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とり入れ、体内化、内在化、同一化

経営者とエンジニアの属性をもつ私が、精神分析を独学で学ぶ中で難解だった言葉や概念を書いていきます。


精神分析を学び始めての最初の興味は、やはり投影とか転移とか外部に対して能動的に行なっている振る舞いだった。これは私の悩みの大部分が肛門期以降だからかもしれない。しかし、精神分析を学び始めて少し経つと、外のものを心の中に入れる口唇的な現象に関心が出てきた。
この分野でも精神分析の言葉の解像度は高い。とり入れ、体内化、内在化、同一化、と微妙な違いで言葉を分けている。

体内化
いちばん原初的な現象で、呑み込みとも訳されてるように、良いもの、悪いものを丸呑みにして自分の中にあるような状況である。外界のものを体にとり込む最初の段階なので、トラブルが起きた時には気が付きやすい。パーソナル精神分析(松木邦裕)では、以下のような例を出している。

総合失調症で妄想の中に表現される体内化は、たとえば「眠っている間に誰かによって自分のお腹に機械を埋められて、それが電流を流して自分に痛みを感じさせる」と訴えられるように、体内の有害な具体的な異物として存在しつづけられていることが特異的です。

パーソナル精神分析(松木邦裕)金剛出版

嫌なものを食べた時の自分の精神的な反応などを思い出せば、分かりやすいのではないだろうか。

内在化
これはかなり包括的な言葉で、他者の心の一部を自分の心に取り込むような働きを指したり、取り込まれた部分を指したりしている。私はなんとなく、ドラゴンボールでのナメック星人の同化を思い出す。ピッコロは、ナメック星人の戦士(ネイル)と同化して、力と知識を得た。同化を躊躇するピッコロに「心配するな、人格はおまえのものだ、私はただのきっかけにすぎない」と言ったが、知識を引き継いだピッコロの性格は明らかにネイルに似ていった。心の中では違いを認識できるが別離できない状態。

引用 ドラゴンボール(鳥山明)集英社

同一化
これは、体内化、内在化とは扱っているレイヤーが違う言葉だと思っている。プロセスとしては、体内化や内在化を経る可能性はあるが、「同一になる」ことがポイントになる。なのでどういう状況で同一になろうとしているのか、が重要なのだ。一次過程における同一化である「一次同一化」。二次過程における同一化である「二次同一化」。投影して同一化する「投影同一化」。そして、今回の文脈である「とり入れ同一化」。臨床時に問題となる部分や時期をはっきりさせるための言葉と捉えた方がわかりやすい。

とり入れ
これも体内化、内在化とは扱っているレイヤーが違う言葉だと思っている。単体で使われる意味は内在化にかなり近いと思うが、体内化や内在化のプロセス部分を指していると理解している。「とり入れ同一化」はあるが、「とり入れ内在化」(たぶんこの言葉はない)と聞くと意味の重複を感じる。


私の現状の理解を整理してみた。今回は本当に理解の途中という感じだ。しかし精神分析においては、これくらいの解像度でこころが外の世界を認識する言葉の区別をつける必要がある、ということは分かった。

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