しぃのアトリエ歴史探訪〜今昔アトリエE(厨)〜中編

承前

2006年に入って参加者が増えるに従い、各参加者が既存キャラを中心として物語を描くことで事で相互に影響を与え合う「リレースレ」の形式から、参加者独自のキャラや勢力の物語を各々で描き進める「マラソンスレ」化の風潮が顕在化していく。
「厨房がやんちゃしてひどい目に遭う」というお手軽一発ネタでは便利なギルガメシユーだったが、新キャラ新勢力での長編ネタが増えるに従って、本スレでの出番は次第に減っていくこととなる。

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上記は議論・雑談スレでの一コマ。作品投下の合間を塗って、住民同士がAAで遊ぶことも多かった。なんだかんだで愛されていることがよくわかる。

さて、そうした流れの中で投下された作品が、『迷った錬金術師』であった。

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エンキドゥといえば、『ギルガメッシュ叙事詩』に名高い「世界最古のサイドキック(相棒)」。英雄王ギルガメッシュに並び立つ者として、神々が粘土をこねて作り出したとされる存在だ。ローブ姿のギコ体型、ぎゃしゃ顔に頬傷に義足と盛れる設定をぞんざいに盛った感じのキャラ造形は、ただ「ギルガメシユーの相棒」となるべくゼロから生み出されたものであることがよくわかる。

残念ながら上記のネタはスレ住民からの支持を得る事はなく、同一作者からの作品投稿は以降確認できていない。

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当時のキャラ紹介テンプレ。ギルガメの「厨房性」を成す要素の一つが「神話に名高い大英雄の名を冠する」という点にあるとすれば、ネーミングの時点でハンデがデカすぎた。


しかし、「ギルガメシユーに相棒を与える」、或いは「厨属性の錬金術師」という意欲的な試みは幾人かの胸を打ち、そのバトンは速やかに次の作者の手に渡ることとなった。『厨キャラ、錬金スル』である。

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ちゃんと錬金術をしている。当時ですら、「錬金術師が錬金術をする」ネタは希少であった。

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堅実な錬金ネタ、自作拡大AAを織り交ぜた確かなAA技術。

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キャラのマイルド化もそこそこに、しっかり「厨房」もするバランス感覚。

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かくして、「まさかあの厨キャラが」という驚きとともに広くスレ住民に受け入れられたアトリエEは、その存在の楔をスレの日常に深々と刻み込むに至った。バトンは更に次の作者の手に渡る。

タイトルに(厨)を付けて投下する事が特徴的な作者によっていくつかの作品が投下されたのは、「モナーブルグ夏祭り」華やかなりし2006年の夏のことである。

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しっかり依頼をこなすギルガメシユーと、相変わらずちゃんと錬金術するエンキドゥ。

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夏祭りにも参戦!闇金のおっさんと謎の恋愛フラグを立てたりする。

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自分を素材に錬金。厨キャラの伝統芸。


『ギルガメッシュ叙事詩』は友情というテーマを最初に扱った物語であるともいわれている。

当初、ギルガメッシュ王は暴君として民たちから恐れられ、生み出されたばかりのエンキドゥは野獣のように理性を持たなかった。しかし、二人の出会いと交流によってエンキドゥは理性と人間性とを得、ギルガメッシュは横暴を改め穏やかさを取り戻し、人々から愛される英雄になったのだという。

厨房に生み出され、厨としてその存在を固定されたギルガメシユー。彼がエンキドゥという友を得、日常を共に過ごすことで、はじめて錬金素材でも一発ネタキャラでもない「一登場人物としての人格」を得るに至った過程に、神話を感じずに居れないのは筆者ばかりではなかろう。複数人の作者が同時に活動する、参加型スレッドの産んだ奇跡である。


しかし、神話はこれで終わりではなかった。

2006年の夏に撒かれたアトリエEという種は、誰も予想だにしない形で思わぬ花を咲かせることになる。

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