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得失点分析(ダイジェスト映像)を用いた分析 ~タギリスト的リポート⑥~

※この記事にはリンクや動画がたくさん貼り付けてあります。リンクはお時間があればご覧ください。動画は分析を理解するために重要です。ご覧ください。動画はWI-FI環境での閲覧をお勧めします。

得失点分析については下のリンクで説明しています。Zdenkoさんが作った素晴らしいフォーマットですので、興味のある方はどうか私かZdenkoさんまでご連絡下さい!

今回は失点分析です。前回は得点分析を行いました。

選手達を応援する権利は誰にでもありますが、クラブを支えていく覚悟は、一緒に苦楽を共にするサポーターにしか出来ないはず。失点を見ていくというのは結構辛いものです。ですから問題点をしっかり見て、クラブを支えるという気持ちでご覧下さるよう願います。

前回もお話ししましたが、得失点はポゼッション・トランジション・セットプレーの3つに分けて分類しています。

ポゼッションとトランジションの区別としては、相手が攻撃を開始してから金沢の選手に奪われることなくゴールに至った場合をポゼッション。金沢の選手が保持していたボールを相手が奪ってゴールまで至った場合、ルーズボールや金沢のクリアを拾ってゴールまで至った場合をトランジションに分類しています。以下のZdenkoさんの記事は大いに参考にさせていただきました。

https://omiyadangikai.hatenablog.com/entry/2019/12/31/082445

https://omiyadangikai.hatenablog.com/entry/2019/12/31/083154

得失点分析による2019年の守備

2019シーズンの総失点

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総失点は46で8番目に少ない数値です。しかし、リーグ前半の失点から見ると後半は、ほぼ倍に。これは金沢のトランジション(カウンター)に付き合わずに、しっかりと前半戦を分析し、弱点を突いてきた為です。その弱点を紐解きます。

1、ポゼッションの失点

キーとなったリーグ前半の3失点

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リーグ前半と後半のポゼッションによる失点の種別です。ゴール前に押し込まれての失点とライン裏・前線を狙う失点が増えているのがわかります。以下にあげる前半戦の3失点が、のちのポゼッションの失点を増やす原因になり得ただろう、と思われる失点でした。

以下、個人を誹謗中傷する意図で名前をあげているのではありません。分析の結果の事実であり、技術の向上によりさらなる活躍をすることを切に願っています。

弱点その1:廣井のディフェンス・・・第3節 東京V戦 林のゴール

オフサイドかどうかをアピールする一瞬の間、そこから追いつけず、シュートを振り抜かれてしまう間合いの取り方。

22節でホームに東京Vを迎えた時も、林くんは廣井くんを狙ってゴールを決めています。一度、廣井くんの前に入っていくと見せかけて、後ろに離れる動き。

弱点その2 沼田(小島)のディフェンス・・・第12節 福岡戦 ミコルタのゴール

ミスくらい許せよ、とお思いかもしれませんが、キックやヘディングによるミスからの失点が3回。

上の動画では1:47くらいで栃木右WB浜下くんにパスが出ますが、対峙する沼田くんが、ものすごく遠くにいます。

廣井・沼田を狙ったと思われる失点はそれぞれ10点。そのうちリーグ後半の失点が廣井7沼田6。開幕の岡山戦でベンチ入りできなかった廣井くん。弱点を克服してもう一度、戦力として戻ってきて欲しいです。小島くんも、終盤戦12試合でスタメン出場ながら、クリアミスなどで失点に関わる事4回。

3人の共通点はディフェンスする際に、マーカーをゴールと自分の延長線上に置く事、ボールとマーカーを同一視野におく事、もしボールかマーカーどちらを見るか選択しなければならない場合はマーカーの動きを優先する、危険な場所での空中戦は敵と一緒に競り合う、などディフェンダーとして心得ておかなければいけない事が出来ていません。

また、これはSBだけの責任ではありませんが

①DFライン脇②ライン裏③チャンネル(CBとSBの間)が多く狙われているという事もわかりました。(ポゼッション失点時)(図のメンバーは2020シーズン)

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沼田くんと小島くんはもう金沢にはいませんが、新天地での活躍を心から願っています。

弱点その3:チーム全体としての課題 PA付近が空く・・・第21節 水戸戦 志知のゴール

前回のタギリスト的リポート⑤でも、横浜FC戦について触れましたが、この21節の水戸戦で初めて、この形でやられていた事が判明。僕が初めてレビューを書いた試合で、当時は真ん中が空いているという事は分かっていましたが、意図的にそうしているとまでは気が付いていませんでした。下の図は、上の動画が始まって3秒くらいの選手の位置を示したものです。

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自陣PA内にGKを除くと、8人が入れられていて、垣田・小松との間が大きく開いているのも確認できます。これだけゴール前に人数が集中してしまっては、ペナルティアークからミドルシュートを打たれてしまいますし、カウンターに繋げる事も出来ません。ボールをクリアしても、攻撃に転じにくいのです。

こちらはトランジションになりますが、徳島戦での失点シーン。同じくペナルティアークの周囲が空いています。

ゴールにはならなかったものの、同じような岡山・上田くんのシュートシーン。このようなシーンが多く見られました。

このPAが空くことの対策は、開幕戦で山田くんが見せてくれました。詳しくは岡山戦のレビューをお読みください。

しかし、それは空間を埋めるという事が出来たという事で、カウンターが出来るようになった、CKが増えたという事ではありません。それは今シーズン、これから皆さんと見ていかないといけない課題です。(僕なりの考えはあるのですが、またいつかのレビューでお話ししますね)

