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2021 J2リーグ 第28節 ツエーゲン金沢 VS 町田ゼルビア戦を終えての考察 変化こそ挑戦

ノルマ=残り15試合で勝ち点23

これを書いている時点で27試合消化で勝ち点27。1試合で平均勝ち点はちょうど1。そう考えると残りの試合のノルマがかなり厳しいと言わざるを得ない。勝ち点49が昨年の降格ライン。勝ち点23獲っても残留出来るとは限らないのだが。

勝ち点23とは8回勝って勝ち点24になる訳だから、残り試合約半分を勝たなければいけない事になる。27試合終わった現時点で7勝しか出来ていないのにだ。

監督解任という事も考えられなくはない数字だが、現実的な事を言えばもうそのタイミングでは無い。はっきり言って遅い。下位のクラブは北九州を除いて早いタイミングで監督を交代している。

一番交代が遅かった群馬でさえリーグ中断明けは愛媛・山口・栃木・金沢・秋田と、順位の近い相手との対戦で2勝1敗2分勝ち点8とまずまずの成績で20位から16位に順位を上げた。

監督交代に舵を切ったとして、残り15試合で勝ち点23を得る事はかなりハードルが高い。オファーがあったとしてもかなりの覚悟が無ければ受ける人はいないだろう。

失点を減らしたかった金沢

かなり厳しい現実に直面している今、すべき事は何なのだろうか。

失点を減らす必要があったシーズン当初の金沢。2019シーズンは過去最高の11位になったものの、同じくらいの得点力の山形・水戸が6位・7位と、失点を抑えられれば目標の1桁順位は十分に狙えた。

2020シーズンはタイトなスケジュールの中、降格の無いシーズンとなり、若手を積極的に試合に出し経験値を積ませ、いよいよ集大成の2021シーズンとなるはずだった。

開幕当初は上手くいったが、対策されると他のプランが無いという致命的な欠点が露呈してしまう。中に絞ったSHに自由なスペースは無く、FWは言いつけを守るように動きを制限され、クロスは相手の予想を外す事なく跳ね返され、セカンドボールは奪われる。スピードスターが駆け引きで相手を置き去りにする事はなく、飼い主が投げたフリスビーを全力で取りにいく犬のように走らされる。迫力の無い攻撃と踏ん張れない守備。一度リードを許すと追いつく事さえ出来ない。

変化を受け入れる事が出来るか

もう打つ手が無いように見える金沢。しかし「練習します」で残留出来ないところまで来ている。積み上げて上手くなるまで待っていたらシーズンは終わる。

早々に監督交代という変化を選んだ他チームには、着実にその効果が表れている。直近5試合の勝敗を比べても金沢は22チーム中一番調子の悪いチームと言っても差し支えないだろう。

何がしたい?

今の金沢の試合を見ていて一番思うのは「何がしたいのかわからない」という点だ。相手のウイークポイントをひたすら狙うとか、もしくは自分達のストロングポイントを生かすとかそういう考えが一切無い。というか見えない。

今回の町田戦で言えば、横の揺さぶりに弱い傾向を考慮してパスを組み立てるとか、181㎝の深津くんと180㎝の高橋くんというそこまで高身長では無いところに、185㎝の瀬沼くんが前半から出場して空中戦を挑むとか。

自分達と戦って負けている

そういう相手の傾向や対策をサクッと無視して自分達の都合で試合をしようとして何も出来ない。だから「何をしたいかわからない」ように見えてしまうのだ。己との戦いに負けているよう。

長所を伸ばせ

相手のウイークポイントを突けないのであれば、自分達のストロングポイントを生かすしかない。そこで注目したのがボール奪取だ。

これはFootball LABさんに載っているツエーゲン金沢2021シーズンのデータである。数値は試合毎に積み重なっていくのであまり注目しなくても良いのだが、(ボール)奪取が1位となっている。

ツエーゲン金沢は皆さんもご存じの通りボール支配率の高くないチームだ(22チーム中19位)。相手にボールを持たれる事が多いという事はそれだけ攻められる回数が多いという事。故に奪取ポイントも高いし守備ポイントも高くなる。しかし、それがカウンターが刺さる一番の好機。相手を自陣に引き込んでおいて一気に攻め込むのがカウンターの醍醐味。

だが

攻撃回数 5 位

30mライン進入回数 10位

ペナルティエリア進入回数 15位

シュート回数 18位

といったように相手ゴールに近づくに連れそのランキングは下がっていく。

ちなみに奪取ランキング30傑に藤村くん4位、大橋くん5位、渡邊くん17位、松田くん25位と4人ランクインしている。1チームで4人ランクインしているのは金沢だけだ。ボランチとサイドバックが連携してボールを狩り取っているというのが良くわかる。

これは今シーズンのプレースタイルの指数。高ければそれだけその攻撃を良く行っているという事。金沢はロングカウンターの指数、要するに攻撃におけるロングカウンターの割合が秋田と並んで22チーム中1位である事がわかる。

Football LABさんのロングカウンターの定義とは「ディフェンシブサードでのボール奪取から15秒以内にアタッキングサードを狙った攻撃」という事だから、ボランチやサイドバックがボール奪取した後の攻撃に合致する。

しかし、実際はどうだろう。カウンターがチャンスになる事はたまにあってもゴールに結びついているシーンは数回しかない。奪う事も出来ていてカウンターも多いのにそれがゴールに結びついていないのだ。

勘のいい方はこれまで読めば大体わかっただろうが、先に挙げたボール奪取30傑に入っている4人がカウンターにまで関与している事は少ない

あと一人追い付いてくれば数的優位に立てるのに、あと一人センターバックとサイドバックの間に入っていければ相手を引き付ける事が出来てシュートが打てるのに、と思う事がいかに多かったか。

リスク管理は大切、しかしリスクを負わないと勝ち点は獲れない。

もちろん前に人数をかければリスクは伴うし体力も消耗する。しかし、リスクを負わず攻撃と守備が分断してしまい、得点力不足に陥ってしまっているのは間違いない。さらには全体が間延びして選手間の距離が広がってしまう悪循環。相手に怖さを与えられない攻撃はすでに攻撃とは呼べない。

通常金沢が守備の時、攻撃している側は金沢の残っているFWに2人付く。左サイド(金沢右サイド)を攻めているとしたら、逆サイドのサイドバックは相手にボールを獲られた時の事を考えて守備に備える。

ボランチの一方または両方がボールの中継役として4-4ブロックの前に立つ場合がほとんどだから、金沢がボールを奪取してカウンターを仕掛けようとした時点で、FWとサイドハーフの他に攻撃参加が見込めないと数的同数から数的不利になり、攻撃が完結出来ない状況に陥るのだ。

そのままではこのまま

リスクを冒さず前線4人で攻撃を完結させようとしている。しかし、試合でリスクを冒さないと15試合で勝ち点23はおろか、残り数試合で降格が決まってしまう可能性もある。

奪う事は出来ていてカウンターの土壌もある。残りは少しの「変化」だと思う。山口戦が延期になった事で順位が近いチームとの連戦になる。ここで今までと変わらない事をしていれば、残り試合のノルマのハードルはとてつもなく上がる。時間は待ってくれない。

変化こそ挑戦

実際のところ3バックにチャレンジしても良いし、マンツーマンを止めても良いと思う。ただ、ヤンツーさんがそれをするとは到底思えない。僕の中でカウンターに賭けるというのは、ポジティブに考えヤンツーさんに合わせた策だ。このままで終わっては今シーズンは「挑戦」とは呼べない。

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