見出し画像

松阪散策①「城のある町にて 梶井基次郎」


松阪城跡に来て、気付いたことがあります。

梶井基次郎文学碑の存在です。(散策マップ右↓「8」)

梶井基次郎と言えば、「檸檬」が有名ですね。

「得たいの知れない憂鬱な心情や、ふと抱いたいたずらな感情を、色彩豊かな心象と共に詩的に描いた短編小説」(ウィキペディア)と評価される代表作です。

ほとんど忘れていましたが、たしか昔に、某読書会の課題本が「檸檬」でした。その筆致に惹かれた記憶があります。

梶井基次郎文学碑が、なぜ松阪城跡にあるかと言えば、「城のある町にて」という作品の舞台だからなんですね。

「大正13年8月、松阪市殿町に住む姉夫婦宮田家一家宅に滞在していたことがあり、その間に書き留めた松阪城周辺の風景スケッチや草稿ノートが、後に『城のある町にて』の素材となった。」(参考:城跡内にある松阪市郷土資料館展示解説パネル)

梶井基次郎(1901~1932)
「大正14年に『檸檬』『城のある町にて』を発表。翌年には、病気療養のため伊豆湯ヶ島に滞在し、川端康成など多くの文学者と交流。昭和7年、肺結核の病状が悪化、最後の作品「のんきな患者」を発表後、31歳の若さで没した。」(参考:同)

「感覚的なものと知的なものが融合した簡潔な描写と詩情豊かで澄明(きょうめい)な文体で20編余りの小品を残した。死後、次第に評価が高まり、その作品群は、今日では近代日本文学の古典のような位置を占めている。」(参考:同)

梶井作品の作風について、うまく評論できないので、ウィキ様のふんどしを借ります。

「散策で目にした風景や自らの身辺を題材にした作品。日本的自然主義や私小説の影響を受けながらも、感覚的詩人的な側面の強い独自の作品を創り出している。」(ウィキペディア)

キーワードは「身辺雑事」「簡潔」「詩情」「独自」でしょうか。短編であるがゆえに効果的な作法だと思います。

さあ、文学碑のある月見櫓跡まで登って来ました。大きくて立派な文学碑です。

梶井基次郎は、この城跡にたびたび登って、町を見下ろしていたんですね。

碑には「城のある町にて」の一節が刻まれていました。

「今、空は悲しいまでに晴れていた。そしてその下に町は甍を並べてゐた。
白亜の小学校。土蔵作りの銀行。寺の屋根。そして其処此処、西洋菓子の間に詰めてあるカンナ屑めいて、緑色の植物が家々の間から萌え出てゐる。昭和49年春 中谷孝雄書」

以下写真2枚は、城跡内にある松阪市郷土資料館の一角に展示されている解説パネルです。(撮影可)

家に帰ってきて、本棚を2回ほど捜索して出てきた文庫本。梶井基次郎短編集。
いつか昔、これを読んで読書会に臨んだのだなあ。

もう一度読み返してみようと思ったのは当然です。真似すべきはその筆致と詩情のあり様です。

今は青空文庫(ソラリ)でも読めます。他作品もまとめて読み放題。いい時代です。

※「松阪散策」の②のテーマは決まってません。ともかくなんか書こうとかな……(笑)


2023.8.18 (旅した日:2023.8.17)