見出し画像

知らないと損する奨学金の知識~奨学金の利息~

今年の1学期に日本学生支援機構の奨学金を予約採用で申請した高校3年生には「採用候補者決定通知書」が届く時期となりました。

コロナの影響で予約採用申請後に家計が急変した家庭もあるでしょう。予約採用で選択した全ての項目は、来年4月に行う最終手続きとなる「進学届」時に全て変更申請できるので、この間を使ってじっくりと親子で話し合ってください。

有利奨学金の利用状況

10月25日の記事で書きましたが、無利子貸与で始まった国の奨学金政策は80年代半ばから有利子にシフトし、現在では貸与人員・貸与額ともに有利子奨学金が中心となっています。

画像1

画像2

有利子奨学金の利率の算定方式の選択

日本学生支援機構の有利子奨学金を希望する際には、「利率固定方式」「利率見直し方式」のいずれかを選択しなければなりません。

奨学金に関する保護者からの質問が最も多いのが、この利率の算定方式です。その違いは次の通りです。

利率固定方式・・・全ての返済を終えるまで同じ利率が適用される

利率見直し方式・・・概ね5年ごとに利率が見直される

借りた総額によりますが、奨学金の返済期間は最長20年と長いので、利率の算定方式の選択は誰もが悩む点だと思います。

利率の算定方式の選択のポイントを解説するまえに、日本学生支援機構の有利子奨学金の仕組みを見てみます。

有利子奨学金の仕組み

日本学生支援機構の有利子奨学金の上限利率は3%となっています。これは世の中の市場金利がどれだけ上昇しても3%を超えることがないという意味です。この点だけみても、教育ローンをはじめ一般のローンと大きく違うことがわかります。

さらに、一般のローンでは借りた翌日から利息が発生するのが常識ですが、奨学金は在学期間中に利息は発生しません

「上限利率が設定されている」「在学期間に利息は発生しない」この2点が有利子奨学金の大きな特徴といえます。

では、実際の利率はどれくらいなのでしょうか。2020年3月貸与終了者の利率は次の通りです。

画像3

奨学金の利率は、上限の3%よりもはるかに低く推移しているのが実情です。

日本学生支援機構では、貸与利率を毎月HPで公表しています。最新の利率は以下のページでご確認ください。

第二種奨学金の利率推移表
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/riritsu/riritsu_19ikou.html

固定と見直しのどちらを選択すればいいの?

ここから本稿のまとめに入ります。では、固定と見直しのどちらを選択すればいいのか?

私の答えは「現時点ではどちらがいいかは言えません」です。これは決して意地悪を言っているわけではありません。

というのも、有利子奨学金の利率の確定時期が問題なのです。

奨学金の利率が確定するのは「貸与終了時点」となっています。つまり、卒業まで借りるのであれば卒業月の利率が適用されるのです。

有利子奨学金の利率の算定方式を選択するのは申し込み時点です。世の中に2年先、4年先の日本の景気を予測できる人がどれだけいるでしょうか?

政治家はもちろん、経営者も経済学者でも自信を持って断言できる人はいません。講演では冗談で言っていますが、できるとすれば占い師ぐらいのものでしょう。

利率の算定方式は貸与終了年度内に変更できる

でも、安心してください。

奨学金の申込み時に選択した利率の算定方式は、貸与終了年度内に変更できるのです。

画像4

先に述べましたが、日本学生支援機構では毎月貸与利率を公表しています。2019年度の利率をいま一度見てみましょう。

画像5

ご覧いただければ一目瞭然ですが、固定に比べて見直しの方が一貫して低く推移しています。

ですので、借り終わる最終年度内にHPで利率の傾向をチェックして、変更するかどうかを判断すればいいでしょう。

ただし、届け出月によっては手続き上変更申請が間に合わないこともあるので、借り終わる年度の春には在籍する大学の学生課などに変更受付期限を確認することを忘れないでください。

2つの条件が揃えば「見直し」の方が得かも

利率の算定方式の選択が導入されたのは確か2007年だったと記憶していますが、導入以来、固定よりも見直しの方が低く推移する状況が続いています。

とは言っても、見直しの方が固定よりも高くなる可能性は当然あります。

以下はあくまでも個人的な意見ですが、2つの条件が揃うならば見直しの方がアリかも知れません。

①超低金利時代が続いている

②繰上げ返済ができる

2020年3月に貸与が終了したA君とB子さんの返済のイメージを作成してみました。

画像6

A君は、卒業後20年間0.07%の利息を支払うことになります。一方B子さんの利息は0.002%とA君の35分の1の負担で済みます。

しかし、B子さんは、6年目と11年目と16年目に3回の利息の変動リスクを抱えることになります。

繰り返しますが、見直しの方が固定よりも高くなることもある得るのです。

そこで、B子さんは卒業後の5年以内に頑張って繰上げ返済に努めて、20年の返済期間のものを15年に短縮できれば利息の変動リスクを1回減らすことになります。引き続き繰上げ返済ができればさらに変動リスクを減らすことにつながります。

これは全員に当てはまる方法ではありませんが、知っておいて損はないと思います。

奨学金の申込み時に利率の算定方式を選択させること自体に無理があると個人的には思っていますが、現行の奨学金制度を利用する以上は、親子で正確な知識を持って臨んでほしいと思います。

奨学金アドバイザー 久米忠史

公式サイト「奨学金なるほど相談所」
https://shogakukin.jp/
YouTubeチャンネル「奨学金なるほど相談所」
https://www.youtube.com/c/shogakukin



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?