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二期テーマ"ゆめ" / ドキュメントテキスト

神奈川県逗子市の小学生&映像作家の山根晋によるアーティストコレクティブ TAGOE(たごえ)。2021年1月からはじまった第二期の成果としての展覧会「ゆめを食べた本」を〈2021年5月30日~6月5日〉の会期で行いました。第二期のテーマである睡眠時の"ゆめ"を記録し、遊び、制作した作品を展示しました。今回は第二期(全16回)の制作プロセスを記録した、ドキュメントテキストを公開します。また三期からは、毎回ごとに記事として、noteマガジンに記載する予定です。こちら、TAGOEのマイクロパトロン(サポーター)として、月々500円のマガジン購読料をお支払いいただくことでご覧いただけるようになります。

21.1.14 / テーマ決め ・ ドーナッツ打ち上げ

昨日、ラジオ出演をしてTAGOEについて、たっぷり語る。なぜ、どうやって、何を大切にしているのか、結構おもしろがってくれる人がいるんだと思う。そして今日は今年一回目のTAGOEで、今日から第二期のはじまり。今日は打ち上げも兼ねながら、でも第二期のテーマを決めるという大事な回。一応、カメラを持ってきて、「年末年始◯◯◯だったこと」でそれぞれのインタビューを収録しながら、経験からテーマを立ち上げていくという方法を取ろうとしたけど、やっぱり回りくどいことが嫌いな方々なので、単純に話し合い(というか叫び合い)で決める。でもテーマを決めるにせよ、それが単純な思いつきやその場の流れにはしたくなくて、やっぱりなぜ、そのテーマを扱うのかの根拠をみんなで共有したい。それが言葉にならなくとも、いや言葉にできない事だからこそテーマにするべきで、何か気になったり、心に残ったことをテーマにすることで良い作品が作れる一歩を踏み出せる。みんなは気まぐれで、心に浮かんだことをばんばん声に出していくけど、それにどうやって打ち返していけるか。高速ラリーをしなければならない。瞬発力は、さらにそれを上回る瞬発力で返していかないとエネルギーは増幅しない。紙を出して、みんなが言うことを書き留める。でもすぐに紙とペンを奪われる。サツキがどんどん面白いテーマを考えていく。でもみんなの意見も聴きながら進めていくところがさすがで、本当にすごいなぁと思う。アサキは、ニジュウ?の歌を歌いまくっていて、いい加減みんなにうるさがられている。もう打ち上げのドーナツ食べるなと笑 そうこうしながらも、テーマは「かぞく」「ようせいとこびと」「髪を切る」「夢のくに」「おばあちゃんち」と魅力的なものが出てくる。で、最終的には「しんくんが隊長なんだから、しんくん決めて!」ということになり、「夢のくに」に決定する。さぁ、「夢のくに」で何ができるか。そういえば、ディズニーランドも通称、夢の国だよな...。後半は打ち上げ!みんなの労をねぎらい、ミサキドーナッツで、ドーナッツ乾杯。三星さんからいただいたTAGOEの輝くロゴ入りのトートバックも渡して本日は終了。「夢のくに」何が作れるだろうか。夢といえば、寝ている時の夢もそうだし、将来の夢ってのも夢だし。でも、虹作ろうよとか、フワフワした世界がいい!とか、さっそく見えてる世界観がありそうで、今回も楽しみ。

