見出し画像

得失点分析(ダイジェスト映像)を用いた分析 ~タギリスト的リポート⑤~

※多くのリンクと動画を張り付けてあります。リンクはお時間があればお読みください。動画は分析を理解するために重要なので、WIーFI環境での閲覧をお勧めします。

昨日UPした記事で、大宮のZdenkoさんが考案されたフォーマットを使うに至った経緯、使ってのメリット・感想を書きました。

今回はこの素晴らしいツールを用いた、実際の分析をして、昨シーズンの金沢をもう一度振り返ります。下のリンクのZdenkoさんの総括も、参考にさせてもらいました。

https://omiyadangikai.hatenablog.com/entry/2019/12/31/083154

やるべき事=しっかり向き合う事=共に立ち向かう事

柳下監督は「やる事は変えない」と言っています。指揮4年目で選手は入れ替わったものの、戦術が浸透していないなどと言い訳は出来ません。目標はプレーオフ進出(HPには載っていないが)となれば、昨シーズンより良くならなければいけません。これはもうノルマです。(これを書いた後に降格無し、昇格2チームで今年は行う事が発表。であればクラブとしての目標はどうなる?)

ですから、金沢サポーターの皆さん一人一人にもう一度考えて頂きたい。何が変わったのか、何が足りないのか。もう一度、昨シーズンの35節甲府戦(2-3で敗戦)後の柳下監督の言葉を引用します。

「ミス一つにしても、もっともっと厳しさを持って欲しいし、相手のボールを奪い合うところでももっと激しさや厳しさを出してプレーをして欲しいと思います。本人はやってるつもりでも、評価したり見るのは周りの人たちです。それは我々スタッフであったりお客さんであったり。そういうところを自分で気づいて毎試合100%を出し切れるようにしたいと思っています。」
「個人のプレーではなく、2人3人が絡んだ場面で崩しているシーンはいくつかあったので、そういうのはやり続ければいい。甲府さんよりも良いプレーをしているなと感じる場面もありました。でも、上に行くためにはもっともっと厳しくやってほしい。みんな甘い。選手一人一人に対する評価も甘いし、誰かが辛口で評価しないと成長しない。

このツールを僕が必要とした訳は、確実な根拠が欲しかったからです。監督が頑張っているから、選手が頑張っているから応援する。それはわかります。私も選手や監督はリスペクトしていますし大好きです。

金沢サポはみんなそうだと思います。しかし幾ら我々が150%の力で応援しても、勝てないものは勝てません。勝利にこだわらないのであれば良いですが。そうではないはず。

負け続けても「良い試合だった」と、月曜日の仕事の活力になるでしょうか。柳下監督ほどの負けず嫌いの、選手より悔しがる監督が「負け続けてもいいから頑張っているところを金沢のサポーターに見せられればいい」なんて思っているはずありません。

勝てない時の理由はシンプル

選手が頑張っているのに勝てない。それは頑張りが足りない、もしくは指導・マネージメント・分析が悪いからです。

勝敗に関係なく明るい気持ちにさせてくれる。それを悪いとは思いません。

ただ負けた根本に目を向けず、自分達の応援が足りないからだと思う事は、問題をうやむやにして、選手達を結果的にぬるま湯に浸からせてしまってはいないでしょうか。そんな事思っている人達がいないのなら、それでいいのですが、一緒に戦う気持ちがあるなら、一緒にぬるま湯に浸からずに、根本を見つめ、選手と一緒に荒波を越えましょう。選手や監督にはその覚悟はあるはず。

ただ批判すればいいのではないので、僕は根拠に基づいてお話ししています。しかし、僕と同じ意見でなくて全然良いので、我々がまず、スタンドで、TV画面を通して、150%の力で応援するのと同じ気持ちで根本と向き合い、J1への土壌を作りましょう。そうしなければ選手や監督、クラブの力だけでは絶対にJ1には行けないと思います。J1は誰かが連れて行ってくれるステージではありません。誰かがそんな気持ちならクラブがJ1へ行ってもJ2へ引きずり落としてしまう。誰かがそんな気持ちなら、今年はJ3降格が無くても来年落ちる。

