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『漢』

「 厳密な 腎臓病食」 というものは、 生半可 では やれるものではない。

カリウムとリンを抜き、 塩分は1日6g、 タンパク質は 1日 卵1個分相当。
ただし 卵は 血栓ができるので 食べられない。
タンパク質は、 例えば タンパク質 25%カット の 低タンパク米や、 食パン など の 糖質に含まれる タンパク質だけで 1日の 摂取量は ほぼほぼ いっぱいになる。

果物はもちろん カリウムとリンが たくさんあるから食べられない。
野菜は 下茹で して カリウムとリンを抜いたもの。

宅配の 後期高齢者用 の 腎臓病食の 弁当を取っている。
おかずのほとんどは 主に 茹でた野菜で、 メインディッシュは 薄くて小さな わずかな肉と野菜を、 片栗粉でかさを増したものである。
当たり前だが 減塩食なので、 味はほとんどしない。

実際に 塩分 6gの 食事というのは難しく、 調べたところ、 ほとんどの 腎臓の悪い人は、 塩分8g~ 9gでなんとか 食事をしているということがわかった。

それで我が家では 塩分3%の梅干しを、 夕食の時に追加している。

酒もだめ タバコもダメ、 濃い味のものは食べられない、 いや、 味のするものが食べられない。

お父さんは 文句も言わず、 この食事を ずっと続けている。

どうしても耐えがたい時、 お父さんは 梅干しを舐める。
食べるのではなく、 塩分3%の梅干しを 端っこだけ舐めるのだ。

どうしても耐えがたい時、 お父さんは 月に2度ほど、 パンにジャムを塗って食べる。

もちろん 水分制限 もあり、 1日に 摂取していい 水分量は 1 L である。

小さなペットボトルの 微糖コーヒー、 お父さんの1日の楽しみは これである。

後は ひたすら 玄米茶ばかり飲んでいる。

朝食 昼食は、 何もつけない トーストを 2枚食べるだけ。

唯一、 楽しみだった バターボールの飴もやめた。

ボクシング選手より 厳しいかもしれない 食事である。

お父さんは絶対 文句を言わない。

味のしない弁当を食べた後、 必ず私を気遣って、「 今日の弁当はうまかった! いやーごちそうさま!!」 と笑う。

どれだけ辛いだろうと思う。

当たり前だがお菓子なども食べない。

テレビでは 食べ物番組ばかりである。

昔は、「 うまそうだなー!!」 と、 なんだか寂しげに 言っていたのだったが、 もう 全く 一言も言わなくなった。

いろんなところで、 私は、 腎臓病の旦那さんを持つ 奥さんと立ち話する機会がある。
 
味噌汁がやめられないで 腹水がたまり、 毎度救急車の世話になるとか、 漬物をどうしても食べてしまうので 浮腫が出て 腹水がたまってしまうとか、 そんな話ばかり聞く。

食べることというものは 本能である。

お父さんのやっている「 厳密な 腎臓病食」 というものは、 過酷だ。

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