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1秒後の世界

2021.2.27.
VS Wellington Phoenix Reserves   5-1

最終節となったこの試合。我々canterbury united にとってはただの最終節ではなく、チームとして本当の最後の試合だった。ニュージーランドのリーグ方針が変わった事により、このチームは今年限りで活動を終える事になった。プレーオフ参入だけでなくこういった意味でも絶対に負けられない一戦だった。
結果を先に言うと前半5分に退場者を出した相手チームに対し終始ゲームを支配し5-1と大勝を収め良き最後を飾る事が出来た。しかし4位にいたチームがロスタイムに追いつき、引き分けに持ち込んだことで我々は得失点差で下回りプレーオフ進出は叶わなかった。アフターマッチの最中にライブでその試合を見ていたのだが、ロスタイムのゴールが決まった時のあの会場の空気は言葉には表せないものだった。

さて、こうして今シーズンが終了したのだが全体の振り返りはまた今度にしたいと思う。今日はこの試合目の四点目に自分がアシストしたゴールについて語りたいと思う。

大きなサイドチェンジからウィングが良い状態でボールを受け、逆ポケットにいた自分は二つの選択肢を持っていた。左利きのボールホルダーが縦に仕掛けれるように中にステイしてワンツーのサポートをするか、縦のスペースにランニングし、ペナルティエリアに進出するかだ。前半から深いペナルティに侵入できたときに大きなチャンスをつくれていた事を感じていたため、オフサイドにならないようにタイミングを待ち、ランニングする事にした。プレーしていた時はすごく長く感じていたその待ち時間は、ビデオで見るとほんの一秒もないしむしろ自分がタメてから走り出したことは分からないほどだった。
パスを受けボールに向かっている最中考えていた事は、そのまま左足ダイレクトでキーパーとディフェンスの間にクロスを送り込む事だった。しかし止めた。思ったよりも深い位置でボールにたどり着いたため角度的に厳しかったことと、相手ディフェンダーがかなりの勢いで飛び込んできているように感じたからだ(そのディフェンダーのことは間接視野でしか見えていない)。だからダイレクトでクロスする事はやめ、切り替えしスライディングしてきたディフェンダーを交わす事に成功した。
本題はここからだ。ファーポストに向かって軽くボールを浮かしパスをしそれがゴールに繋がった。正直言うと、この時シュートをした選手がそこに走りこんできている事は見えていなかった。そこにいるはずだと思ってパスをしただけだ。見えていたのは、キーパー、手前にいた二人の味方選手、そしてその背後のスペースだけだった。顔を上げた時にはそこには誰もいなかったし、誰かが走っているのも見えていなかった。だけどクロスを送りそれがゴールに繋がった。切り替えした瞬間に描いたイメージがそのまま現実になった瞬間だった。でもそこには確信があったし、その理由もある。

こういった表現は少し傲慢な気もするし正しいのか分からないのだけれども、自分はサッカーを分かっている選手と一緒にプレーをするのが好きだ。イメージの共有がすごく簡単になるし、そのぶん面白いプレーも増えてくるからだ。そしてゴールを決めた9番は自分の中でそのサッカーを分かっている選手だった。だからこそあのパスを送った。もし彼がいなかったら違う選択をしていたと言っても過言ではない。あの瞬間自分は彼の事は見えていなかったし、もちろんアイコンタクトもなかった。だけど、彼ならここに来るはずという確信があったのだ。

自分はこういったプレーがサッカーの中で一番好きかもしれない。頭で描いてイメージ通りに上手くいった瞬間だ。感覚的にはボールを蹴る瞬間にフリーであっても、ボールが届く時にはもうディフェンスがいてフリーではなくなっている。だからその裏をかく、一秒後の世界を描くことがサッカーでは大切だと個人的には思う。もしかしたらプロの選手たちは、自分が切り替えしたあの瞬間すべての状況が見えているのかもしれない。しかし残念ながら自分はまだその境地にはいない。まだまだ見えていない世界が多すぎる。
ただその見えていない世界をこれからも楽しんでいきたい。そう思えるほど気持ちの良いゴールだった。

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