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もうすぐ年を1つとる話


 30歳、わたしは歳を取ることに抵抗はない。むしろ小学生のときは早く大人になりたいと願っていた。地図収集やクラシック音楽を聴く趣味を同級生と分かち合えなかったし、周りの友達が着ているエンジェルブルーの洋服よりもユニクロのシンプルな服の方が好きだった。

 今でも読んでいるファッション雑誌は自分よりも歳上の人達が読むようなもので、この間は「自分らしいグレイヘア」が見開きで特集されていた。きっと40歳になったら50代向けの雑誌を読むし、50歳になったら60代向けの雑誌を読む。ちょっと背伸びをして生きていくんだと思う。


 しかし先日、年齢を感じる出来事があった。頬っぺたの肌荒れが治らないのだ。20代の頃は、保湿して一晩寝たらスベスベになっていたのに、2週間以上も肌荒れしている。確かに子供が産まれてからは肌の手入れをサボっていた。子供たちにつけた保湿剤の残りを自分の顔に塗っていただけだったので、きっとそれが駄目だったのだ。

 一から洗顔や保湿のやり方について調べ直した。クレンジングは適量より少し多めをこすらず顔に塗って、30℃のお湯で押さえつけるように落とす。洗顔はたっぷりの泡で押し洗いする。化粧水は何回もハンドプレスでつけて、乳液やクリームもこすらずにハンドプレスで。
 とにかく摩擦は大敵だ。

 数日続けると効果が出始めた。肌はツルツルで、夕方に感じていた肌のつっぱり感もない。しかし頬っぺたの肌荒れだけがどうしても治らない。


 ある朝、起きると次男の頭が顔の上にあった。わたしが起きたことを確認して、次男が笑いかけてくる。そしてあろうことか肌荒れしている部分を舐めた。そのあとモミアゲを擦り付けてくる。これだ、わたしが肌荒れする原因は。
 日々、肌に摩擦を与えないように気にして生活をしていたはずなのに、寝ている間に頬っぺたを舐められ湿らされ、皮膚が弱くなったところにモミアゲを擦り付けられていたのだ。もう摩擦しかない。

 翌日から次男対策のために、わたしはうつ伏せ寝を始めた。すると頬っぺたの肌荒れはすっかり治った。

 来月、わたしは31歳になる。誕生日はまだ楽しみなんだけど、いつか年をとりたくないという日は来るんだろうか。せめて31年の積み重ねが感じられる人になりたい。



田口 ナツミ

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