3つの弱点
廣井のディフェンス
沼田(小島)のディフェンス
ペナルティアーク付近が空く

以上の3つの弱点で、リーグ後半の失点の約64%を占めていた訳ですが、ここから他の失点パターンを見ていきます。がその前にひとつ。

https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201706050006-spnavi

もう一度Zdenkoさんがこの得失点分析を作るきっかけとなった、ロティーナさんの言葉を思い出して、見返した事があります。それは以下の言葉です。

失点は3つのタイプに分類できる。1つ目が「避けることのできない失点」で、ゴラッソ(スーパーゴール)が典型だ。2つ目は、例えばGKのパンチングミス、CBのクリアミスなど「ヒューマンエラーによる失点」で、シーズンにおいて一定数ある。3つ目が「避けることのできる失点」。ポジショニングミス、カバーリングの遅れなどに起因するもので、守備の戦術コンセプトを知っていれば、実行していれば避けられたゴールだ。実はJ2というリーグはこの失点が非常に多い。(記事抜粋)

失点を0にする事は不可能に近い事ですが、避ける事の出来る失点は減らす必要があります。この言葉を思い出して、Zdenkoさんのフォーマットには無い分類を追加しました。上記の抜粋の通りです。

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ゴラッソ

ポゼッションの失点の中で以上の2つはゴラッソに認定。2例ともビヒランシア(守備の警戒)をしていれば防げたかも知れませんが、一応ゴラッソに。

ヒューマンエラーは、先ほどあげたミコルタさんのゴールのようなものが5つ。

「避ける事の出来る失点」に該当し、3つの弱点に当てはまらなかったパターンは以下の通り。

ゴール前に押し込まれる

ズラッと並べてしまいましたが、こういうやられ方も金沢の弱いところ。共通点はボールウォッチャーになっていて、得点者をフリーに近い状態にしてしまっている事です。それにしても横浜FC戦のゴールはいつ見ても胸糞悪い(苦笑)

大外レーンからのクロス

これもゴラッソに近いんですけど、クロスへのプレッシャーが甘く(カバーリングが出来ていない為)呉屋くんの二人の間に入るタイミングが絶妙。

ちなみにポゼッションの失点の中でも、速攻を仕掛けてきたのが5回(約19%)、遅攻だったのが21回(約81%)。金沢の速攻に、速攻で付き合わないという戦法がほとんどでした。(場合にもよるが)

2、トランジションの失点

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トランジションの失点は12。この少なさは先ほどから触れているとおり、金沢のトランジションに付き合わないチームが多かった為です。そのわりにリーグ後半に金沢のトランジションの得点が伸びたのはさすがでした。失点を抑えられればもっと良かったのですが。

トランジションの失点で、3つの弱点に当てはまらず、「避ける事の出来る失点」としてあげられるのは2パターン。

ロングカウンター

これも廣井くんのポジショニングがあまり良くないのですが、その前に福満くんが抜け出しているところに反応出来ていません。マークの受け渡しのミス。チームで共有すべき問題です。それにしても水戸のゴールはどれも嫌な所を突いてきます。次も水戸です。

ロングボール→セカンド回収

ロングボールやクリアの精度が低く、相手のボールになってしまう事が多かったのも印象的でした。これもヒューマンエラーに入れても良かったのですが、チーム全体の抱える問題だと思います。カバーリングのカバーリングが出来ていないのも共通した問題点です。

3、セットプレーの失点

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Football Labさんによると、セットプレーに関する失点は、大宮に次いで少ない金沢(山形が同数で2位)。データサイトによって、どこまでをセットプレー関連の失点とするのかは違いがありますが、これは誇れる数値だと思います。

PK以外のセットプレーは4つ。ニアに2本、中央に2本蹴られていてファーには蹴られていません。ファーは比較的、上にボールを上げないといけませんしタイミングも計りやすいからかと思いますが、サンプルが少ない為に詳しい事は解りません。セットプレーの得点の時にも触れましたが、このフォーマットを共有して下さる方が増えると、このデータを分析する事が出来るようになると思います。

個人的にはPKを与えてしまったプレーを、分析する必要はあったかなと思っています。その場面をトランジションかポゼッションかに分けて分析する。リスクマネージメントを重んじるロティーナさんが、まずダメ出ししそうなところですね(笑)それはまた時間のある時にやっておきます。

失点から今後見るべき点

3つの弱点は、選手が入れ替わったからといって改善されているのか
ボールウォッチャーにならずマーカーを意識しているか
クロスに対しての強いプレッシャー、マークの受け渡しなどの連携
セカンドボール・クリアボールを繋げられるか

おまけ

ポゼッションで?に当てはまった失点シーンの一つです。これを防ぐにはどうしたらいいのか。それともゴラッソなのか。皆さんの意見が聞けたら嬉しいです。

最後に

最後までお付き合いしてくださった方、本当にご覧下さりありがとうございました。「得失点分析をすべき理由」で書いたような「美味しい」と感じて頂ける記事になっているかはわかりませんが、良いところも悪いところも全て書いたつもりです。もしリーグ戦が再開された時に「これってあの時に見たパターンだな」とか「このパターン初めてじゃね?」とか思ってもらえたら嬉しいです。このZdenkoさんのフォーマットを広める為にも拡散を重ねてお願いいたします!

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