「起業家10年問題」

僕は「起業家10年問題」というのがあると思っている。それは、ある程度事業が軌道に乗った会社の創業者が起業から10年くらいした後に覇気がなくなる、退職して次の起業をする、変なことを始める、という現象のことを指す。

これには次のような理由があると思う。全て、事業がある程度成功しているからこその悩みでもある。

第一に、会社がある程度安定してきていますぐ死ぬ心配がなくなり、昔のように生存のために全力を尽くすというのがなくなること。第二に、昔と違って初対面で失礼なことを言う人がいなくなるので、反骨精神のようなものがなくなっていくこと。第三に、往々にして創業期にいた人がほとんどいなくなっていて(相手から去る場合も、こちらからお願いして去ってもらう場合も含め)、なんとなく寂しくなること。第四に、会社がきちんとした組織になり、創業者の一存で物事が決まらないようになっていくなかで、会社が自分のものでないという感覚が強くなっていくこと。

だから、10年くらい経ったあとに退職してあたらしい起業をしてみたり、新規事業を始めてみたり、会社をまた独裁組織にしてみたり、ということが起きる。「あの日をもう一度」、というわけだ。仕事に真面目に取り組まなくなって趣味に没頭する人もいる。


そして、それを乗り越えている起業家たちに共通しているのは志が高いことなんだと思う。もともと目指していたものが全く達成できていなかったら、会社の生存が脅かされていなくても必死になるし、おべんちゃらとかもあまり耳に入らなくなる(そもそもそういう人に会う暇がない)。また、目標が高いと、その達成のために優れた人に来てもらうことが必然になるし、そうやって自分より優れた信頼できる同僚たちに囲まれていたら、寂しさも和らぐし、会社が組織化されてもそんなに嫌な気持ちにならなくなる。「まあ、この仲間たちの言うことなら従う他ないな」という感じになる。

僕は手垢がついた言葉が苦手なので、普段あまり「志」という言葉を使いたくないのだけれども、起業家にとって志とか使命感というのは本当に大切なんだなと改めて思う。むしろ、起業するだけなら大した志がなくてもできるので、志や使命感は長く事業を伸ばし続けるためにこそ必要なんだということに気がついた。

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