21.1.28 / ゆめのくにの地図を描く

寒い雨に、冷える。横浜は雪が降っているらしい。昨日、鎌倉の島守で方眼マス目の大きな紙を手に入れたので、今日はその紙にゆめのくにの地図を描く。グーパーでわかれましょ、で決まってアサキ/サツキ/コウノスケ/ヒマリのグループと、サクタ/キホ/ルアンのグループに分かれる。ちなみに、ひとまず方向性としては、将来の夢ではなく、寝ているときにみる“ゆめ”にフォーカスを絞ろうと思う。そして、今回の展覧会では、みんなの見た“ゆめ”を表象できればと構想している。で、地図を描く前に、「ゆめのくに」にあって欲しいものを軽くディスカッションする。ゆめでは何でもあり。こうのすけの弟しんちゃんが100人いても良いし、アサキが回転寿司のネタになってても?良い。二つのグループで地図の描き方、その前提がまったく違っていて面白い。好き放題に描きカオスなゆめのくにと、1本の道を辿っていき点々と家や動物が出てくるどこか幽玄なゆめのくに。どちらも魅力的だし、金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅のようでもある。飴が天から降ってきて口を開けて待ち構えている人がいて、お菓子が回る屋台が爆発し、その空には宇宙の星々が輝いている。そのくには何かパフニングが起こるボタンを鬼が支配している。というのがカオスなゆめのくに。爆発のエネルギーに満ち溢れている。一方、幽玄であり沈黙が漂うゆめのくにには、入り口すぐに美味しいパン屋さんがある。そして、人が丁寧にこしらえた藁の家が点在し、おだやかな熊やウサギ、天使が余白の森を行き交う。んー、なかなかやってくれるなぁみんな。後半、「あーちゃんはすぐ爆発させるからなぁ」と褒め言葉のつもりで少し言ったつもりが、本格的に拗ねてしまったアサキ。ちょっとみんなも気まづい感じ。「しんくんがそう言っても、爆発させたければ爆発させてくれよ!」と伝えたら良かったかな。。最後、サツキも終わりたくなくて、泣く。TAGOEのフォワード二人が後半少し不調だったかな?明日、満月だから?でも、みんなこれから繊細なお年頃に突入するのだろうなぁ、声の掛け方とかも気をつけなければと思う。とにかく、みんなそれぞれが持っている才能に、一回一回敬意をもって接していきたい。それを積み重ねていくことこそが大事だ。今日も大きな刺激と学びを、ありがとう。次回は2週間のあいだに見てきたゆめを発表し合おう。

21.2.4 / ゆめ手帳書きはじめ ・ ゆめカード描く

ゆめといったら、まず何を参照していけば良いか。数多くの芸術家が古くから、ゆめの世界を表象してきたわけだけど、まず、シュルレアレスムは一つの大きな塊だろうと思う。ダリは椅子に座り、スプーンを口にくわえながら仮眠を取り、スプーンが落ちる音で目を覚まし入睡時のゆめを描く作法があったと昨日たまたま聞いたこともあり、(そしてこのダリのある種ポエティックな夢装置自体を作品化してもと思うのだが)はじまる前に図書館でシュルレアリスム作家の画集を借りることに。でも、あらためてダリを個人的に惹かれるものがない、のでマグリットに絞る。そういえば、パリのポンピドゥセンターで大規模な個展をやっていた際にたまたま行ったなぁと。僕自身はシュルレアリスムがフォーカスした、ゆめに代表される無意識というのものには非常に興味がありながらも、絵自体はそんなに好きではないし、確かに人間にそういった領域はあると思うけど、何かが抜け落ちている気もしなくもない。まぁでも、方法論だけは参照していくのは悪くない。今日は最初に、コクヨの測量手帳にみんなの名前シールを貼った「ゆめ手帳」を支給。この1週間で見た夢でも良いし、今まで見た夢でも良いので、書いてみようということに。しかし、小学一年生におじさん風の測量手帳は渋すぎる。でも、小さくて薄いわりにはハードカバーなので、立ちながら書いたりすることに最適で、僕は長年バックに忍ばせている。手帳に描くのに飽きたタイミングで、今日のメイン制作は、「ゆめカード」表と裏にそれぞれ現実と夢と設定し、例えば現実のりんごを表に描いたならば、ゆめのりんごを裏に描く。前回は「ゆめのくにの地図」として全体を描いたけど、今回はシーンを絞り描いていき、さらにゆめに迫っていく。かつ、現実からゆめ、ゆめから現実へとカードの表裏を利用して行き来することから、展覧会にむけてのクリエイティビティのあり方を養っていけたらと思う。事前に借りてきたマグリットの画集の影響はありながらも、でもそれを見て世界観を掴んだようで、オリジナルに解釈を膨らませながら、それぞれに表現していく。それにしても、スポンジのような小学一年生のみんなの感性に、シュルレアリスムの感覚が滲みていくのは、なんとも面白い。最後にはカードを描いた人が表(つまり現実)を見せて、裏(ゆめ)をみんなで当てるゲームをする。もうこの時点で、いくつか作品の種が見えてきた。「ゆめのくにの地図」「ゆめ手帳」「ゆめカード」プロセス系の習作も、ボリューム出そう。

