見出し画像

思い込みの怖さと医療安全について(上手くまとめられませんでした)

ただの病院薬剤師です。

2024年は初っ端から様々な出来事が起こり,多くの人が心も身体も休まってないのではないでしょうか。今や,一瞬でありとあらゆる情報が手に入る世の中ですので,あえて「情報を遮断する」ことも重要かもしれません。

かくいうこの記事も,もしかしたらややセンシティブな内容を含んでいるかもしれません。あまり見たくない方は見ないことをお勧めします。

今回は,「人は誰しも思い込む」という内容です。


薬剤師国家試験における「思い込み」?

まずは,過去にあった薬剤師国家試験の問題を1つ。有名な問題ですので,見ただけで「あぁ,あれね。」と気づく方も少なくないかもしれません。

第99回薬剤師国家試験 問236-237
10月のとある夕方,薬局を男性が訪れた。その日,友人から初物のカキ(牡蠣)をもらったため,昼に友人や家族と自宅の居間で,生ガキと,炭火で焼きながら焼ガキを食したとのこと。全員が頭痛,嘔吐及びめまいを起こしたが,別室に移って休んだところ,少し落ち着いたとのことであった。
問236(衛生)
これらの症状を引き起こした原因として最も可能性が高いのはどれか。1つ選べ。
1 腸炎ビブリオ  2 ノロウイルス  3 腸管出血性大腸菌
4 二酸化窒素   5 一酸化炭素

いかがでしょうか。問題文をきちんと読めば,答えは5.一酸化炭素であることがわかると思いますが,何度も出てくる「カキ」という単語から,一度は2.ノロウイルスを思い込んだ方もいるのではないのでしょうか。

何気なくこの記事を読んでいる皆さんならともかく,これが50問ある試験ブロックの終盤という状況であればどうでしょうか?あと10問あるのに残り時間はあと15分・・・。そういった状況でも,常に正常な判断はできるでしょうか。緊張や焦りなどから,ついつい思い込みで誤った選択肢を選んでしまう受験生もいたのではないでしょうか?(実際に受けた人の話を基にしたわけではないので,あくまでも憶測ですが・・・)

人間は,置かれている状況やその時の心理状態によって,いとも簡単に判断を誤ってしまいます。

薬剤師の「思い込み」

薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業というものがあります。薬局から報告されたヒヤリ・ハット事例を収集し,特に有用なものは「共有すべき事例」としてまとめられ,さらにそれらの事例から何を学ぶかについてまとめてあります。

そんな薬局のヒヤリ・ハット事例のうち,「調剤に関するヒヤリ・ハット事例」に絞った上で,「思い込み」に関する事例を検索したところ,2020年3月17日から2023年11月30日までの間で13,788件もの事例がヒットしました。ざっくりした計算ですが,1年で約3,500件です。ただ,薬剤師が働くフィールドは薬局だけではありませんので,実際の数はさらに多いと思われます。

多くの薬剤師の先生は,常に様々なタスクが同時並行する状況下で日々の業務をこなしているのではないでしょうか。
処方せん調剤1つにしても,「薬剤Aと薬剤Bの相互作用は?」「薬剤Cの用量はこれで良いのか?」「薬剤Dはそもそもこの患者に適応があったっけ?」等,様々なことを考える必要があります。そうした状況が重なった結果が,いわゆる「ヒヤリ・ハット」を招くのだと思います。

ハインリッヒの法則

1件の重大事故の背景には,29件の軽微な事故が隠れており,さらにその背後には,300件の事故には至らなかった事例(いわゆる「ヒヤリ・ハット」)が隠れている,というものです。
この法則で重要なことは,1:29:300の比率ではなく,大きな事故を防ぐには,その裏に潜む「ヒヤリ・ハット」に目を向け,問題が小さいうちから対策を立てる必要があるということです。
少し見方を変えると,大きな事故は,その当事者だけが原因となるのではなく,それまでに見逃されてきたシステムエラーや他の人的要因,そのほか様々な因子が複雑に絡み合った結果,不運にも起こってしまうということなのではないでしょうか。

「誰かのせいにする」ことは何の解決にならない

事故をはじめ,何かが起きると,多くの人は「誰のせい?」「誰が悪い?」と,いわゆる犯人探しをします。都合の良い人が出てくると「お前のせいだ」「お前が悪い」と,まさに吊し上げのようにその人を批判します。近年はSNSが発達し,匿名性が担保されている(と思い込んでいる)場所から石を投げる行為がエスカレートしているように感じます。その結果,さらに不幸な事態を招いている事例も少なくありません。

「誰かのせいにする」ことは何の問題解決にもなりません。それはむしろ,原因から目を背けているだけに過ぎません。この人が悪いと「思い込んで」,正しい判断を放棄しているだけです。
事故をはじめ,何か良くないことが起きたときは,客観的な目をもって
原因を1つ1つ丁寧に分析し,2度とそのようなことが起きないために対策を講じることが重要です。

私の職場でも,いわゆる「インシデントレポート」というものがあります。医療安全を担当する先生は「責任を追及したいのではなく,なぜそれ(事故や過誤)が生じたのか,なぜ事故に至らずに,ヒヤリハットで済んだのかを教えてほしい」と言ってくれます。しかし,やはりその特性からか,インシデントレポートは「ネガティブなもの」といったイメージが深く根付いているように感じます(自分も全く思わないわけではないですので・・・)。
しかし,目の前の「ヒヤリ・ハット」を軽視した結果,重大事故が起きてからでは遅いのです。今一度,考えを改める必要があるのだと思います。


今回は少し重い内容について,自分の考えを書いてみました。あまり上手くまとめられていないのは急いで書いたからか,はたまた自分の文才が無いからか。
要は,人は簡単に思い込みで間違った選択をするんだから自分だってそうだよね?だとしたら,誰かを責めるなんてできないよね?ということを言ってみたかっただけです。冗長ですみません。

話したいことは山ほどありますが,さすがに長すぎるので終わります。
それでは。

2024.01.03
ただの病院薬剤師

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?