週末レビュー(2021年1月17日)

やけに長く感じた一週間だった。

週の出来事と雑感

月曜日は祝日だけど、他の国が動いているので、いくつかミーティングが入る。ミーティングに入りつつ作業。基本的に土日は土日的な動き方をして、それ以外の平日はリズムを崩さずに暮らしたいので、別に問題はない。

祝日って誰が考えたのだろうか。その場の思いつきでなく、結構長丁場の事業になると、重要なことはリズムを崩さずに粛々と続けることなのだけど、休みが他人の都合で入れられるのは結構めんどくさい。その意味において、祝日って国家権力による市民生活への干渉のはずなのだけど、大多数の人は休みが好きだからか反対していないように感じる。逆に国家がある週末を休みでなくしたら、大勢の人が猛反対するのだろう。僕としては、ペースを崩されるという点で、どちらも等しく嫌だ。

 

最近ちょっと気づいたのだけど、僕はプレゼン資料づくりが比較的うまい部類に属するようになったと思う。10年前、PEに入りたての頃は全然だめだったのだけど、意識しながら続けたら上達した。書くことも、20年弱続けて上手になった。僕が日本語で文章を定期的に書き始めるようになったのは23歳になってからのこと(それ以前は朝鮮語でしか文章を書いていない)。今週も山を30km走ったのだけど、昔と比べて身体の疲れ方が全然違う。

1kmしか走れないのなら頑張って1.2km走って、その次は1.5km走って、その次は2.0km、みたいな感じで少しずつ自己改善をさせていくのが僕は得意で、ある程度関心がある分野については、10年くらい続けると結構な上級者になれる。

じゃあ向こう10年で何の上級者になりたいかというと、英語で語ること、原理原則に完璧に首尾一貫した生活を送ること、の2つになるのだろうと思う。がんばりたい。

 

週に2日休暇をもらって、児童相談所の第三者評価制度のドライラン。ものすごく嬉しい出来事があった。たぶんnoteに書く。ちょうど「ルポ児童相談所」も増刷されたし。

何かを変えたいと思った時、それが制度である場合は、すごく運が良くても5年はかかる。変えていくために大切なのは続けること。制度変更については、3ヶ月に1回といった頻度で、コツコツ続けることが大切。

キャンペーン化すると、運が良い場合は物事が早く動くけれども、往々にして大勢の困惑した人たちからの強烈な反対にあったりしがちなので、実現のリスクが高まる。変化は、それが良いものであっても急に起こそうとすると歪みが生じがちだ。大勢の人たちが順応していけるように、漸次的に起こすほうが良いことが多い。(保守主義は本来的にはこういう考え方のはずなのだけど、今は随分と言葉の意味が変わってしまった)

  

新しいミュージシャンをSpotifyで発掘するのが難しくなってきた。理由はこのオススメ機能で、これに頼る限りは想定の範囲内のような音楽にしかたどり着けない。それは、レコメンデーションエンジンが「本人がそこそこに好きそうな音楽」を届けるという目的のもとに作られていることに、根本的な限界がある気がする。

ちょうどこの話をミュージシャンの人としていて、同じ見解だった。それを乗り越える方法は、人間のキュレーションに頼る他ない、という話だった。彼はいくつかの人のツイッターアカウントをフォローしていて、それに頼っているのだという。

同じような方針で、フェスのプレイリストを最近多く聴くようになった。大きめのフェスは色んなタイプのミュージシャンが出ている。実際、僕が新しく面白いアーティストを見つけられたのはだいたいフェスのお陰だった。そして、成果が出始めている。うれしい。

読んだ本・観たもの

厳 岐成、''「アリババ」を世界一の小売業にした男 ジャック・マー''
翻訳は微妙だが(中国語の文章をそのまま直した感じになっていて、日本語っぽくない)、それにも関わらず素晴らしい一冊だった。英語の教師だったジャック・マーがなぜアリババを作ることができ、多くの技術者らの棟梁になれたのかが僕には謎だったのだけど、その謎はこの本を読んで解けた。

