「JKと住職」第3話

由「なんで怒ってんだよ!」
焦る由太郎に手を顎に当てながら考えるるり子。
る「ん~、おじさんのお経が嫌なんじゃない?」「ごめんって謝ったら?」眉を下げてため息をつく
由「そんな簡単な話じゃないだろ」「何か言ってないか?」
る「ん~…『われ いけにえを しょもうす』だってさ」「生贄ってなんかあげる系じゃね?」
るり子は聞き取れたことが少し嬉しくて、由太郎に振り向こうとする。
る「あとは…」
るり子の言葉を遮り、前に立ちはだかる由太郎。
由「るり子…よく頑張ったな。あとは、俺に任せろ」
そう言った由太郎の顔はいつになく真剣で、るり子はそんな由太郎を見て言葉が出なかった。
由「生贄を欲しがるくらい悪霊化してるってなら、話は別だ」「祠の精霊、今から全身全霊で祓う」
鞄からさっきよりも長い数珠と、札を出す。
由「邪・仏・念・怪・光…」ブツブツと唱えながら祠に近づく
る「おじ…」止めようと手を伸ばすも、るり子が感じている霊の圧で前に進めない

由「破っ!」札を祠に貼る
る「うわっ」突風が吹き、るり子の髪がなびく
思わず目を瞑っていたるり子が目をうっすら開ける。由太郎がるり子に駆け寄り、声をかける。
由「どうだ、霊は」
る「多分…いない」
由「そうか…良かった」
る「おじさん、霊は…」
由「もう悪霊化した霊はこの世には置いておけない…だから無理やりになってしまったが、強制的に成仏させた」
由太郎の少し悲しそうな顔を見て、るり子は(そんな顔もするんだ…)と柄になく思う。
る「視えないのに…なんで寂しそうなの」
由「視えないからさ」
簡単にるり子に返事をした由太郎は、鞄を持って石段へ向かった。
由「さ、帰ろう」「夏祭りが待ってるんだろう」

~場面が変わり8月10日~
るり子と仕事をするようになってはや4件…今までより、迅速かつ正確に(いやこれはそうでもない)除霊を行うことができ、視えないことによる不安は少し減ったものの…
由「るり子の若者言葉というか、それを聞き取るのも至難の業…」
幸い現代は、ゲーゲレというサイトがいろいろ教えてくれる。るり子が言っていたゲゲれカスとはこのことだ。なんとかゲゲってるり子の話を翻訳できる。
勿論バイト代、という名目で一回につき5万という大金を巻き上げられている。依頼内容にもよるが、自分の手元に残るのが少ないので、このままズルズルとるり子に合わせて良いものか、と悩むところは多い。
由「ずっとこの状態って訳にもいかないが。かといって…」
他の僧侶とすれ違うたび尊敬の眼差しを受けたり、ハワイにいる父親から近況を聞かれたりすると、簡単に止めることもできないのである。

由「今日は何か依頼が来ているかな…」
由太郎は、珍しく暇なので自分でポストを覗きに行こうとした。歩く先ーーポスト前に見慣れた制服が立っていた。期待を裏切らず、るり子である。
由「るり子、今日は特に仕事は約束してないはずだぞ」「俺はそんなに暇じゃない」
さっき暇だから、と動いたことを棚に上げて由太郎は腕を組んだ。大体、27歳のおじ…男性と女子高生が高頻度でつるむのも大きな間違いだ。
るり子は、鞄から雑に何かを出して、由太郎に押し付けた。由太郎が自分の手に渡ったものを見ると、それは封筒であった。
中身は札束だと知った由太郎が顔を上げると、るり子は言った。
る「中身…20万入ってる」
由「る…」由太郎が声を出す前に、るり子が自身の真横(空白)を指さす
る「おじさん、その金で除霊してよ」
る「あたしの、お母さんを」寂しそうな顔

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