21.2.25 / ゆめ手帳の共有 ・ マヤデレン作品の鑑賞

やっぱり3週間空くと、ちょっと寂しいというか物足りなくなる感じがあった。でも、3週間のうちにゆめ手帳がどれだけ膨らんでいるか、楽しみにしていた。しかしこの3週間は、本当にいろいろあった、「あった」と完結させれないこともあった。それを誰かに伝え、整理したい気持ちがあったのだろうか、昼くらいに到着してヒナコさんと長らく語り合ってしまった。仕事の邪魔をしてたら、ごめんなさいと思う。さて、あっという間にみんなが来る。いつも、コウノスケとヒマリはすぐ裏の逗子小じゃないのだけど、先に来る。入り口の窓の先に、橋があってその先に京急の踏切が見えるのだけど、その先からこっちを見ながら走ってくる感じが、あぁすごいなとしか言いようのない、光そのものみたいな存在がこっちに向かってくる感じがする。それが見たくて、16時過ぎくらいになると、踏切の先が気になってくる。さて、それぞれゆめを見たみたいで、いろいろ書いてそう。もちろん自分も書いたけど、ゆめの記憶って本当にすぐ消えてなくなる。寝ぼけ眼で、書くぞ!記録してやる!と一気呵成に書かなければ、もう二度と記憶に残ることがないってことが良く分かった。でもみんな、なんとかいくつかの夢の記録に留めたみたい。前半は、観て記録したゆめを共有し合う。アサキはサボテンが大きくなっておばけみたいになって、そのうち小さくなったと。サボテン、映像に使えそう。コウノスケは一言「ドラえもん」と。恥ずかしいんだな。まぁ、じっくり攻めよう。ヒナコさんは、作ったアップルパイの中に蛇が入っていたゆめ。最後には蛇が黒い液体になると。かなり映画的。サクタはペンギンが出てきたよう。ペンギンと遊んでいたのか?あまり多くを語らない。キホは漫画のようにたくさんのシーンを書いている。性格出てるなぁ。夜のパン屋さんにおばけが出たと。パン屋さんとおばけ、良く出てくるなぁ。ヒマリは、弟ソウちゃんとご飯を食べてたら白いウサギが横にきて、ご飯を食べたと。ルアンは、ゆめの中の学校でミニーちゃんと会っていた。なんとゆめ手帳には、お母さんのゆめまで書いてある。興味深い。サツキは、タブレットに知らないゲームが入っていて、そのゲームを始めると自分がその中にいたという内容。パラレルワールド的で、多くの作家がそういった夢の性質に魅力を感じているのだと思う。自分は、亀を食べようとして甲羅ごと炙っていたら、亀が甲羅を脱ぎ捨ててベランダから逃げていったゆめ。を披露したら結構ウケた。サクタが緑色のパーカーを着ていて、亀をやる。かわいい。それぞれにゆめに登場してきたモチーフがあって、それを作品に登場させていくのが良いのかなと思う。そうだ、そういえば次回みんなに言おうと思うけど、子どもの頃、いっつもゆめの中や、半覚状態で視えてくる図像があって、透明でアウトラインだけある鏡餅みたいな形をしたやつなんだけど、あれが何だったのか、やってみたいと個人的には考えている。後半は、マヤ・デレンの「午後の網目」を観る。1943年制作だから、80年近く前の作品だ。まぁとにかく不思議な世界観、それと今のみんなからしたらアナログな手法がそれまた不思議さを倍増させると思うのだけど、ゆめってこういうことあるよね、みたいな感覚が共有できたかもしれない。しかし、伊藤貞司がスコア担当した、日本の伝統音楽をコラージュ的に使用したサウンドがすこぶる格好いい。デレンは、能とかに興味があったのかもしれないな。「なんか意味わかんない」「意味わかんないけど、なんか感じるものない?」「あーあるかもー」って、この会話ができたことが、今日の最後に嬉しかったこと。展覧会は5月GWにしようかな。