彼は偉大なリーダーだった。それに尽きる。狂人と言われかねないような高い目標を掲げ、ビジョンを説得的に語り、人を惹きつける魅力をもち、仲間を大切にして、利益を独り占めせず、決して諦めない(だから、運が最後には味方する)。だから、多くの素晴らしい人たちに囲まれ、アリババグループは偉大な会社になった。僕はアリババのパートナーシップの仕組みは素晴らしいと思っている。

(ジャック・マー、最近姿を表さないのが若干心配なのだが、大丈夫であることを願っている)

Peter Frankopan、''The New Silk Roads: The Present and Future of the World''
著者の前著のThe Silk Roadsが去年読んだ本ベストの一つだったので読んでみた。ハラリの著作の衝撃がサピエンス>ホモデウス>20 lessonsという順番で下がっていったのと全く同じ感覚だった。素晴らしい本ではあるが、一冊目の衝撃はなかった。

・今世界で起きていることはものすごいスピードでのパワーシフト。再びシルクロード圏の国々(中国、インド、ロシア、イランなど)に世界の中心が戻ってきていて、欧米諸国の国際政治にもたらす影響は年々小さくなっている。2050年までにアジアの一人あたりGDPは今から6倍になる。人口数からすれば、確実に欧米を追い抜くことになる。すでにそれは始まっていて、例えば1990年における中国人の海外消費は年間500億円にしか過ぎなかったのが2017年には25兆円に増えた。年率で毎年30%弱伸びてきた計算になる。インドでも中間層がものすごい勢いで生まれていて、1990年には2百万世帯しかなかった所得1万ドル世帯が、2014年には5000万になっている。

・台頭する中国が新しいシルクロードを作っている。一帯一路構想がまさにそれで、世界中を一つの交易圏にしようというのが基本発想(ちなみに、中国には、「豊かになりたければまずは道路をつくるべきだ」という諺?があるらしい)。中国のメッセージは少なくとも一貫している(そして、裏側で一帯一路構想のために各国に融資をして、デフォルトした国家を取り込むことも一貫している)。

・一方で欧米圏は分裂が始まっている。アメリカはトランプ時代に絶望的なほどに世界の覇権国家の地位を失う方向に走ってしまったし、ヨーロッパとの関係も悪化させた。ブレグジットも起きた。台頭するアジアが様々な連携をとり始めているのに対し、欧米諸国は分断が続いている。凋落する連合国家にありがちな傾向でもある。EU内の意思決定の混乱には、中国やロシアが一部EU加盟国家への影響を強めていることも大きな理由となっている。

・他にも様々な動きが起きている。国をまたいだインフラプロジェクトが各地で始まっている。インド・パキスタン・アフガニスタン・トルクメニスタンをまたいだパイプラインプロジェクトも始まっている(歴史的経緯や、現在のアフガニスタン情勢を考えると凄まじいこと)。経済成長にあわせてインフラ投資が活発になり、交易が続くことで、地政学的な関係性も変化していく可能性が高い。ロシア、イラン、中国、インド、パキスタン、トルコらとその周辺国家らの緊張関係と連携が、これからの21世紀の国際政治を作っていくのだろう。欧米の影響はかなり下がる。おそらく日本も。

いま起きている様々な混乱や騒動も、こういった動きから考える必要がある。二冊とも読み終わったいま、一番行きたい国はペルシャ(イラン)になった。行ったら仕事に支障がありそうだけど。そうでなかったら是非テヘランに行ってみたい。

The Terminal、''Steven Spielberg''
いつも空港で無国籍で色んな目に遭うという話をすると、何人かが「映画のターミナルみたいだな」というコメントを僕に返してきていて、気になっていた映画。

確かに、入国しようとするときに旅券をかざしてエラーが出る→イミグレオフィサーがいぶかしげにこっちを見る→別室に連れて行かれる、までのセットはとても既視感があった。とはいえ、僕は空港で生活する羽目に陥ったことはないけれども。日本に永住権があるだけで感謝するべきなのだろう。

フォレスト・ガンプなどもそうだけど、トム・ハンクスはこの手の演技をさせたら最高にうまい。映画のあらすじは結構微妙なところもあった気がするのだけど、トム・ハンクスの名演でかなり隠れている気がする。いい映画だった。

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