さて本題です。得失点はポゼッション・トランジション・セットプレーの3つに分けて分類しています。

ポゼッションとトランジションの区別としては、攻撃を開始してから相手に奪われることなくゴールに至った場合をポゼッション。相手が保持していたボールを奪ってゴールまで至った場合、ルーズボールや相手のクリアを拾ってゴールまで至った場合をトランジションに分類しています。

得失点分析による2019シーズンの攻撃

2019シーズンの総得点

金沢は、セットプレーとカウンターが特徴のチームであるとの印象が強いと思いますが、やはりセットプレーが一番多く22点、ドランジション(カウンター)が21点となっていてポゼッションの得点は15点です。

金沢の最初の転機は、第3節東京V戦でした。

開幕から2戦先発の梅鉢くんを大橋くんにスイッチ。2018シーズンは藤村くんの相棒は、どちらかが代わるがわる務めていましたが、2019シーズンは、ここから完全に大橋くんに固定されました。

さらには小松・大石が初先発で、長谷川くんも途中出場します。試合には敗れましたが、後半の猛攻で手ごたえを感じたのか、第4節町田戦で6得点の大爆発。それ以降リーグ前半戦は新加入組が力を発揮します。

前半戦のゴール種別の中心は、ポゼッションとトランジションで、セットプレーは町田戦でグンと伸びているものの、その後しばらくはあまり伸びませんでした。

その中でも14節~18節は辛い時期で、垣田くんが14節長崎戦で負傷。小松くんが日本代表遠征で16~18節までいなくなり、加藤くんがFWをしたりしましたがチームは5試合で1得点しか出来ていません。

19節に小松・垣田が帰ってきて得点力が徐々に戻りますが19~21節も1勝2分けと波に乗り切れません。

そして第二の転機がやってきました。第22節、こちらも東京V戦でした。

毛利くんの湘南移籍と山根くんの加入です。途中出場した山根くんのJ2初ゴールは衝撃的でした。

ここからトランジションが復活。セットプレーも波はありましたが、前半に比べると伸び率は上がっています。そして小松くんの出番はほとんど無くなり、ポゼッションも後半では、じわじわとしか上がっていません。

ポゼッションの停滞は、長谷川くんの負傷欠場も影響しています。長谷川くんが負傷した30節の鹿児島戦までに、ポゼッションによる総得点は10点ありますが、彼はそのうち4つに関与しています。

しかし、ポゼッションによる得点が停滞したというより「激しく襲い、素早く仕留める」ヤンツーサッカーは山根永遠というFWを手に入れて、より方向性を確かなものにしたと言えるでしょう。ポゼッションへの関与が一番多かった大石くんがスタメンから外れたのも、ヤンツーサッカーがシフトチェンジするための一つの方法だったように思います。

という訳で得点の概要は

①ポゼッション・・・リーグ前半は得点源となるも、中盤以降はあまり伸びず・・・小松・大石の出場減と長谷川の負傷欠場の影響・・・トランジションへのシフトチェンジ
②トランジション・・・リーグ前半は伸びを見せたが、中盤にかけてストップ。後半に復活し得点源となる・・・山根の加入の影響
③セットプレー・・・前半はあまり見られなかったが、リーグ戦中盤以降で武器となる

ここまでだと

リーグ前半はポゼッションとトランジションを武器に

リーグ後半はトランジションとセットプレーを武器に

と、見てる方としてはわかりにくいシフトチェンジをしている事がハッキリと分かりました。これもこのフォーマットのおかげです。では具体的に、どういう得点パターンを持っていたのか振り返ります。

ここを読んでいる時点で、65%の人が閲覧を止めていると思います(笑)

読んでいるあなたは素晴らしい。選手やみんなと共に戦える強者です。もう少しお付き合いください。

①ポゼッションの得点パターン

上の表はポゼッションの得点パターンを表したものです。このパターンがあらかじめ用意されていて分類するだけなのです。それが凄いと思いません?

