「JKと住職」第2話

依頼人A「今日は遠くからわざわざすみません…」
由「いえいえ。因縁物は、中には動かせないものがありますからね。出張はよくあることです」
にこやかに話す由太郎に、深々と頭を下げるA。
A「龍山さん、ありがとうございます」「ところで――」
Aと龍山の視線の先には、ズタバの新作ドリンクを飲みながら携帯をいじるるり子がいた。
A「あの方は…」汗
由「スミマセン」「私の助手デス」半泣き

【あの人形事件(?)で出会った鍵谷るり子】
【俺には理解しがたい数々の言動をする、とんでもない今どきの若者だが――】
由(霊が視えない俺にとっては、今はコイツに頼るしか方法は…)
る「あ、おじさん。話終わった?」ドリンクをズゾー
由「おじさんじゃねえ」
【早く俺も霊を視られるようにしてやる】怒り
Aに案内されながら、ひそひそとるり子に話しかける由太郎。
由「というかるり子、学校はどうした」
る「おじさんバカ?今は夏休みだよ」
由「確かにバカ…いや、バカまで言わなくていいだろ」
る「はーあ、海いきたーい」
由(コイツ…っ!)
Aについて行くと、山の入り口だった。由太郎は足袋で来た自分を恨めしく思った。
由「Aさん、まさか」
A「ええ。見てほしいものはこの山の上の祠です」
由「左様DEATHか」
見上げた先は、かなり急な石段だった。ゴールは今のところ見えていない。由太郎は、日傘をさして階段を見上げるるり子をチラッと見る。もう片手にはハンディファンを装備し、涼しい顔をしている。
由(逝くしか…ないな)
由太郎は重い足を叩いて自身を鼓舞した。

Aは祠へは行かず、一度家に戻ることになった。つまり、二人での石段散歩となる。上る前に、鞄の中身を今一度確認する。お祓いグッズは揃えておくのは鉄則だ(効果があるかは由太郎は実感がないが)。鞄を探っていると、るり子が由太郎に尋ねた。
る「ねえ、これいつ帰れる?」
由「夕方には」「何か用事でもあるのか」
る「別にぃ。友達が23日の夏祭りで着る浴衣一緒に見てほしいって話」「ちな、あたしも行く」
由「ほお(ちな…??)」「るり子は彼ピはいないのか」←前回の件で覚えたおじさん
る「いない」「だから夏祭りでつくる~」
るり子は先に石段を登り始めながら手をひらひらさせた。それに続き、由太郎も登り始める。石段を見つめながら歩く由太郎。
由「クッ……夏祭り、デート、りんご飴シェアのカレカノ…」
由(夏の高校生など、煩悩の塊ではないかっ!)
歯を食いしばり勢いよく前を向くと、るり子の短いスカートのドアップ。
由「ボンノ―ッッ⁉」身体をのけ反らせて危うく階段から落ちそうになる
由「るり子…俺の後ろを歩きなさい」ヨロっ(いやこれは不可抗力…決して犯罪でもなんでもない)
る「は?」

煩悩と戦った由太郎は、ついに最上部へ着いた。汗だくで今すぐにでも全裸になりたいところだが、女子高生の前でそれは叶わない。
由「あの…祠だな。いるか?」ぜえぜえ
る「ん」
由太郎は祠を指して言った。
由「さっそくだが、なんて言っているんだ」 読者にも霊は見せない
る「えー…デカすぎて分かんない」
由「霊が?」
る「うん。ちょーデカい」
由「ちなみにどれくらいだ?」
る「5メートルとか」
由「そんなにデカいのか?5メートルって言ったら、俺たちと祠の間くらいだぞ」「距離感ズレてるとかないか?」
るり子は祠との距離と比べて笑い出した。
る「あははは~そうかも~全然違う」
由「ははは、全く、るり子は」一緒につられて笑い始める
る「じゃあ10メートルだわ~」
由「あはは………はい?」笑いが止まる
由「じゅう、めーとる、だと…?」冷や汗(デカすぎんだろ…!)
…姿かたちについては、どうせるり子に絵を描かせても意味不明なものしかないので、さっさと切り替えて本題に入ることに。どうやらその霊は大声で何か言っているそうなので、るり子はしばらく耳を澄ませて聞く。るり子は、ハンディファンを顔に当てながら合点がいった顔をした。
る「大体わかった!」
由「おお!」
る「私は、せいれのいなり寿司だって。いにしえさんから」
由「何だそれ」

由「意味不明すぎる。お前、何か変な解釈いれてないか」
る「暑い~さっさとお祓いしてよおじさん」
由「話聞けよ!」
る「大体、なんでこの霊を祓わなきゃいけないわけ」
由「それこそAさんの話聞けよ⁉」
由太郎の突っ込みを余所に、るり子は電池切れのファンに舌打ちをする。
由「いいか、Aさん曰く…」
 ~Aの話の回想~
祠の前の道を、犬が通り、そのときに吠えると――
A「わっ」
途端に大雨が襲い掛かる。
嘘のような話だが、実際にいろんな人が全く同じ条件で体験しており、村の占い師によると、それは祠の霊の仕業だと…。
 ~回想終わり~
る「いいじゃん、雨くらい」
由「毎回は困るだろ。それに、悪さしてるなら鎮めないと」
る「霊から理由聞いてないのに?」「”じこちゅー”すぎん?」
由「いやだから、その理由含めお前が聞き取れって話!」キレ
る「あー、そっか」
由(ホントに大丈夫かよ、この子)
るり子の適当さに辟易しながらも、問題解決のためには、自分がオトナとして対応しないと…と決意した由太郎であった。

由「いいか、聞き取った言葉そのまま言ってくれ」
る「ん~『いにしえより われ せいれいなり いにしえより われ――』」
由「十分!」「精霊也、な。なにがいなり寿司だよ…ったく」
る「いにしえさんは?」
由「古に”さん”づけすんな」「…るり子、お前テストで赤点とってないか?」
る「えっ、おじさん良くわかるね」驚愕
由「はーぁ」大きなため息
鞄から数珠を取り出して、祠の前に立つ由太郎。
由(これは精霊だって主張してるんだ)(そういう類の霊は、プライドが高く、ある時から大事にされなくなり気付かれようとして、悪いものなりつつあるかもしれないと文献で読んだ)
由太郎は数珠をすり合わせながら唱える。
由「ニナーレ・ラク、ニナーレ・ラク…」じゃらじゃら
る「おお~」変わっていく霊の様子をみて声をあげる 
由「どうなった⁉」
る「さっきより怒った顔になった!」
由「あな おそろしや」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?