2C金融サービスにおけるスタートアップ競争戦略の基本原理

なんとなく考えていることをまとめてみた。

1. 金融サービスは極めて長い歴史を持っている。貸し借りは数千年、株や保険でも数百年(大航海時代くらいから)。ほとんどのサービスは歴史によって試されているので、相応にうまくできている。貨幣鋳造、印刷技術、電話、コンピューター、などの技術はその提供形態を変えてはきたが、本質は変わっていない。

2.一般論として、金融サービスの模倣は極めて容易である。それは伝統金融であってもいわゆるフィンテックでも同じこと。長くても3年あれば模倣はできる。かつ、大勢の人が頻繁に使用するサービスはインフラ(=コモディティ)になる。もし差別化要因があるとすれば、人間関係や(だからフィナンシャル・アドバイザーなどは小規模でもうまくいく)、デファクト・スタンダード(格付けやスコアリングなど)をつくること。

3.インフラ的な性質のあるサービスほど、他のインフラ同様に厳しい規制下に置かれる。規制当局の行動は各国で少しずつ異なるので、それが国別に異なるエコシステムを生み出す。だからこそ、人々のお金の管理のしかたがどの国でも似通っているにもかかわらず、成功しているリテール金融機関はほとんど地場プレイヤーになる。

4.そういった事情もあり、リテール金融(今風にいうと2C金融)の産業構造は、ホワイトスペースが無くなるタイミングで寡占となる。言い換えると、リテール金融は基本的に巨人の戦いになる。スタートアップが頑張って新しい市場を作っても、その市場が魅力的とみなされると、後からやってきた巨大企業に踏み潰される(そういった例は極めて多い)。そうされないためには、スタートアップは革新しつつ全速力で成長しないといけない。

5.リテール金融サービスは資本なしには成長しない。オフバラ・オンバラは実はあまり関係ない。実際、「オフバラだから資本に対して高いAUM(管理資産)を出せる」と言っているP2PプラットフォームのAUM/資本比率は、中規模銀行よりも低いことが多い。

6.なので、2Cの金融スタートアップは巨人が関心を持っていない市場で、革新と結果を出しながら、全速力で資本を集めないといけない。資本規模が大きければうまくいくとは限らないが、資本なしにアイデアだけで生き残るサービスはほとんど存在しない。

7.だとすれば、やるべきことは、資金調達と実績出しを可能な限り高速回転させること。資金調達は、実績、ポテンシャル、マーケットタイミング、資金調達力などで決まる。実績は量的なもの(エコノミクスといくつかのKPI)と質的なもの(組織のケイパビリティ、具体的にはシステム、ネットワーク、ビジネス知見、テクノロジーなど)からなる。アドレサブル市場の状態と実績がポテンシャルの関数になる。

じゃあどうやって?という問いに関する答えは、必死に考える他ないんだろう。

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