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やばめな人

そういえば。
夜道を歩いていて後ろから明らかにやばめな人の叫んだような大声が聞こえたことがある。(ちなみにわたしの地元ではよくあること)ちょっと構えて耳を澄ませる。向こうの出方をうかがう。自転車か。背後に感じ取れるすべての手がかりに全神経を集中させる。この道は横に曲がるような道は当分ない。こちらに近づいてきているのは確実なのだが声が聞こえてこない。こわい、と思う。なにかが起きても対応できるようにぐっと身体に力を入れ、フットワーク軽く動けるような準備をする。といっても実際に何かが起きてしまったら、それは微力なものに過ぎない。
こわがりながら通り過ぎてくれるのを待つ。するとついにその人がびゅんと通過。自転車だ。過ぎていった。安心したのは束の間、実は叫んでいたのではないことがわかる。大きな、とてつもなく大きな声を出して歌っていたのだ。ミスチルを。途端に肩の力が抜け、えぇっ!?と心のなかで戸惑いの声をあげる。笑えてきた。まさに大熱唱。背後にいたときにしばらく声が聞こえなかったのは、わたしの存在に気づいて歌い控えたのだと思われ、なんだかすまないという気にさえなる。
とにかくものすごい声量だった。自転車を漕ぐ背中でしか断定できないが風貌もすごくまとも(まともとは?)そうに見えるオーソドックスなシャツにズボンだった気がする。おそらく社会人の、30代くらいか。かなり桜井さんに寄せた歌い方だった。そのことがただならぬ『やばめ』な人が叫んでいる印象に拍車をかけていたのだった。
この曲、なんだっけなんだっけ。選曲(?)もよかった。夏にピッタリの。ウッチャンがドラマに出ていたときの主題歌の…。というところで帰宅しすっかりその出来事は忘れていたのだった。

ついさっき散歩中に、そのことを思い出しあれは…と曲を思い出そうとした。『NOT FOUND!!!』
すぐさま聴きたくなってイヤホンセット。
〈あぁ 何処まで行けば解りあえるのだろう?〉や
〈あと どのくらいすれば忘れられんのだろう?〉がここにきて急に沁みる。
歌い方と歌詞とメロディーの音程の高さ低さで、途方もない、どうしようもない気持ちに駆られて天を仰ぐ情景が思い浮かぶ、というよりそういう感情が自分の身体にのしかかる。桜井さんも実際に上を向いて歌っているのでは?というくらい上(あるいは神)に訴えかけるような声色。
そのときスーパーの前で自転車に乗った奥さまとすれ違う。奥さまのTシャツには英語が印刷されている。目を凝らして読もうとする。

THANKS
FOR
WORLD

次は、『HANABI』聴きたい!というときに星乃珈琲到着。いったんイヤホンを外して「1名で」と告げる。帰り道が楽しみである。



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