21.3.11 / ゆめシート記入 ・ タラブックス「つなみ」朗読

今日は311から10年目の311。朝からなんとなく、仕事が手につかない。10年目の今日、僕は会社員で、九段下の大きなビルの2階だか、3階だかの催事場にいた。10年で大きく変わった。ながらく被災地には行ってないけど、大きく変わったのだろう。でも、悲しみは決して癒えない。これ以上ない大きな悲しみ、苦悩、後悔を背負い、生きている人が今も多くいる。その事実に、あてがう言葉など見当たらない。
今日は前半、ゆめシートを書く。僕も含めてみんなゆめ手帳への記録がトーンダウンしている。僕も忙しくて、そもそもゆめが見れなかった気がする。けど、こっからが勝負。ここで手をやめないことの先に、何かがある。前回みんなから挙がっていた、それぞれのゆめの詳細や、そこから膨らむ想像をシートに書き込む。つまりそれが、作品化のはじめのステップになる。うそを書いてもいい、飽きてもいい、つまらなくてもいい、思いつかなくてもいい、それすべてひっくるめて何かを作ればいい。ヒナコさんが用意してくれたおやつの桜餅をほうばりながら、それぞれ発表。字が綺麗になってたり、内容がしっかりしてきたり、この半年だけでも目に見える成長があって、嬉しくなる。あとはこれを、どう形にするか。。後半は、東日本大震災から10年という今日、僕からみんなへの(自己満足的かもしれないけど)贈りものとして、タラブックスの日本語版「つなみ」を一冊ずつ手渡した。この絵本がきっかけで、タラブックスを撮れたという僕にとっては特別な一冊でもあるけど、何より、この痛ましく悲しい厄災を描きながらも、鎮魂と祈りが折り込まれた絵本を超えた絵本を、みんなに贈りたかった。ただ好きだとか、素敵だとか、綺麗だとか、そういうものだけじゃない、切実な何かが込められているものを、ぜひみんなにも味わってもらいたいと思った。僕が一回朗読。サクタとコウノスケは今聞きたくないとか言って、後ろを向いて耳を塞いでたけど、たぶん怖かったんじゃないかな。その気持ち、すごい分かる。そしてこういう時はさすが女性。女子たちは、目の前で、それを全部見てやろうと、味わってやろうと、集中して聞いている。こういうことも、みんなで共有できたことが、個人的にはよかったと思った。

21.3.25 / ダミーブック制作 

AM10時より三星さんも交えて、ひなこさん、僕で打ち合わせ。次の展覧会に向けてアイディアを出す。三星さんから「本とか良いですよね?」と。あー、確かに。この第二期「ゆめ」をテーマにして色々やってきたことを、正面から向き合うとなると、どこかテーマの広大さ(加えて芸術的な前例の多さ)もあって、立ちすくみがちだった。けど、本というメディアに制限をすれば、本だからできることも相まって見えてくることもあるかもしれない。なんか、すっと腑に落ちた感じがある。よし、本でいきましょう!ということで、そうすると、いろいろ協力してもらいたい人の顔が浮かぶ。製本所の見学とかを一緒に行って、その様子を僕が撮影したりしても良いかもしれない。展開いろいろ想像できる。さて、ということで早速今日は、A4用紙1枚で作れる8ページの小さい本をそれぞれ作ってみる。前回書いたゆめシートをもとに、今度はゆめを1冊の本にしてみる。しかしほんとに、それぞれの発想やペースがバラバラで面白い。表現に慣れているか慣れていないか、忍耐があるかないか。もあるんだけど、それぞれに必ずその子しかできないものがあるはずだから、その産婆役でなければならないな。今回は、そういったことに徹してみても良いかもしれない。しかし、本1冊を、これ作品ですと胸を張って言えるレベルにするには、結構な工夫と、みんなの粘りも必要かもしれない。いやいや、そんなことないのか。ゆめという、その子だけが見た神話を、善悪や意味のあるなしを超えて、大切な1冊としてそこに佇んでいるもの。それができないだろうか。

