彼女たちのコズミック・イラ Phase31:Re:ruption

コズミック・イラの倫理観がどれほど壊れているのかを端的に表すのが、核兵器を通常兵器の延長線感覚に捉えているということなんだと思うんです。そもそもC.E.の起原が最後に核兵器が仕様された西暦年という設定ですし。

核ミサイルがポンポン出てくる展開なんてSEEDだから許されるんだと思います。次回は一転して窮地に陥ったミレニアム、から孤立したアグネスのシーンとなります。


数的な不利などを一切感じさせることなく、ミレニアムの所属機体は終始優勢に正体不明の軍勢を相手に戦いを続ける。

「こんのぉぉぉぉっ!!!!」

デスティニーインパルスの放つ砲撃が、艦船諸共複数のモビルスーツを貫き爆散させる。同様にフォースインパルス、ゲルググもまた、ウィンダムやダガーLといった無数の敵機体を瞬く間に撃ち落としていく。

「今さらこんなものを引っ張り出して、私たちとやり合おうっていうのかい!?」
「どれだけ数ばかり揃えたって……!」

シン、ルナマリア、そしてヒルダが敵機を撃破していく中、アグネスもまた可変機としての機動性を最大限に発揮して、敵艦船や密集するモビルスーツを撹乱しながら敵陣の被害を広げていく。

「ふんっ……歯応えのない連中ばっか。これじゃあ機体のテストにもならないわよ。」

そうした不満を漏らしながら、アグネスは沈めれば最大の戦果となるであろう大型母艦に向かって突貫する。

『おいアグネス!ジャスティスの火力で戦艦を沈めるのは無茶だ!母艦は俺とルナマリアに任せて……』
「あんたの腕なら無理かもしんないけど、私だったら余裕で沈めちゃうんだからっ……!」

通信先のシンにそう自信を見せながら、ジャスティスは敵母艦の砲火を縫うように肉薄していく。そして、その巨体に無数の攻撃を当て続けるのであった。

一方ミレニアムの艦橋では、突如として現れた敵性勢力の目的と規模についての懸念が広がっていた。

「副長、此度の敵について、君の私見を伺いたい。」
「えぇっ!?そ、それはもちろん……このタイミングで現れるなんて、ブルーコスモスかそれに準ずる組織のものだとは思いますが……」
「では規模についてはどう思う?あの艦隊戦力で、このミレニアムを落とすだけの確証はあると思うかね?」
「いえ……あの戦力で本艦を抑えるのはともかく、落とすのには些か力不足かと。」

コノエ艦長の質問に対して、副長アーサーが答える一般論は同意の出来るものであった。そして、前線の機体状況を確認するハインライン大尉が、戦況モニターに目を向けたまま声を上げる。

「本艦を沈めるのが目的でないにしてもこのメンデルに目的があるとしても、彼らの戦力は決して充足しているとは言えません。何か別の目的、あるいは手段を用意していると推測した方が適切かと思われます。」

ハインライン大尉の私見を聞きつつ、コノエ艦長はアビーに確認を取る。

「アビーくん、本宙域周辺に艦影は?」
「交戦中の艦隊以外に、それらしき反応は見当たりません。また、先程撃たれたジャミング弾の影響効果も既に回復をしています。」

優勢な戦況に反し、艦橋には重い空気が流れようとしていた。敵の目的が把握出来ない以上、彼らは考え得る最悪の状況を想定するものの、それを口にすることを憚っていた。ただ一人を除いては。

「しかしまぁ、数が多くても大した装備を持っていない連中で安心しました。もしもまたこの前みたいに、核だのステルスなんて使われでもしたら大慌てですよ。」

アーサー・トライン副長。軍人としては些か頼りなく、最低限の資質を持ち合わせているだけであるものの、人望、人柄といった数値化が難しい面については同僚たちからの評判は好評であった。

しかし時として彼は、緊迫した状況でも言うべきではない冗談を口にすることがあり、そうした点についてはかつての上官も懸念を示していた。

「あ、あれ?あー……せ、戦闘中に失礼しました!」

そうしたアーサーに対し艦橋にいた多くの乗員が目を向けた矢先、レーダーを注視していたアビーが声を上げる。

「レーダーに艦影を確認!周辺宙域を航行中の輸送船と思われます。」
「輸送船?進路はこのメンデル周辺に向かっているのかな?」
「はい。艦首の方向からして、こちらかL5方面……プラントに向かっていると推察出来ますが。」

副長が放った空気が読めない発言と、優位に進む戦場に突如して現れた艦影。指揮官としてこれほどまでに凶兆を告げる状況はないといえた。

「大尉、すぐに接近する輸送艦の索敵照合を。副長、火器管制官に実弾兵装の全砲門を開くよう伝達。銃弾の雨を交戦宙域以外の全射程圏内にばら撒くんだ。」
「は、はいぃっ!」

コノエ艦長はミレニアムで対応出来る限りの方策を速やかに指示する。そして、さらに状況の全貌が明らかになろうとする。

「接近する艦船の照会をしたところ該当データはなし。民間の輸送船だと思われます。」
「民間の輸送船だと!?この交戦が視認出来る宙域で!?」
「どうしますか!?通信を繋げて停船をするように伝え……」
「それで止まる艦であったら、とっくに艦首をこちら以外に向けているでしょうな!」

尋常ではない事態が迫っていることを察知して、ミレニアム艦橋は俄かに騒がしくなり始める。そして、ミレニアムから無数の実弾が放たれた直後、レーダーには突如として艦影が増える。

「本艦左舷に敵艦!ガーティー・ルー級3隻です!」
「えぇっ!?これがやつら本命……!?」
「いや違う。ステルスなど所詮はまやかし。こちらに致命打を与える最大にして唯一の手段は……!」

輸送艦の照会を終えたハインライン大尉が、苦々しい顔をして副長の言葉を否定する。それと同時に、コノエ艦長が艦載機に対する指示を出す。

「モビルスーツ部隊へ後退命令!ブラストシルエット射出準備!インパルス2機はデュートリオンビームを照射後、接近する輸送艦に向かわせろ!」
「輸送艦より多数の熱源を確認!地球連合製モビルアーマー、メビウスです。」

時代錯誤の旧式機体。しかし、戦術的運用をする場合に関しては、モビルスーツよりも安価であり、十二分な戦果を上げることが可能な代物であった。

「どうやら我々は……ずいぶんと高い評価を受けた戦力だったようですね……!」

アコード事変を乗り越え、修羅場を経験したともいえるアレクセイ・コノエの額に汗が流れる。そして、彼らが乗船するミレニアムに向かって、輸送艦から発進した無数のメビウスは、忌まわしき存在を抱き締めているのであった。

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