見出し画像

Twitterは電車であるーーまっすぐ伸びるタイムラインと線路について

「アテンションエコノミー」という言葉がある。それ自体の意味はどうでもいいのだけれど、とりあえず「関心経済」と訳すとして、「アテンションプリーズエコノミー」だと「航空業界」だよな、と思ったりする。CAがよく「アテンションプリーズ」って言ってるイメージだから。

そんなくだらない冗談を先程、甘いみかんを食べながら考えていて、ふと唐突に、Twitterが面白くない理由って、こういうしょうもないことをテンプレートに乗せたものがバズり、回ってくるからだよなあ、と思った。

もう何年もちゃんとTwitterを見ていないので、古いのかもしれないが、つまり、こういうことだ。僕が思うTwitterは、こう来る。


"電車で女子高生二人組が「TikTokってアテンションプリーズエコノミーだよね〜」と言いながらスマホをいじっていて、周りのみんなのアテンションをプリーズしていました。"


少なくとも、僕がTwitterを見るのをやめた2014年くらいのテンプレは「電車」で「女子高生二人組」みたいなものだった。でも多分、ベースは変わってないんじゃないかと思う。

「電車」をNGワードにしたい気持ち

おもしろツイートならまだいい。仮に面白くないとしても、嫌な気持ちにはならない。一方で、何か政治的な主張をする人たちが、自分の仮想敵に言わせたいことを「電車内の嫌な感じの二人組の会話」にでっち上げて、それに反論するテンプレートを何度も見たことがある。そのようなスタイルのツイートを読むと、うるせえ、と思う。

電車の中でこんな人がいた、というネガティブなツイートもある。犯罪行為は論外だとして、たとえばルッキズムに近いような苦言や、小さな揉め事の末「わたしが思うマナー」が勝利して正義側でスッキリするストーリーが語られていると、これもやはり、うるせえ、という気持ちになる。

僕の性格が悪いような気がしてきたけれど、「電車で」という文字を見るだけで「ほんとかなあ」と反射的に思ってしまう。世の中には電車が溢れており、「電車内おもしろ話」「電車内・勧善懲悪話」はおよそすべて捏造、という気持ちがある。悲しいし、ここまで書いて、そんなに嫌なら「電車」をNGワードに設定すればよいのだ、と思った。(注1)

すこし真面目に考えると、電車って、赤の他人が仕方なく同じ空間に居合わせているのだから、そこで変な人がいても、変なことが聞こえてきても、放っておくのがいいのかもしれない。それをいちいちツイートしたり、そのツイートを面白がるのは、なんか世界を居心地悪くしている気がする。

Twitterって、電車だ!

それにしても、電車のツイートばかり考えてしまうのはなぜか。そもそも僕の中で、Twitterは電車のイメージと深く結びついている。

あの一本の長く伸びる「タイムライン」は、電車の車両、あるいは線路にとても似ていると思う。ひたすら真っ直ぐスクロールするだけで、道に迷うことはない。自分好みに敷いたレールだから、どこまで行っても心地いい光景が広がっている。変な人が乗車していればブロックして降ろせばいいし、線路上に猫が轢かれて死んでいたらすぐに目を逸らし、違反報告をすれば清掃員が綺麗に片付けてくれる。NGワードという遮断機を降ろせば、車はぶつからずに止まってくれる。そのうち、車や踏切の存在も忘れていく。たまに中吊り広告が鬱陶しかったりするのも、なんか似ている。

とまあ、言葉遊びはいいとして、実際問題、電車には運転手が別にいる。自分で運転しなくていいから、乗ってる時は両手が空く。立っていても、片手でスクロールするだけでどこまでもいける。電車と非常に相性がいいSNS、それがツイッターである。(注2)


注1)ちなみに、「ジョン・レノンの追悼コンサートで」とかだとその後に何が来ても「ほんとだよなあ」と思うと思う。「ジョン・レノンの追悼コンサートでオノヨーコを見た」など。

注2)そもそも、自家用車の出勤率が多い田舎と、電車の出勤率が多い都市では、ツイッターの利用頻度や使われ方がかなり異なるのではないか。ちなみに、ツイッターが電車のメディアだとしたら、インスタは飛行機や新幹線で、TikTokは自家用車だと思う。なぜかはよくわからない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?