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#盲目物語

谷崎潤一郎『盲目物語』 高野山龍泉寺

谷崎潤一郎『盲目物語』 高野山龍泉寺

わたくし生国(しょうごく)は近江のくに長浜在(ながはまざい)でござりまして、たんじょうは天文にじゅう一ねん、みずのえねのとしでござりますから、当年は幾つになりまするやら。左様、左様、六十五さい、いえ、六さい、に相成りましょうか。

これは、谷崎純一郎『盲目物語』 の書き出しである。小説の語り手は、按摩揉み療治をする弥一という盲目の遊芸人で、浅井長政の妻となり、後に柴田勝家に嫁した信長の妹お市の方を

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