見出し画像

スリランカ緊急支援の現地報告(&将来のための継続寄付のお願い)

(このnoteは下記のnoteの続きです)

改めて、このたびは五常財団のスリランカの緊急支援の寄付にご参加くださり有難うございました。まだこれからも活動は続きますが、ひとまず日本円相当で約1470万円が集まり、提携先のSejaya社を通じて現地の7,438人の妊婦に食料券の配布をはじめました(1週間前に速報でお伝えしたときには1500万円強とお伝えしていましたが、一部、使用使途が緊急支援以外の寄付金が含まれておりましたため、カウントし直しました)。


現地訪問の報告をしたいと思います。メールでお送りすることも考えたのですが、動画などを埋め込めるnoteのフォーマットが一番見やすいので、ここでご報告をしている次第です。

コロンボ市内の様子

いつも車で渋滞をしているコロンボですが、市内の交通量はパンデミック前の30%程度でした。(とはいえ普通に車が走っていたので、せっかく持っていった自転車は全くの無駄でした)

つい先日まで、給油のために長蛇の列ができていましたが、QRコード認証を用いて毎週のガソリン供給について車は20リットル、バイクは4リットル、三輪車は5リットルと定めたところ、ガソリンスタンドの長蛇の列は皆無となりました。


ガソリンスタンドの混雑はほぼなくなった


長蛇の列の理由は、ガソリンの公定価格が1Lあたり450ルピーであるところ、闇市場価格が3000ルピーだったため、給油をして転売するほうが普通に働くより実入りがよかったことにあります。たとえば5Lを給油して闇市場で販売すれば、12,750ルピーを稼ぐことができます。単純労働の日給が2000ルピーですので、大勢の人が転売のために列に並びました。

人々の生活

以前のお願いのnoteにも書いていた通り、五常はフィナンシャル・ダイアリー・プロジェクトを各国で展開しています。ランダムに低所得層の方々を選び、その人たちに毎日家計簿を書いてもらうというものです。

毎日書き込まれる家計簿
現地に張り付いている調査員。家計簿をつけている人々とのやりとり、家計簿をデータ化などを担当している。

すでにデータから分かっていたものの、現地の人々の生活は極めて厳しいものでした。たとえば、主食である米の価格はもともと1kg60ルピー程度だったものが220ルピーに、卵も15-20ルピー程度だったものが60ルピー以上になっています。生活必需品の価格が3倍以上になっているというのが現地の人々の肌感覚のようです。

以前は300ルピー程度だったカレー&ライスのセットも700ルピーに値上がり

何人かの低所得層の方の話を聞いていましたが、特に状況が厳しいのは乳幼児を連れている親たちです。乳児用のミルクパウダーは、400グラムのものが今は2400ルピー以上します(元々は600ルピー程度でした)。子どもが一人いれば、1ヶ月に7パックは必要で、それだけで15,000ルピー以上かかります。単純労働に従事する人たちの日給は2000ルピーにもいかないことが多く、その日給はほとんど増えていません。

フィナンシャル・ダイアリー参加者の子ども

物価の大幅上昇により、低所得層のみならず中所得層だった人々も生活が極めて厳しくなっています。もともと、スリランカにおいて食糧安全保障が脅かされている人は6%とされていましたが、国連世界食糧計画(WFP)によると、今やその数字は30%にのぼっています。

価格高騰は一段落したものの、依然として高止まりしている

なお、最近においては、価格の値上がりは一段落したようです。理由としては、先にお話をしたガソリンの供給状況の改善と、それに伴う物流の改善があるようです。とはいえ、状況が改善しない限り、多くの人々の生活が厳しいことに変わりはありません。

それでも陽気な市場の人々


妊婦たちの栄養失調はかなり深刻です。厚生労働省に努める医師や看護師らによると、慢性的に貧血となっている妊婦が非常に多いとのことです。

地方自治体の厚生省で働く医師

行く先々で、国際機関から支援が届いているかという質問をしましたが、医薬品以外について届いたという声は聞かれませんでした(2022年8月20日現在)。WFPによる食料支援について、多くの国が支援表明をしていますが、支援物資を届けるためには現地の政府と協議をしないといけません。大統領の突然の交代などもあり、政府機能が正常化していないことともあり、協議に時間がかかっているようです。

 

また、国の経済状況の根本的な改善のためには国際通貨基金(IMF)からの支援が実行されることが必要ですが、IMFからの融資が行われるための条件である既存債権者(主に中国・日本・インド・民間)との調整は難航が予想されます。ちょうど実務者間の合意(staff-level agreement)はできたようですが、少なくともこれから1年はかかるというのが関係者らの見通しのようです。

