二期「ゆめを食べた本」展覧会アーカイブ②作品紹介
神奈川県逗子市の小学生&映像作家の山根晋によるアーティストコレクティブ TAGOE(たごえ)。2021年1月からはじまった第二期の成果としての展覧会「ゆめを食べた本」を〈2021年5月30日~6月5日〉の会期で行いました。第二期のテーマである"影"をさまざまに探求、遊んだ作品を展示しました。今回はこの展覧会「まあたらしい影」の作品紹介をします。
1)ゆめを食べた8冊の本
白い展示台に置かれたメンバーそれぞれの制作による 冊の本が、本展覧会のメイン作品になります。TAGOE 第二期のテーマである睡眠時の「ゆめ」を 録し、それを再生するメディアとしての本です。これらの本には、ゆめ特有のどこか不思議な感覚とともに、その光景や物語だけでなく、そこに湧きあがった情感が漂っています。ぜひ、手に取って細部までじっくりご覧ください。
A : あわづ あさき『サボテンのきょじん』
雑誌、吸盤、アクリルファイル、画用紙、パステルカラー
大きなサボテンが出てきたというゆめを独自に拡張し、その結果、表紙に吸盤が付いたという奇想天外なアートブックです。直線的な物語の時間がありながらも、雑誌を用いたコラージュと絵の多様な組み合わせの妙により、複雑で豊かな時間と空間が広がっています。
B : くらうち きほ『こどもがパンを食べにきた本』
スポンジ、フェルト、画用紙、パステルカラー
パン屋さんに行くというゆめを多く見たことから、スポンジをパンに見立て、そのなかにゆめの内容を描いた本を挟み込んだ、なんとも愛らしい作品です。大小とパンの種類を作り分け、パン屑までスポンジで表現されているところに、対象と真摯に向き合った作者の姿が想像できます。
C : せき こうのすけ『ONI』
布、ノート、雑誌、色鉛筆
服飾デザインの仕事をする父のサポートを受けながら制作された、洋服と本が組み合わさった異色の作品です。恐ろしい鬼が出てきたというゆめのビジュアルストーリーを本に描き、読み手が鬼をイメージした洋服を着用しつつ、この本が読まれることを想定しています。
D:たけうち さつき『ふしぎなとんだ夢』『うみのシャシンしゅう』
画用紙、紙、パステルカラー、テープ、写真
『ふしぎなとんだ夢』は、輪状の本をかぶり、回しながら読むというアイディアが光る絵本です。本をかぶり、回すという行為それ自体が、作者のゆめを追体験しているかのようです。『うみのシャシンしゅう』は、共同制作作品「わすれられたゆめのすみか」の制作時に、作者によって撮影された写真で構成されています。
E:つじ ひまり『うさぎとカレー』
羊毛フェルト、フェルト、毛糸
ゆめに出てきたいくつかの要素を羊毛フェルトで再現した、愛らしい立体的な作品。シンプルな構成ながら、それぞれのページに存在感があり、その表情や質感にはどこか詩的なものを感じさせます。また、触覚や嗅覚と、視覚以外の感覚を喚起する本であることも特徴です。
F : はつしば るあん『デコデコ写真集』
写真、マスキングテープ、グリッター、ビーズ
G : もりした さくた『キラキラズカン』
スピンカラー折り紙、キラキラシール、写真
キラキラ光るスピンカラー折り紙を覗き込んだ作者が、そこに無数に映った自分の顔を見つけ、その再構築を試みた作品です。七変化させた自身のポートレイトが、キラキラ光る折り紙とともにグリット状に配置されています。好きなものに自身の顔が囲まれる喜びが伝わってきます
H : 山根 晋『Sleeping images』
写真
亀を炙って食べようとしたら、甲羅を脱いで逃げた。というゆめを見た作者は、そのゆめを自己解析し、亀にまつわる神話や伝承をリサーチしました。そこで感得したビジュアルイメージを表象しつつ、ゆめの構造にも対応する制作方法を考えた結果、過去に撮影した映像素材をモニター画面上で写真として再撮影し、それらを編んで写真ZINEにしました。今回、20部限定で販売をしています。
2)わすれられたゆめのすみか
画用紙、アクリルガッシュ、漂流物、ゴミなど
展覧会場の宙を漂うのは、メンバーが逗子海岸で共同制作した折本の形をした作品です。この黒く長い本には、海岸にあるさまざまな漂流物やゴミなどが、色彩豊かに転写されています。この漂流物やゴミは、社会や自然環境から"忘れられてしまったもの"として海岸に存在しています。一方、ゆめもまたすぐに"忘れられてしまう"という側面を持っています。この異なる位相にある両者を、本に現れた像として重ねてみると、この宙に漂う本は「わすれられたゆめのすみか」と言えるのかもしれません。
3)わすれられたゆめのすみか 制作ドキュメントビデオ
ビデオ|35分30秒
逗子海岸で「わすれられたゆめのすみか」を共同制作した際のドキュメントビデオです。黒く長い本を砂浜に置き、漂流物やゴミを像として転写していく様子は、ある種のパフォーマンス性を帯びています。また、メンバー同士のコミニケーションからは、普段のTAGOEの様子を伺い知ることができます。
4)ゆめを食べた記録
山根晋による、TAGOE第二期全16回の活動記です。制作過程での気づきや葛藤、メンバーとのやり取りの断片が記録されています。
5)ドキュメント
今回のテーマである睡眠時の「ゆめ」に取り組むにあたり、まずはそれぞれがゆめを記録することからはじめました。ゆめ手帳、ゆめカード、ゆめシートと、さまざまにゆめを遊びました。
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