15ゴールある中で大外からのクロスは7点。

その中でも代表的なのは、沼田くんの繰り出すニアへの鋭いクロス。

これに関しては ~タギリスト的レポート③~「ポジショナルな攻撃」で金沢の攻撃とその対処法について触れていますので、時間があったらお読みください。文中の図では、クロスを上げるのは加藤くんになっていますが同じ事です。

皆さんも見覚えがあるかとは思います。相手CBが守備にセットした瞬間を狙ってFWとタイミングを合わせ、GKが出てきにくいところへ早いクロスを送っています。一番キレイに決まったのが長崎戦でした。今シーズンもこのパターンは継続すると思います。

大外レーンからのクロス①

こちらが加藤くんのクロスです。

大外レーンからのクロス②

ブロックのライン間を使った得点は4つ。山口戦でみせたパス回しは、相手を翻弄したという意味では昨シーズンで一番、と言ってもいい華麗なものでした。

ブロックのライン間、DH脇を使った攻撃①

しかし、リーグ後半戦で見られたのは琉球戦の一度だけです。

ブロックのライン間、DH脇を使った攻撃②

1ゴールのみとなった個人技は長谷川くんのドリブル突破です。

完全なる個人技

永遠くんのJ2初ゴール。仕掛けられる長谷川くんの個性は相手にはかなりの脅威。欠場がなければもっと見られていたでしょうね。今シーズンも期待ですね。

ポゼッションの得点パターンで欲しいもの

ブロックのライン間を使った攻撃やプレスはがしは、個々の技術の高さが求められますし、連携がしっかりしていないと出来ないので、あまり監督が好むのもでは無いと考えています。

大宮のプレスはがしの一例 VS山口戦

そう思うと、より簡単なレイオフ(ポストプレー)での得点を増やすべきだと思います。フィジカルモンスターのルカオさんを活かさない手はありません。

イメージとしては、もう少し相手のゴール側で行いたいプレーですが、ヤンツーサッカーにぴったりの素早い仕留め方です。こういうシンプルだけど効果のあるプレーを増やしていきたいです。

ロングボール→レイオフ

少ないパターンの攻撃が増えていくのか、主に使っているパターンを伸ばしていくのか。これがこのフォーマットの分析を使って良くわかる事の一つです。

今シーズンのカギ②トランジションの攻撃パターン

トランジションによる得点は21点。この場面ではボールを奪った時の状況を分類するのですが、ダイジェストに入っていないものが3つありましたので確認不可としました。多少、確認不可となるものがあるのも仕方ないのですが、そこがこの分析の弱いところかもしれません。しかし、ある程度の傾向はわかります。

一番多かったのは、金沢の激しいプレッシャーに相手がミスをする場面です。

山口戦で見せた、パスミスを小島くんがカットし→杉浦くんの芸術的なロブスルーパス→加藤くんのゴールは見事でした。

プレスによるミス誘発①

次も金沢のハイプレッシャーが効いたゴール。相手の状態が酷かった事もあったでしょうが・・・。

プレスによるミス誘発②

このゴールのからくりは、僕の福岡戦レビュー内の「相手のミスを生み出せ」で詳しく解説させてもらっています。ただミスしたわけでは無い事を見つける、理解できるとサッカーがまた一つ面白くなりますよ。

次はロングカウンター。

リーグ前半戦では一度しかゴールが生まれていません。ちなみに僕が昨年No.1に選んだのはこのゴールです。

ロングカウンター①

下の2つのシーンは、山根くんがいてこそ出来る攻撃だと思います。ですから何故、今シーズン開幕戦で途中出場、しかも左SHで使ったのかが不思議です。

ロングカウンター②

③は永遠くんの持ち味のドリブルで、センターサークルからペナルティアーク前まで前進。この武器をもっと生かして欲しいです。

ロングカウンター③

サイド追い込み

これに関しては、動画には映像が収まっていなかったので、ここにはあげません(テキスト速報で確認・分類)がどちらかのサイドに追い込んでボールを奪う事は、チームの原則として行っている事だと思いますので、奪ってからのゴールが少ないのは寂しいですね。(注※30節鹿児島戦では追い込んでスローインになってからすぐリスタート、相手の隙をついて藤村→クルーニーがゴールというトリックプレーが見られました。隙をつくのは巧い金沢)

ロングカウンターとサイド追い込みを、どれだけ伸ばせるかが今シーズン浮上のカギです。

昨シーズン後半、下の図のように自陣に押し込まれることが多かった金沢。こういう形になる事が今年は多くなると予想されます。なぜなら金沢は今シーズン開幕戦でも、やり方を変えて来なかったからです。簡単にいうと前線からの強いプレッシャーと、どこまでも付いていくマンツーマンです。やり方を変えないのであれば、相手の想像を上回るほどの連携と運動量が必要です。

