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生まれながらの女王

横溝正史の女王蜂を読んだ。

自分と同世代、上の世代ならば何となく聞いた事がある有名な架空の名探偵、金田一耕助のシリーズである。
お恥ずかしながら、自分は初めて横溝正史シリーズを読んだのだが、こんなに感動するとは思わなかった。

優しさとは、ときに人に真実を伝えない事にもある。
ただ、真実を墓場まで持っていくことは出来ない場合は、共有出来る相手と共有するのも一つだろう。
それを金田一耕助に教わった気がした。

ネタバレになるから、詳細は話さないでおきたい。

美しく生まれ持った妖艶を無意識に振り撒く無垢な娘が、鈍く哀しい血の惨劇に巻き込まれていく物語の文章は、令和の現代では読むのに難しい文章も多々あるけれど、その文字の紡ぎ方が文学として美しく、改めて言葉を知りたくもなった。

文章も進化をして、より簡単になっている。もしかしたら、当時の人からしたら令和の文章の方が伝わりにくいかも知れない。
だからこそ、文章とは面白い面もある。

色々な年代の小説を読むのは面白い。当時を知る事もできるし、現代を知ることもできる。

比べるのはナンセンスなのは理解している。
他の作家を下に見るつもりはまっさら無い。
だが、横溝正史の推理小説は、完璧過ぎるぐらいに物語としても推理小説としても完成されている。これ以上があるのかと思わされる。
ただ、どうしても風化は免れないかも知れない。
それは、文章が進化しているから。ただ、横溝正史に影響を受けた作家が新たな作品を生み出し、その作家に影響受けた新たな作家が新たな作品を生み出すループはあるだろう。

なぜなら、横溝正史自身も影響を受けた作品があるから。
そして、その書籍をまだ自分は読んでいないということは、どうしても風化はあるのかも知れない。
それが悪いとは思えない。なぜなら、時代は進んでいるのだから。

風化を恐れるのは一つの傲慢かも知れない。

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