死ぬ前に一度でいいから
もう30年以上前の話になります。
高校1年か2年の時。
素敵な先輩の女性と出会いました。
記憶は曖昧になってしまいましたが、
小柄でおっとりしていて可愛い感じの方でした。
学食の麺類を一本ずつ食べる人を初めてみたのも彼女でした。
勇気を出して話しかけてみたところ、
一緒に帰ってくれることになりました。
何度か帰ることができたのか、
一度きりだったのか忘れてしまいましたが、
彼女の家の最寄り駅から、
彼女の自転車を私が押して送っていったことだけは、
鮮明に記憶に残っています。
それは次第に朧げになってしまいましたが、
ずっと忘れることのない大切な想い出です。
死ぬ前に一度でいいから彼女に会いたい。
実家を離れた後もこの思いは頭の中に存在し続けていました。
大晦日だというのに、
帰省した私は、
現在、彼女の家の近くにいます。
ここに来るまでは、長年の思いを遂げるため、
近くにいる人に聞くなどして、
彼女の家を突き止めようとしていました。
でもやめました。
急に押しかけるなんて失礼だと思いました。
近くの神社さんにお参りしていたら、
そんな気持ちになりました。
もしかしたら、彼女も今晩か明日、
この神社に参拝するかもしれません。
私がいたことなど、絶対知る由もなく、
自分や家族の幸せを祈るかもしれません。
それが一番です。
30年以上交差することのなかった私と彼女の人生の線。
今日最も接近したのかもしれません。
せめて、この神社さんの空間で
結ばれることを願わせてください。
そしてまた、それぞれの道を幸せに進んでいきますように。
彼女の日常がずっと続きますように。
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