セクハラ、裏金……世の中に満ちる「おかしさ」に声をあげよ

僕が「マスター」になって、
ゲストの方や若い世代の来場者と、
とことん話をする「田原カフェ」に、
東京新聞記者の望月衣塑子さんが
「来店」してくださった。

望月さんとは、
何度も対談しているし、
共著も出している。
相手の反応や、
周囲との協調など、
何も恐れない取材姿勢に、
強い共感を覚えた。

ちなみに、
共著のタイトルは、
『嫌われるジャーナリスト』。
望月さんとは、
世代も性別も違うが、
僕は同志、戦友だと思っている。

今回のテーマは、
「『おかしさ』に屈しないためには?」。
セクハラ、パワハラ、裏金……。
「おかしい」と思うことが
世の中に満ちている。
望月さんもまた、
駆け出しの記者の頃、
セクハラを受けたこともあったそうだ。
相手に抗議はしたが、
大きな問題にすることはなかった。

望月さんは
そのことを恥じ、
強く後悔しているという。
「私が駆け出しの頃に
問題提起をしていたら、
今の記者さんたちが
もっと働きやすい環境を
つくれたかもしれない。
私よりも下の世代の人たちが
声をあげて変えようとしてくれている。
みなさんも黙っていないでほしい」

望月さんは、
麻生太郎氏(自民党副総裁)が、
上川陽子外務大臣に対する
「このおばさんやるねえ」
「そんなに美しい方とは言わない」
という発言についても語った。
「海外だと辞任に相当する。
政府として『ジェンダー平等』
と言っているのにおかしい」。

さらに上川大臣の態度が、
大問題だと語る。
「どのような声も
ありがたく受け止めている」
という対応で終わってしまった。
麻生発言を受け流した
上川大臣の対応は、
一見冷静ともいえる。

しかし、
後に続く
女性政治家たちのことを考えれば、
強く抗議せねばならなかった。
今、日本の衆議院議員のうち、
女性は1割にも満たない。
政府はクオーター制導入を
早急に考えるべきだと思う。

僕は亡くなった
妻・節子のことを思い出した。
節子は日本テレビのアナウンサーだったが、
1976年、30歳になる年に
「容色が衰えた」という理由で、
配置転換命令を受けた。
節子は納得しなかった。
勤務先である日本テレビを提訴、
勝訴したのだ。

節子のした行動は、
現代であっても覚悟の要るものだが、
今から50年近く前のことである。
大変な勇気が必要だったはずだ。
それは望月さんの言うように、
自分のためだけでなく、
下の世代のアナウンサーたちのため。
節子も声をあげた一人だった。
大きな力と闘った節子に、
改めて尊敬の念を深くした。

ジャニーズ事務所の性加害問題も、
「なんとなく知っていた」という人は多い。
自民党パーティ政治資金問題も、
長年の慣例であり、
「しんぶん赤旗」が記事にするまで、
調査しようという記者はいなかったのだ。

パワハラ、セクハラでも、
多くの人が声をあげるようになった。
「みんなが黙ってない時代になった。
健全なこと」だと望月さんは言う。
「声をあげる」社会は、
急激に進んでいる。
その時代に、
現役のジャーナリストでいられることを、
僕はおもしろいと思う。