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ゼロベース思考 #42

人は意識しないと無意識のうちにこれまでの経験や価値観、慣習から「既成の枠」を設定し、その枠内で考えようとします。

現状に何か問題があるとき、イノベーションに繋がる新しいことを考えようとするとき、このクセが邪魔する場合があります。

その際に「ゼロベース思考」を活用して対処することが考えられます。

1.ゼロベース思考とは?

「ゼロベース思考」とは、意識して「既成の枠」を取り外して考えることを言います。

いろいろな壁を取り払って考えます。経験の壁、慣習の壁、常識の壁、業界の壁、部門の壁などです。

ゼロベース思考の最大の障害は「既成の枠」です。その中でも一番のタガは自分自身となります。自分で狭い枠を設定して、視野を狭めないことが大事です。

「既成」とは、「既にできあがっていること」をいいます。つまり、「既に『ある事柄』に関して頭の中にあるもの、持ってるイメージ」のことです。

その人が持っている「『ある事柄』に対する『暗黙の前提』のようなもの」と言い換えてもよいと思います。

2.ゼロベース思考の事例

北海道旭川市にある旭山動物園は、1960年代に開園し、当初は好調だったものの、90年代に入ってからは入場者数が激減し、存続が危ぶまれる状態でした。

旭山動物園には、上野動物園のようにパンダやコアラといった人気のある動物を導入する資金はなく、手詰まり状態となっていました。

しかし、旭山動物園は、従来の動物園が行っていた動物の姿形を見せる「形態展示」から、生態を見せる「行動展示」へと切り替えることで、人気を博し、息を吹き返すことができました。

これを「人気のある動物」ではなく、どこの動物園にもいるような動物で行ったことがまさにイノベーションと言えると思います。

これまでの「形態展示」という業界の「既成概念」から抜け出せなければ、恐らく「人気のある動物」を導入したり、「展示する動物」の数を増やしたりという解決策しか思い浮かばなかったと思います。これではさらに手詰まり感に陥ることになったと思われます。

旭山動物園が行った「形態展示」は、まさに「既成の枠」を取り外した「ゼロベース思考」の賜物と言えると思います。

「今いる動物の魅力をアップさせることで解決できないか」⇒見せ方を「形態」から「生態」に変える

スウェーデンの首都ストックホルムにある、ウーデンプラン駅の地上に上がる方法は「階段」と「エスカレーター」の2種類があります。

健康のことを考えると、階段を使うべきだとはわかっていても、多くの人が階段を利用せずに、隣のエスカレーターばかりを利用していました。

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そこで、DDBという広告会社とフォルクスワーゲン(自動車)が、あるシステムを共同で開発しました。

それは、階段にピアノの鍵盤を書いて実際に音を出すことです。

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ピアノの鍵盤までは発想しても、「実際に音を出す」という部分は、「ゼロベース思考」の領域だと思います。

「エスカレーターの横の階段に、踏むと音が鳴るピアノの鍵盤を仕掛ける」⇒階段の利用者が66%アップ

3.ゼロベース思考のポイント

ゼロベース思考を実践する際のポイントは、「自分の狭い枠の中で否定に走らない」ということです。

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可能な限り枠を広げて、あらゆる可能性を求めていく姿勢が必要です。

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その際に重要なのは「ポジティブ・メンタリティ」です。常に「何か方法があるはずだ」という前向きな気持ちを持つことが大切です。

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4.「既成の枠」があることは問題か

「既成の枠」があることは、必ずしも悪いことではありません。

経験や知識、情報を踏まえて、「既成の枠」を持っておくことは、思考が効率化されるというメリットがあります。

「既成の枠」という多くの引き出しを持っておくことは、逆に有効な場合が多いです。

大切なことは、意識して「思考」を使い分けることです。

問題解決の場面では、「既成の枠」がかえって足かせになることがありますので、視野を広げるため、「既成の枠」を取り外した「ゼロベース思考」が必要となる場
面があると心得ることが重要です。

5.まとめ

以下はこれまでの内容のまとめになります。

「ゼロベース思考」とは、「既成の枠」を取り外して考えること
人は意識しないと無意識のうち「既成の枠」で考えようとする
自分の狭い枠の中で否定に走らない
→ろくに考えもせず、できない理由を並べない
→何か方法があるはずだと、まず考える
時代が「ゼロベース思考」を求めている。
→これまでの成功体験が通用しない時代      →「既成の枠」を取り外して、「ゼロベース」で考えてみる

参考文献: 「[新版]問題解決プロフェッショナル」齋藤嘉則著(ダイヤモンド社)


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