許さない

アーティストとエージェントの関係は良好だが、アーティストたちの“組合”は、業界地位を改善できていない。すべての組合が最も恐れていることは、スタジオやプロジェクトからの大量解雇だ。2019年04月22日、多くのアーティストを抱えて“プロダクション化”していたエージェンシーと、中間搾取の儲けを得ていたエージェントを一斉に取り締まり、解雇を宣告したのは、7,000人の脚本家たちだった。MGMのトップ弁護士レスリー フリーマンが、業界での自分の居場所を確保する方法について語った。「利益を追求する余りエージェントが、誰のために働いているのかを見失っています。パンデミックが、業界構造戦争を加速させています」ハリウッドの上昇する“ストリーミング経済”についての交渉の多くが、一維持停止されている。WGA、SAG-AFTRA、全米監督組合(さらに映画脚本家組合などの前身)などは、業界が大恐慌に見舞われていた1930年代にまで遡って、問題を抱えている。1935年に成立した全米労働関係法(National Labor Relations Act)が、アーティストたちの権利を護っていることは間違いない。メディアの発展とともにアーティストは増え続けた歴史がある。数千人の脚本家と監督そして、数万人もの俳優たちだ。組合は交渉を続け、アーティストの権利を確保してきました。しかし、旧来のスタジオシステムが崩壊してから約75年が経過した現在、業界は再び垂直統合型コングロマリットの傘下に置かれている。SAG-AFTRAなどの組合は、アーティストたちがストリーマーの、実質的な人質にされている状況に憤っている。しかし組合は、時代に対応する能力に長けているが、時代の変化を予測するのは得意ではない。 - MAY 28, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 編集後記:』

地球規模の映画界激変期において権利交渉機会が減り、アーティストの味方である“組合”が機能していない。交渉できるエージェントたちが群れて「プロダクション化」し、利益を搾取している現状を組合が激怒している、という記事だ。そもそも日本と韓国以外には、いわゆる「芸能プロダクション」が存在しない。

監督と脚本家は元より、俳優たち自身もしっかりと、世界のスタンダードを理解しておかねばならない時代だ。日本の環境は常に、世界に同化していく。常に数年から数十年、遅れているだけだ。

日本映画人、日本芸能人は、恵まれていると言える。

日本に生まれ世界に育ちながらオンラインを生きる、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記