21.4.8 / 本のアイディア出し

明日、三星さんに製本のワークショップをしてもらうので、今日はアイディアを膨らませた方が良いと考え、ブレストのイメージで、ポストイットに面白い本のアイディアを書き、壁に貼っていく。手を動かすことには集中が続くけど、話し合いなどはまだむずかしいし、続かない。しかし、話し合いとはいわゆる文化的な行為なのであって、そんなものを今、身につける必要はない気がする。チームだけど、チーム自体を形づくりたいわけではなく、それぞれの個性の表出に制限がなく、かつそれを尊重し合える機会がTAGOEだと思う。それでも、想像を膨らませること、誰かの想像力に刺激されること、それは大いにあってしかるべき。だけど、個性の表出とはいっても、それを言葉で表現する時に、すでにその個性の大半は失われているようにも感じる。特に現在、言葉を学んでいる段階なのだから、他者や友達が連れてきた言葉をそのまま借りたり、その言葉のモードに引っ張られることも多々ある。つまりは、言葉によるブレストには、TAGOE的には大きな矛盾がある。と、今振り返って思っているが、とりあえずこの時は、言葉によるブレスト、アイディア出しを行った。みんな、本がどのようなものが分かっているはずだけど、それを飛び越えるようなアイディアをどんどん出してくるので、さすが頼もしい。

21.4.9 / 三星さんによる製本ワークショップ

午前中、プリント作品の打ち合わせで、芝浦ふ頭にあるラボへ。直行直帰で、AWAZUビルへ。今日は三星さんにワークショップをしてもらう。さすが、しっかりと準備をしてくださって、用紙にノンブルまで配してある。小さなシンプルな本を作るにも、デザイン的にすこし工夫がしてあるとグッと良いものになる。表紙回りの紙質もシボ加工っぽいもので、良い感じ。みんなが、どんどんのめり込んでいく感じが分かる。やっぱり手を動かして何かを作ることが好きなんだなあ。出来上がったノートは、「TAGOEオリジナルのゆめノート」として展覧会の時に販売できたらと思う。こうやって本を作ることと、知らず知らずのうちに近くなっていって、展覧会の時にはそれぞれの本を作れたら良いな。ぼんやりと思いついたんだけど、「ゆめを食べた本」というコンセプトが良いのではないかと思っている。一人一冊。自分が観たゆめを詰め込んだ一冊。すごく見たい。もちろん、僕も本気で作る。

21.4.22 / 「ゆめを食べた本」プランシート

「ゆめを食べた本」というタイトルにしようと決めて、いろいろと明快になった。一人一冊を作って展示するのと、みんなで一冊の蛇腹の本を作ろうかと思いつく。黒くて長い、龍のような本。それを展示期間中は上空に吊るす。まるで、見上げると本の龍があるというのは、アジア的な宗教経験に重なる。試しに吊るしていると、ひなこさんから野菜のブロックプリントとか良いよね?と。あー、それいいかもしれない。「食べた」というのと、関連性を生めるかもしれないし。模索してみよう。そして今日は、きみの「ゆめを食べた本」はどんな本?ということで、それぞれプランを考えてもらい、ひとつひとつ検証していく。ゆめと本を掛け合わせて、ぜひ面白いものを作りたい。しかし、アサキから「最近のたごえ、部屋のなかで書いたり考えたりばっかじゃん」と鋭い指摘をうける。結構、ぐさりとくる。確かに。だけど、プランは考えないと、5月末の展覧会に間に合わない。ひとまず、プラン練りを進める。アサキは、吸盤のついた(!?)本。サツキは、筒状になった本。「いいこと思いついたー!」というサツキのアイディアを聞くのは、とても楽しい。キホは、やたらにゆめにパン屋さんが出てきていたので、食パン形の本をつくらない?と提案すると、いいよと。ルアンは、シカクサンカクと書いてあったので、では写真で四角いもの三角のものを集めた写真集が良いんじゃない?と。キホが「あたしも手伝う」と言うので、ルアンもまんざらでもなさそう。ヒマリは、タイトルに「うさぎとカレー」と書いてある。だったら、表面がうさぎのフサフサな感じの本にして、開いたらカレーだらけというのはどうだろうか?コウノスケはさすが、ようふくの本と。早くもジッパー構想を練っていた。サクタはやはり、きらきら図鑑。「すいしょう二つもってくるよ」と伝家の宝刀を抜く。自分は亀の本をつくろうと思うけど、さてどうするか...。後半は、アサキの指摘を受けて、ちょっと外に出かけようということで、田越川の下に降りてみる。ライカのポラロイドカメラを持ってきていたので、それで撮影遊びをしながら。水面に写り込んだ街の様子がおもしろくて、出てきたフィルムを逆にするとまた別の世界が現れることに、みんなとても楽しそうだった。さ・す・が!

