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第二のブルジョア革命

最近、第二のブルジョア革命がやんわりと起きているなと感じている。物事の変化はゆっくりと確実に進んで、いつティッピングポイントを迎えるかは分からない。砂山がいつ崩れるのか分からないのと同様だ。だけど、物事の潮流は極めて力強いもので、変わりようがないように思っている。

背景

価値創造における人手の役割が次第に下がってきている。背景にあるのは計算機械の演算能力の向上だ。

これまでの価値創造システムは、比較的大人数+機械の組み合わせだった。機械は重要な役割を果たしていたが、大勢の人々を効率よく訓練し統率する仕組みを作り出す人々がリーダーとなりやすかった。もちろん今でも研修制度が優れている会社は強い。

しかし、近年においては、人が必要になる割合はどんどん下がってきている。先進的な企業のHRの基本は「才能のある人を採用し、楽しく働いてもらうこと」であって、人を育てることではない。機械が自動・自立的にこなすことができる作業は増えてきたし、小売業においても必要な人員は減ってきている。金融機関の人員削減も止まらないだろう。

そうすると、少人数の価値を創造する人々と、その人達によって養われるマジョリティの格差が明確になっていく。

現状の民主主義はこのままだと死ぬ

ここ300年の価値創造システムが比較的大人数の自律的な労働力を必要としたことが、民主主義システムが導入された背景なのだろう。

その民主主義はそう長くないと僕は思っている。理由は三つ。第一に機械により民意がハックしやすくなっていること。第二に、周辺に追いやられているマジョリティはより操作されやすいこと。第三に、上記に述べたような理由から民主主義が構造的に人々の生産活動関係と合致しにくくなっていること。一度できたシステムは強固なものだし、既存の仕組みへの挑戦がどのタイミングで承認されるのかは分からないけれど、確実に民主主義は変容していくんだろう。リブラが承認される日も近い気がしている。

そして、今回も制度変革の主役は一般大衆ではなく特権階級だ。第二のブルジョア革命はもう現在進行系で始まっている。近代初期のブルジョアジーたちにとって都合のよいシステムから、現代の特権階級にとって都合のよいシステムへの書き換えが起きているだけだ。ベーシックインカム(一部のお金持ちが大勢のそうでない人を養う制度の変形)もその文脈から発生しているものだと感じている。

それなのに、周辺に追いやられたマジョリティたちが、ポピュリスト政治家を自分たちの救い主であると信じているように見えるのが悲しい。彼ら・彼女らは自分たちのために有権者を利用しているだけで(そして、票を得られる範囲内で有権者に配分する)、決して追いやられた人々のために人生をかけようとは思っていない。庶民の味方を標榜している政治家が庶民であるケースは異常に少ない。

昔英語の勉強で覚えたチャップリンの「独裁者」での演説を思い出す。スクリプトはこちら

「全ての人に仕事と老後の安心を与えるという約束のもとに奴らはやってきたけど、奴らは絶対にそんな約束は守らない。独裁者は自分たちだけを自由にして、人々を奴隷にするのだ。

分断されていく世界

計算機械の進歩は全ての製造工程における人件費率を低下させていく。そうすると、人件費が安い国で生産活動をすることが大して効率的ではなくなっていく。輸送費その他を考えると最終消費国で生産することが最も効率的になっていく。今はその過程なんだと思う。

米中貿易戦争が起きている一因には、その経済的損失が過去に比べて小さくなってきていることが背景としてあるんだと思う。世界はテクノロジーによってフラットになるわけではない。テクノロジーは人を繋げやすくするが、世界をフラットにするのは利害関係だ。

貿易関係が悪化しても経済に大きなダメージが生じなくなくなると、ポピュリスト政治家たちは一部の国を悪者に仕立てあげることで求心力を強くする。どこの国でも判で押したようにパターンが似通っている。

こうやってグローバルサプライチェーンが切れていくことについては嫌な予感しかしない。生産活動における国際協業がなくなるとともに交流も少なくなると、経済的にも心理的にも戦争を含めた紛争がしやすくなる。

何ができるのか

ということで、僕は世界中の先進国の行く末について基本的に極めて悲観的だ。一部の心ある人たちが様々な取り組みをしているけど(例えばいくつかの地方創生プロジェクト)、資本と既存統治機構をレバレッジできていないので極めて分が悪い。

そもそも、この第二のブルジョア革命は1000年後の歴史の教科書では進歩として教えられているのかもしれない。ただ、僕は残念ながら民主主義と自由権を脳髄レベルで愛しているので、出来る限りのことはしたいと思っている。

一応ちょっとしたアイデアはある。今は仕事に全力を尽くしているのでそれに時間をかけるわけには行かないのだけど、そのアイデアに取り組む日が来るまでに世界が穏やかなままでいてくれることを願っている。


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