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「愛している」の安売りをする男/安請け合いする女

出会って間もなく「愛している」と毎日の様に言う男が居た。女は少し動揺し、居心地が悪かった。本当に自分のことをその男が愛しているのか疑心安気に思っていたし、出会って2、3日では人を愛せないと考えていたからだ。男が「おはよう」と同じ頻度で「愛している」と言うのに対し、女は「ありがとう」と返事をしていた。

ある日、女も「私も愛している」と返事をする様になった。理由などなく何となくだった。そろそろ自分も相手の気持ちに応えなければと正直プレッシャーの様なものを感じていたし、男が自分の事を本当に「愛している」と信じたかったのだろう。今思うとあまりにも軽率だった。

ある日、些細なことをきっかけに男は「愛している」と言わなくなった。女はやはり愛していなかったのだと思った。

二人はその時まで「愛している」の言葉の意味を定義したことがなかったのだ。女は「愛」「愛する 定義」「愛とは?」とネット検索したり、古い仏教の本ばかり置いてある書店に行って、「愛とは何か?」調べた。

女は思い出した。毎日の様に「幸せにする」と言っていた男を。そしてその男とも「幸せ」の定義をしていなかったことを。


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