21.5.13 / ホームセンターへ材料の買い出し

今日は小雨がずっと降っている。予定では、矢萩多聞さんの本づくりワークショップをしてもらう予定だったけど、緊急事態宣言の延長があったりとで、キャンセルに。まぁ、仕方ない。出発前に、多聞さんから送られてきた本をみんなに見せる。みんな興味深く見ている。もしかしたら、それぞれ本を作るということを、自分ごとにできているのかもしれない。なんか、参考にしてみようという感じが伝わってくる。コーナンへ向かう途中はまるで遠足。楽しそう。まずは、1階のホームセンターフロアで、紙やらシールやら、紐やら吸盤やらを探す。大きなスポンジが見つかって、これはキホのパンの本にできそう。素材がたくさんあって、それをどうやって本にするか想像を膨らませている時間がとても良い。2階の100均へ。細々したものを見る。一見、関係なさそうな素材を見て、何に使えるかを考えてみたい。ヒマリの、うさぎの綿も見つかった。アサキのサボテンも見つかったみたいで、ご満悦。一つのサボテンをいろいろな角度で撮影した写真集にするよう。最後に、コーナン名物のたい焼きを買う。みんなカスタードがいいと。帰りの車のなかで、それぞれ頬張ってもう18時。素材をみんなで選べたのは良かったかな。

21.5.20 / 展示する本の制作

いよいよ展覧会まで残すところ10日。午後から雨、追い込みのTAGOE。自分がつくる本も、ダミーを印刷したりと追い込み中。今まで撮った映像素材を、モニター上でさらに再撮影するという、あたらしい方法を採用している。16時過ぎ、みんな来るなり、だだーとアイディアを伝えてくれる。キホはかなり具体的にイメージしてきたよう。さぁ作るぞ、という意気込みがそれぞれに感じられて、頼もしい。一つ一つのプロセスを踏んできたということは、それが経験になっているわけで、こちらはそれぞれにそのことを覚えているから、過去あったことの点を結んであげるように声を掛けたり、アイディアのかけらを投げたりする。そうすると、あぁなるほどね。といった顔をしてくれるし、そこからアレンジをしたり、自分ごととして制作に集中していく。ヒナコさんとも常々言ってるけど、やはりプロセスが大事。プロセスを共に経験する/し合うということが大事。結果主義であったり、執拗に価値を求められる社会に対して、なかなか表面化しない個人のそういった経験から何かを作ること、あらためてそれを見つめていきたい。サクタは、本が作れるのかすこし不安になったようで?今日はおやすみ。もちろん無理に作ることもないけど、本人にやりたい気持ちが少しでもあるなら、一緒にやりたいなと思う。サツキは、自分の構想を次々と形にしていく、ホームセンターで買った紺色の画用紙を夜空に見立て(紺色を選ぶのがすごい!)、切った紙を色鉛筆で擦って、夜の家々のフォルムを描く。キホは、スポンジをパンに見立て、具を挟むように切り込みをいれて、そこに小さな本を入れるそう。とてもキホらしい!コウノスケは何やらお父さんと議論を重ねているようで、今日はひたすらみんなの制作を見たり、意見を言ったりしながら、たぶん自分の本の構想を練っていた。ヒマリは、ひなこさんサポートのもと、フェルトでうさぎを作っている。全フェルトの本なんてすごく魅力的。ルアンは、デコ写真集ということで、ページ数も18ページと決まっているようで、写真をL判で印刷して、そのまわりを自分なりにデコレーションするよう。こちらも、すごくルアンらしい。そしてアサキは、宇宙のビジュアル本をコラージュして、まるでサン・ラーのジャケットのようなぶっ飛んだものを作って、そこにさらに吸盤をくっつけていて、もはやそのクリエイティビティに恐れすら感じる...笑 と、みんなの素晴らしい制作の様子を見ていると、真面目に作っている自分がある意味バカらしく思えてきたけど、いやいやこちらも相当ぶっ飛んでいるヨ。追い込みで明日も制作。

