例えば最期がくるとしたら。

2月7日。
お父さんが 死にかけた。

酸素飽和度が 84 から 90。

酸素ボンベを借りに行きたいが、 そのためには受診しなければならない。

お父さんは、 一切の延命を しないと決めている。
呼吸が止まった段階で、 何の処置もせず 自然死させてくれと言っている。
できるなら 我が家で、 これはお互いの のぞみであるが、 私がお父さんを看取る形で。

だから救急車を呼んでも、 やることが 何もない。

例えば 心不全を起こし、 苦しんだ場合。
そういった場合は 救急車を呼んで、 お父さん が苦しくないように 何らかの処置をしてもらえるかもしれない。

例えば 腎不全。
お父さんは 末期腎不全であるが、 ゆくゆく 透析をして、 療養病棟に入り、 体に回る 毒素で苦しまないよう、 処置をしてもらいながら 亡くなっていく 予定である。

だけれども。
コロナの後遺症もあり、 このまま 弱って 眠ったまま、 緩やかに呼吸が止まり、 静かに苦しむことなく 死んでいくのなら、 私は、 お父さんの手を 握りしめながら、 髪の毛を撫でながら、 ずっと顔を見ながら、 お父さんを見届けたい。

昨日は一日中、 まるでそんなだった。

途中からはもう、 酸素飽和度を測るのも やめた。

小さな息を、 時々するお父さんの 手を握りしめながら、 髪の毛を なぜながら、 お父さんの顔の横に 自分の顔を置いて、 この お父さんを、 全部全部覚えてよう、 そうやって1日過ごした。

お父さんの匂いを嗅ぎ、 握り返してこない お父さんの手を ずっと 握っていた。

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