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【Y!映画】■映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」■レビュー(ネタバレあり)★★★★

【原作者のファンです。前作150点、今作80点】

当方、2012年からの、こうの史代先生のファンです。
先の映画「この世界の片隅に」では比類なきレベルの感銘を受け、映画館へと10回ほど足を運びました。
今作の映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」は先々週末に観賞。とりあえず、今後同作を映画館で観ることはおそらくないでしょう。

最初にぶっちゃけてしまうと、前作の公開日以前からこうの先生のファンであった私は前作を観るまで「漫画『この世界の片隅に』は
確かに名作ではあるが、漫画『夕凪の街 桜の国』を超える程の作品ではないな」との所感を抱いておりました。
私の両者の評価を分かりやすく点数化するのなら、漫画「この世界の片隅に」は100点満点で80点。漫画「夕凪の街 桜の国」は
90点と言った感じです。
それぞれの点数付けの具体的な理由は、漫画「この世界の片隅に」はエピソード数が過多で冗長かつ散漫な印象があり、正直、テーマが非常に
分かりにくかった。私はこうの先生が読者に対して何を伝えたいのか、イマイチ把握できませんでした。
一方、漫画「夕凪の街 桜の国」は物語がシンプルなゆえ、発信しているメッセージが明確で、ストレートに感動できました。
また、そもそも私は漫画「この世界の片隅に」のアニメ化には懐疑的でした。
なぜなら、あの原作の独特な絵柄と雰囲気をアニメで表現するのは不可能だろうと考えていたからです。むしろ「原作の良さを大幅にスポイルしてしまう
のでは?」と、心配すらしておりました。

そして迎えた2016年、映画「この世界の片隅に」の公開日。
私は世間で映画「この世界」が話題になっている事を知り、遅ればせながら2017年1月中旬に最寄りの映画館へと向かいました。
実際に目の当たりにした映画「この世界の片隅に」は全編に渡って圧巻の一言でした。
その凄まじい程に高い完成度に私は終始圧倒され、終映後は茫然自失になり、席から立つのもやっとの有り様。
以前の自分の懸念を払拭する所か、原作を遥かに凌駕する傑作と化していた映画「この世界の片隅に」を観賞して、私の心は大いに揺さぶられました。
同時に、原作の主旨を完璧に理解し、誰にでも伝わる形にして映画化された片渕須直監督の敏腕ぶりに深い尊敬の念を覚えました。
映画「この世界の片隅に」は原作内の宝石のごとき長所を的確に押さえながら、オミットしてもメインストーリーが揺るがないエピソードを
厳選して削ぎ落とし、原作の冗長な印象を一掃。スピード感溢れる、主題が明確な稀代の作品となっておりました。
イチ原作者ファンとしては、原作の素晴らしい箇所を片渕監督に改めてご教示いただいた様な気がしました。
即日、私は映画「この世界の片隅に」の虜となり、その後、各地の映画館へと熱心に赴くことになりました。

2019年末、待望の長尺版公開。
私が最寄りの映画館で観た今作は真に原作の漫画「この世界の片隅に」をほぼ忠実にアニメ化した映画でした。
しかしながら、その内容は良くも悪くも原作以上でも原作以下でもありませんでした。

映画「この世界の片隅に」はすずさんを中心に市井の人々が日々苦悩しながらも前向きに生きる姿を通じて、どんな逆境でも一生懸命に生活することの
大切さや尊さ、人が生きる意義などを教えてくれる、普遍的な価値を有する群像劇になり得ていたと感じられました。
対して、映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」は前作でオミットされていた原作のすずさんの女性としてのエピソードが多数追加された結果、
物語全体があくまですずさんの私小説の様な印象に。果たして、原作と同様に主題が不明瞭になっている気がして、残念でした。
原作通りの内容にしたことにより、原作が内包していた短所も顕在化してしまったのではないかと思えてなりません。

映画「この世界の片隅に」は観客に様々な想いを抱かせてくれる情報量の多い、示唆に富んだ映画でした。しかし、少なくても映画と言う媒体においては
ストーリー上の情報量は多ければ多いほど良い訳でもないと言うことを、私は映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」を観て痛感しました。

ただ、誤解がない様にあえて申し上げますが、片渕須直監督の最新作である当映画も間違いなく優良な作品であり、2019年度中に公開された映画の中では
屈指の大作だと断言できます。
未だ映画「この世界の片隅に」をご覧になられていない方は勿論、既に映画「この世界の片隅に」をテレビ放送や配信やDVDでご視聴なされた方で
あっても過去に一度も映画館で同作品をご覧になっていらっしゃらなければ、映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」を劇場へ観に行く価値は
十二分にあるかと思います。

当方の映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」の評価は100点満点で80点。Yahoo!映画における私の評価は「星4つ」とさせていただきます。

以上、ご一読いただきまして、ありがとうございました。

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