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イジメと亡霊 (1.2)

著者: 令和寛 絵:しめさば

1.理不尽な足跡

イジメを受けたのは2年前。だけど…
イジメ後遺症はまだ消えていない。

人を見れば、何か悪口を言われてる心持ちがして。人間がただただ怖い。そんな状態で友達もできるわけもなく…誰からも理解されれない世界で、僕は孤独だった。

逃げてはいけないけど、理不尽極まりなかった。
青春なんて無縁。イジメを受けたあげく、得てしてイジメをした側や、見て見ぬ振りをしたノーダメージの人が高校生活を楽しむ内容のsnsが発信されていて。要するに僕の人生に勝算なんかなかった。負の遺産があまりに大きすぎる。

肘の傷は数年経っても残ってるし、適切なコミュニケーションも取れない。メンタルは不安に包まれていて、嬉しいことが起こってもただただ無だった。

16歳。これはいじめを受けた少年の後遺症に苦しみながらあがく、どうしようもない、悲劇の物語である。

2.承認欲求

夜、無料漫画アプリを開きながら、0時を待っていた。0時の瞬間に漫画の感想をあげると、ランキング上位にのりやすいからだ。いつも通り2行の作者を肯定するのコメントを送信すると、たちまち共感を示すいいねのが増えて、2位のあたりで順位が安定した。

なにやってるんだろ、俺…。
ただ、孤独な僕は、夜のこの瞬間以外に承認欲求が満たされる瞬間がなかった。今から受験勉強でもやれば社長になって見返せるだろうか…。

でも、やる気はわかなかった。そう、希望すらも描けないどん底で、今日もただただ泣くだけだった。

僕の過去のいじめに気付いてる人は、おそらく誰もいないだろう。誰とも話してないのだから。
そりゃ恋愛だってしたいし、部活でワイワイ騒ぎたい。だけど、頭に描くのは全部妄想で。クラスの授業なんて、先生と目を合わさないのに必死だった。

確かに今はいじめられていないけど、僕の視線には常に被害妄想が付き纏うのである。
人が腕を上げる仕草、たったそれだけでも殴られるのではないかと構えてしまったり。

負から抜け出せない…。
下の階から聞こえて来る、家族の笑い声にすら腹立たしさを覚えた。夜遅くまで、話が盛り上がったみたいで、普通なら微笑ましい家族のはずなのに…

ー幸せそうな人、憎い。

苛立たしさと、自己嫌悪のスパイラル、僕はまた泣いた。
携帯の画面に目を戻すと、先ほどと別の漫画家の人がミスをして叩かれているのが目に入った。
コメントに目を通すと、どうやら10話ほど前に登場した母親と、同一人物の設定のはずなのに描写が異なっていたからみたいだ。
僕もすかさず便乗し、
「え、母親2人いるww」
とコメントすると、いいねが56くらいついた。

今日も1日が終わる。
惨めに…どうしようもなく。

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