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【NFT×国際映画】この資金調達は実体か、ただのバズワードか

アーティストにとって魔法の言葉と化している「NFT」。しかし、その実体と本質を注視しているアーティストは多くない。このトピックでは、「魔法の正体」を、知ることができる。社会の現実を分解して新たな価値を提言し続けていながら自身は軽々と妄想にうつつをぬかすアーティストの、ために書く。

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アーティスト情報局:太一監督
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 ムーヴメントというファンタジー 』

国際コンテンツ産業界における圧倒的なバズワードである「NFT」は、“Netflix”という可能性以上の期待を集めている。

実質的には本年01月から始まったこのムーヴメントは多くのアーティストを魅了しやがて、企業も無視しない存在となった。しかしそれもまた、「ムーヴメントの中のいち要素」であることを語れるアーティストは多くない。

アーティストの多くは、NFTに詳しくない。なんなら、まったく理解していない。いや、正しく書くべきか。「アーティストの極々少数以外の全員」が、NFTへの理解はゼロである。アーティストにとってNFTとは“ファンタジー”である。アーティストが語るNFTには、実体が無いのだ、

だが、期待は高まるばかり。
一次停止した世界の中で機能不全に陥っている企業に頼れないままに消滅しかけている“業界”が存亡をかけて期待している、奇跡の希望としてまでも。

そこで、日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際ニュース:インディーズ映画製作者がNFTに賭ける理由

ケビン スミス、ジェニファー エスポジート、アンソニー ホプキンスらのプロジェクトは、従来の映画ビジネスに代わるものとして、非貨幣性トークンの技術に注目している。

NFTマニアがインディーズ映画業界を席巻している。
オンラインアート作品から長編映画まで、デジタルファイルの真正性を証明し、所有者がオンラインマーケットプレイスで取引できる「Non-Fungible Tokens」の流行は、すでにアート、ゲーム、コレクターズアイテムの業界を席巻している。

今度は映画の番である。監督、プロデューサー、配給会社、資金提供者がNFTのバンドワゴンに乗り込み、インディペンデント映画界の次の大きな流れになることを期待している。インディーズ業界の第一人者であるケビン スミスは、近日公開予定のホラー長編アンソロジー「Killroy Was Here」をNFTとしてオークションにかけることを発表した。

俳優ジェニファー エスポジートの計画はより野心的だ。ジェニファーは、インディーズ長編映画「Fresh Kills」で監督デビューすることを計画している。この映画の資金調達は、NFTと、映画の株式を販売する世界初の公募を組み合わせて行いる。このプロジェクトを支援したい投資家は、デジタル証券取引所Upstreamに上場されるFresh Kills, Inc.の証券を購入することができる。さらに、プロジェクトに関連したNFTを販売することで、追加資金を調達を計画している。

Horizon Fintex社のマーク エレノウィッツ代表が語る。「これは、プロジェクトに資金を提供し、公開後に映画を見てくれるファンを増やすための素晴らしい方法です」

このハイテクな資金調達ソリューションは、一般のファンが映画の中の要素具体的に選ぶことができるようにするため、映画の投資家として直接関与し、成功すれば利益を得ることができる手段だとも主張する。

「私たちは、このモデルが従来のハリウッドの資金調達に代わるものになると確信しています。」NFTに支えられた技術が、本当に映画ビジネスの付加価値以上のものになるかどうかが試されている。  - NOVEMBER 02, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 ニュースのよみかた: 』

インディペンデント映画界がNFTに活路を見出しているが、まだ実績に薄く期待が先走りしているという記事。

そうかも知れないが、そうだとは信じがたい。
異論はあるだろうが映画界は、情報に遅い。もっとも早く更新されるのは経済情報でありしかし、他の産業情報とテクノロジーには、驚くほど疎い。

そんななかでのNFTにおいては“クリプト業界”を語らず、いったい何を期待しているのだろうか。たとえば宗教家たちが映画館に押し寄せて観客たちに布教をはじめたなら、映画界が協力すると考える方が無茶だ。ルールを理解した上で最重要な“マナー”を無視してはいけない、ということだ。

それがハリウッドであろうとも、そこに魔法は無い。
NFT、それはクリプト業界が生み出した議題であり、“ツール”ではない。

『 クラウドファンディングとNFTとマーケティング 』

「製作費はクラファンで集めて、素材をNFT化して収益化すれば、リスクの無いマーケティングが——」などという、めちゃくちゃな企画書が多い。そんなプランニングを露出するプロデューサーや監督に限って、マーケティングにキャリアの無い“勘頼り”の素人で、ウォレットすら持っていない。致命的なのは、自身が“客”になったことがない者の創る“企画書”である。ともすればそれはファンタジーであり、そのまま資金を調達したならもはや無自覚な詐欺行為であるのだから、留意するべきだ。

ここ「アーティスト情報局」ではアーティスト本人のためにリアルを届けることを目的としているので、結論を優先する。仔細は、自身で調べればいいアーティストなのだから。では、リアルを伝えよう。

『 クラウドファンディングの正体 』

「クラウドファンディング」は、“マーケティングツール”である。

実質的な大型資金調達に弱いクラファンの使途に最適なのは、「事前予約」と「広報ツール」としての役割だ。初回製造ロットが確定しているプロダクトの販促と、それを促すための補足情報広報チャネルとして、有効だ。国際的に成功しているチームは正しく、“資金調達のフリ”で使いこなしている。

『 NFTの実体 』

「NFT」は、“バズワード”でありツール化されるのは、“投機”が去った後。

こう書くと、「実際に数億円の売買は日常的だ!」というファンタジー層が出てくる。それ、“高額で買う”という、「ニュース化」を目的としたマーケティングである。ニュースになれば注目が集まり、注目が集まればマネタイズできる。事業上のブランディング戦略であるのでそれが証拠に高額で取引される作品には、“質の低い作品”が選ばれる。商品価値と購入価格の差が大きいほど、ニュース性が高いためだ。

つまり、NFTで高額売却を成立させたアーティストには、創作レベルを疑われるリスクが付きまとう。NFTはアーティストにとって、危険をはらむのだ。

やがてNFTへのファンタジーが解けてニュース性を失う頃しかし、本物の“価値”が機能し始める。作品自体のオリジナル性のみならず、そのプロセスが生む要素ひとつひとつに重要な“証明”を付加し、法を越える保証と信用を創出することとなる。それは全チャネルのアーティストにとってかけがえのない、存在証明となるのだ。それこそがアーティストにとって文化にとっての、NFTの真価である。

『 編集後記:』

イルミネーションの、点灯テストがはじまっている。
がんばれ、木。ありがとう、木。

美しい人々の大切な時間に水を差す気は無いのだが、少しだけ、木のことも考えたくなるこの季節である。きっと木は気にしないだろうとは想うのだが、LEDの電線を“ガンタッカー”で打ち付ける以上に簡易な方法はないだろうか。巨大なホチキスで木に打ち込む様を想うとどうも、聖なる季節を喜べない。いっそのこともう斬られてる、カボチャか門松を光らせて満足する方向ではお願いできないだろうか、眺めている貴方たちがいちばん輝いているのだから。

親愛なるなかまたちの輝かしい実績を紡いで未来を描く、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記