21.5.21 / 展示する本の制作

金曜日の追い込み制作。今日は、アサキ・サツキ・キホ・ルアンの4名。アサキとサツキは早くに来てさっそく取り掛かっている。宇宙とサボテンを組み合わせた?コラージュ漫画のようなものを作るアサキ。迷いなくザクザク切っては貼って、独自の世界観ができている。サツキは、1冊作りあげて、写真集も追加で作るとのこと。しっかり一つ一つ形にしていくのが、すごい。もはや、フリーランスの仕事仲間と話しをしているかのよう。キホは、パンに見立てた大型のスポンジに入れる、大きいサイズの本を作っている。面白いのは、昨日作った小さいサイズの本と同じデザインにするとのこと。そういうこだわりというか、センスが個性だなぁと思う。ルアンはとにかく「デコる」のには興味が湧くようで、ひたすら写真集のページをデコる。四角と三角と丸の形を集めた写真集を作る予定だけど、なかなか難しいのかなぁ、いまいちスイッチが入ってないようだけど、どうなるか。僕の写真集のテストプリントを床に並べて、セレクトをしていたら、その上に寝転がってきて、最初はやめてよーとか言ってたけど、いやいやこれは面白い現象じゃない?と思い、どうせなら思いっきり遊ぶ。一人ずつ写真に埋もれる。「写真って楽しいねー」とアサキ。こどもたちの身体に写真が重なる不思議さ、楽しさというのは確かにあって、上下左右も関係ないし、イメージの身体性のようなものが際立って見えてくるように感じる。今日も大切な気づきをありがとう。

21.5.22 / 海で作品の共同制作

3日連続TAGOE。今日は海で、作品の共同制作をする。黒い画用紙をつなげた何も書かれていない本に、海に落ちているものにアクリルを塗り、スタンプしていく。ある種のパフォーマンスとして映像に残しておけば、それも合わせて展示すると見応えを作れるかもしれない。でも、そんなに都合良く、いろいろなものが海に落ちているのだろうか、と不安になって朝起きてしまう。行為はシンプルだし、良くあるワークショップの方法な気がするので、そこに出来上がってきたものが生々しいものがたりを持って現れるのか?不安になる。でも、僕の想定の範囲内のものなんぞ、大したことがないから、そこはみんなを信頼するしかないな。雨が降ってしまったら不可能なので、そこはさすがに晴れ男なのでばっちりで、風も弱めで作業がしやすい。前日に雨風が強かったせいか、海岸にたくさんの漂流物などがあって、なんとブロッコリーや玉ねぎなんかも落ちていた。あらためて、海にはゴミも含めていろいろなものが落ちている。それがそのまま写されたわけだけど、この意味や可能性については、じっくりできあがったものを見ながら考えて、テキストにしたいと思う。