ですので、世界的なインフレが止まらない限りは、この極めて厳しい状況が続くことが予想されています。まずはWFPからの大規模の食糧支援が届くのを待つばかりです。

食料券配布とこれからのプラン

このような状況で、まずはその場しのぎであっても支援を届けようと、提携先のSejaya社の支店を通じた食料券配布の開始イベントがガリガムワ町にて行われました。イベントには地域の妊婦さんたち、厚生省の医師と看護師、そしてSejaya社のCEOおよび社員らが参加しました。

食料券を手渡す、地方自治体の厚生省の看護師
Sejaya社の社員たち

今回の支援は、地方自治体にある厚生省と連携し、特にリスクが高いとみなされている妊婦たちに食料券を届けるというものです。

  • 受益者の選定は現地の厚生省に任されており、Sejaya社の顧客が含まれる可能性はありますが、選定における恣意性は排除されるようにしています。Sejaya社は支店を26保有しており、そのうち23支店について現地の厚生省との連携がとれています。

  • 食料券についてはスリランカのほぼ全土でスーパーを展開するカーギルから購入しています。食料券には一つ一つにコードが付与されているので、不正等が起きた場合の追跡が可能になっています。大量に食料券を購入することで、2%のディスカウントを得ることができました。なお、現地ではスーパーマーケットがかなりの地方部でも展開しており、価格も市場や八百屋よりも安かったりします。

当日のイベントの様子は、スリランカ国内のニュース番組でも取り上げられました。(私が現地語で歌っている様子はスリランカの番組で何度か取り上げられており、それを知っていたテレビ局の人から「今日も歌ってください」とお願いされたため、後半でそれが撮られています)

なお、このプロジェクトは五常財団でファンドレイジングを行い、五常・アンド・カンパニーのグループ会社であるSejaya社が現地の厚生省およびカーギルと提携することで実施されています。財団と会社の間で利益相反等が起きないよう覚書を締結し、資金が五常財団からSejaya社に送金されます。


最終的な受益者数は7,438人となり、5000ルピー分の食料券を配布しています。食料券は平均すると3.6%ディスカウントで購入することができましたので、プロジェクトの総額は35,832,600ルピーとなりました。銀行提示の為替レートは1円0.42ルピーですので、日本円にすると15,049,692円となります。

本日、この金額ちょうどを、スリランカに送金しました。ファンドレイジング総額が約1470万円でしたので、不足分については、使途が指定されていない寄付金から充てています。

振り返りとお願い

改めて今回の緊急支援を通じて気づいたことがあります。

第一に、私たちのような民間団体による緊急支援においては、スピードが最も重要であるということです。大抵の危機時には、国際機関からの支援がやってきます。その規模は数十〜数百億円になることも少なくありませんが、現場に支援が届くまでには時間がかかります。だからこそ、小さな規模であっても迅速に行われる緊急支援には意味があります。

第二に、五常財団は国際機関はもとより、多くの国際NGOよりもこういった緊急支援を早く届けられるということです。五常・アンド・カンパニーはその展開国の主要地域全てに支店を有していることが多く、また金融業であるためこういった資金的な支援を素早く供給することにも慣れています。実際、今回の支援もかなり早いスピードで届けることができました。

第三に、とはいえ緊急支援は企画から実施まで時間がかかるということです。例えば今回は、次のような経路をたどっています。

  1. ニュースやデータ、現場の声を通じてスリランカの危機を認識

  2. 支援を企画

  3. ファンドレイジングの準備と現地との調整開始

  4. ファンドレイジングをしながら、現地とのMOU締結

  5. 支援開始

ここで大変だったのが、いくらファンドレイジングできるのか不透明ななか、現地との調整をしなければいけなかったことです。

平常時からまとまった資金を財団で保有していれば、もっとスピーディに支援を届けることができました。危機時においては支援が届くのが1日早まるだけでもインパクトが変わってきます。食料に不安があるとき、1日1日がとても長いからです。


ですので、これから毎月定期的に寄付くださる方を募ることにしました。これからも途上国では同じような危機が生じることが高いので、私たちの支援実施能力を信頼くださる方は、ぜひご寄付ください。今は一般財団法人であるため税優遇は得られませんが、公益財団法人になるための準備も進めています!


単発の大口寄付を検討くださっている方は、振り込みをご利用ください。こちらからお申し込み頂けたら幸いです。


重ね重ね、この度は本当に有難うございました。7,438人のお母さんたちに支援を届けることができて、本当によかったです。


これからもどうぞ宜しくお願いします。

(なお、掲載された写真は、全て本人の許可を得て撮影されたものです)


ここから先は

0字
頂いたお金は寄付に使います。毎年、noteの収益よりずっと大きな金額を寄付しています。2023は7,135,805円でした。

週末随想

¥800 / 月

毎週日曜日(その時の滞在国時間)に書きます。毎週の行動記録、雑感、振り返りが主な内容になります。守秘義務に反するものは当然書けません(匂わ…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?