なるべく高い位置でボールを奪い獲る事と、早くボールを前に運ぶ事。これが伸びないと上位浮上は厳しいです。ちなみに下の図は、昨シーズン36節横浜FC戦で用いた図です。

セカンド回収

こちらはCKから流れてきたボールを回収してクロスを上げていますが、セカンドボールを拾う(二次攻撃に繋げる)という事も金沢の弱いところの一つです。これも2項目合わせて3点。しかし、言い換えれば伸ばす事のできる要素のひとつでもあります。

縦パス奪取からの得点は二度とも加藤くんでした。金沢がざわついた高速シザース。山形の皆さん、加藤くんはこんな事できます(笑)

中央縦パス奪取

ただ一つ、開幕岡山戦で永遠くんを左SHで起用した理由を上げるとすれば、加藤くんのような動きで相手を引き付けて欲しかったのではないか?と思います。

③セットプレーの攻撃パターン

CKでの11得点の内訳は、小松2、クルーニー1、加藤1、廣井3、山本1、垣田1、杉浦1となっています。ちなみにキッカーは一度だけ金子くん(アウェー水戸戦・藤村累積出場停止)で他は藤村くんです。

右側からのコーナーキック

左側からのコーナーキック

コーナーキックはパターンが決まっていました。パターンの詳細については上のリンクの「Ckの役割の変化」をお読みください。パターンはありますが、その時々で役が違うのでスコアラーがバラバラです。このパターンにハマらなかったのは第3節の東京V戦のゴールのみでした。


さらに今シーズン開幕戦では別のパターンが見られました。それは下の岡山戦レビューで紹介しています。

しかし、コーナーキックに関しては、先ほどのサイド追い込みの場面でお話ししたように、自陣に押し込まれてしまう事が多くなると、敵陣に入り込む時間が少なくなるためCK自体の数が少なくなります。昨シーズン後半35節甲府戦では3本、36節横浜FC戦でも3本、39節千葉戦では2本、今シーズン開幕戦の岡山戦でも2本しかCKを出来ていません。1試合2回のチャンスでゴールを決めるのは、バルセロナでも難しいのではないでしょうか。

フリーキックは二つのパターンに分かれます。ポゼッションの「大外からのクロス」に似た①のパターンと、ファーにふわっとしたボールを出してヘディングで折り返したボールを押し込む②のパターンです。

フリーキック①

フリーキック②

永遠くんがキッカーになって、こぼれ球を押し込んだゴールもありました。今シーズンもキッカー山根は見られるのでしょうか。岡山戦では杉井くんが蹴っていましたね。

フリーキック③

CKが減るとFKの機会が大事になってきます。ゴール前まで進入する事が出来なくても、PA手前くらいでファールを貰えるような、思い切りの良いドリブルやパスを狙って欲しいです。

PKについては、動画を見て分析をする事は難しいので、他チームと並べておきます。チーム名は順位上位から並んでいます。金沢は多い方に入ると思います。CK・FKもそうですが、ここを分析するためには他チームのデータも必要になると思っていますので、この素晴らしいフォーマットを、共有して下さる方が増える事を切に願います。

得点のまとめ

色々見えてきたものがあるので、まとめますと

・大外レーンからのクロスが昨シーズンのように決まるか
・ルカオさんのフィジカルを活かしてポストプレー(レイオフ)からのゴールを増やしたい
・セカンドボール回収を増やせるか
・自陣に押し込まれる展開が予想される為、サイドに追い込んでなるべく高い位置でボールを奪う事と、自ゴール前で奪ったボールをロングカウンターに持ち込めるか
・セットプレーからの得点が多い金沢だが、CK自体が減っている。いかに相手ゴール前に攻め込めるパターンを作れるか。思い切りの良いプレーでCKやPA手前からのFKを増やしたい

おまけ

分類不可となったものですが、藤村・大橋くんがこんな感じで得点を増やしてくれたらいいなと個人的には思います。

次は失点、といきたいところなのですが、長くなりましたので次回タギリスト的リポート⑥でお会いしたいと思います。またお付き合いくださいね。

ツエーゲン金沢応援集団「RED TAG」運営費用としてありがたく使わせていただきます