21.5.27 / 展示する本の制作

雨。午前中、横浜駅西口のKinkosに行き、Sleeping imagesの印刷をしてくる。あまり単価計算をせずに、用紙やら加工やら何やらをお願いしたら、なかなかの単価になってしまった。。けど、Kinkosはなかなか用途によっては便利かな。さて、逗子に戻ってきて、今日はいよいよ仕上げの制作だから、ちょっと気合いを入れてフォローしていかなければ。ヒマリが早めに来たので、うさぎとカレーのゆめの本を、フェルトでどうやって作っていくか、あらためて意見交換する。コウノスケは上にある&herのアトリエに直行。今日はお父さんとガシガシつくるよう。逗子小メンバーも到着し、どんどん進めていく。ルアンがお母さんに写真を印刷してもらっていて、それを一緒に選んで用紙に貼っていく。面白い写真が集まっている。特に表紙の写真が、コンセプトをばっちり射抜いている。本づくりはドロップアウトするかなぁと予想されたサクタも、今日は来た。ということは、たぶん本人やる気なんだろう!ということで、ひなこさんがここぞとばかりに、サクタと詰めた話し合いをしてくれる。キラキラの折り紙から体験と発想を膨らませた、とても面白い本の方向性が生まれ、早速制作にとりかかる。なかなか、みんな仕上がってきた。明日も!

21.5.28 / 展示する本の制作

13時からビルにイン。三星さんがカッティングシートを貼りに来てくれる。前回の展覧会ではできなかったので、とても良い感じ。展覧会の雰囲気が出てくる。早めにみんな来て、昨日の続きを制作。サツキとアサキはすでに終わっているので、少し手持ち無沙汰で、一緒に田越川を散歩しに行く。今日来ない予定だったサクタも来て、昨日の続きを黙々とやる。ときおり終わっているメンバーが騒がしいので、「うるさい」と本気で一喝している。(けど、静かにならない)ルアンは集中力が切れながらも、少しずつ作業を進める。とにかく、デコる。早めに終えて、今日はサツキの誕生日ということで、お母さんが用意してくれたケーキで祝う。幸せそうなサツキ。ケーキを前に集合写真を撮る。今8歳だから、もう10年もしたら、みんな一丁前の大人になるんだなぁと感慨深い。みんなが帰ってからも、ハンドアウトに記載するテキストを書くため居残り。ひなこさんとよっちさんも、展示台に白いペンキを塗ったりと準備を遅くまで一緒に進める。三星さんとの約束の21時を過ぎても書き終わらない。一人一人の作品にテキストを寄せるというのが、なかなか難しい。というのも、ある意味で評価を与えるということだから、これは慎重にならざるを得ない。出来上がった作品を手に取り、じっと読んで見つめ、湧きあがってくる言葉に嘘がないか点検しつつ、一言ずつ置いていく。結局、家に帰って3時まで掛かってようやっと完成。布団に入った後も、頭が回転をやめないのでなかなか寝つけなかった。

21.5.29 / 準備

午前10時過ぎに到着。展示台の配置シミレーションや、共同制作作品「わすれられたゆめのすみか」をよっちさんと、宙に吊り下げていく。どうしたらこの作品が、生き物のように、空を飛ぶ竜のように見えるかを検証しつつ作業。結果、とても良い状態を見出せたと思う。この作品の、制作ドキュメントビデオも合わせて、見応えは、ある。ひと通り作業をして14時半より、まだ本が完成していないメンバー、ルアン、キホ、ヒマリが最終の制作に来る。もうみんなやることは分かっているので、特に口を出さなくても大丈夫そうだけど、やっぱりすぐに集中力が切れてしまったり、面白そうなことになる前に手を止めてしまうのはもったいないので、最後の最後まで注意深く見つつ、設営作業も進める。キホがパンの本を完成させ、ヒマリも羊毛フェルトの本に、ひなこさんが持ってきてくれたカレースパイスを振りかけて完成。いやぁ、よくがんばった!しかし、ルアンはまだまだ作業を重ねる。きっと、デコること自体が楽しいのだろう。しつこくやり続けるというのは、周りには嫌な顔されることも多いけど、作り手には必要な姿勢だと思う。そうは言っても、迎えに来たお母さんの用事もあるのでストップして、明日の会期初日にも作業をすることに、この際公開作業にしたら?と提案して今日は終了。いよいよ明日から会期。第二期も、ついにここまで来ました。

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