ダイバーシティ 〈漫画原作/企画書〉 近未来公務員サスペンス
OPイメージ曲
ターゲットとベンチマーク作品
《PSYCHO-PASS》《ブレードランナー》等の近未来SFやデストピア物をベンチマーク作品として着想。
青年誌以上の年齢層がターゲット。
ログラインとあらすじ
《税金滞納者 × 税務省徴収課 = 共に武装化する未来》
先送り思考の果て。
様々な経済政策の失敗は、極度に重税化した未来へと着実に繋がっていた。
そして、拡大し続ける所得格差。
貧困層は生き延びる為に臓器や身体の一部を粗悪な人工人体へ換えて売却し、富裕層はそれを健康な生体人体へと再構成して自らのものとした。
貧しき者達はテクスと蔑まれ、富める者達はヒューマを自称しはじめる。
税金滞納者が増加し複雑化して、税務行政が困難を極める中で、国税庁が職務権限を拡大。財務省より税務機関全てを統括して独立し、税務省となる。
武装化と犯罪化の波が押し寄せる徴収業務に対し、行政代執行の拡充を図る専門組織第三課を編成。
同2年後には捜査権及び逮捕権をも獲得した。
はからずもそこが配属先となった主人公、土門ムラサメ(23)と登戸リョウヘイ(39)は、共に公務員としての職務と世の歪みに対峙していく。
舞台となるのは飛び降り自殺〈ダイブ〉の多い街東京。
揶揄した人々はここをダイバーシティと呼んだ。
テーマやメッセージと書きたい事
社会問題を常に先送りにしてきた先人達への強い憤り。またそれらを、更に先送りにしてしまうのかという自分達に対する葛藤。
世代間ギャップ。
主要キャラクター
⚪︎土門ムラサメ(23)
この物語の主人公であり、税務省徴収義務第三課の新人職員。
地方都市出身のテクスであるポジションをひっくり返すべく苦学を重ねた、人一倍強い上昇志向の持ち主。
夢の税務省入省では浮かれていたが、配属先が三課と知り一夜にして落胆する。
幼い頃から本が好きで、のめり込むうちに瞬読に目覚める。それは速読を遥かに上回るスピードで、解析した知識を自らの能力へ転用出来る特殊な力だった。
暇さえあれば読書を始め、常に老舗ブックアプリの〈KANDAYA〉を手放さない。
幼い頃に父親が疾走し生活困窮者だった体験から、特に男性年長者や高齢者に否定的。
第一話では〈いい大学を出た〉程度に描かれるが、実は国立最難関の東門大を首席(理科3類)卒業した秀才。その後何故この学歴が配属に反映されなかったのかといった陰謀説にシフトしていく。
⚪︎登戸リョウヘイ(39)
二話以降でムラサメとバディを組む事になる同僚職員。
平常時は周囲の何かに寄り掛かる仕草の多い疲れた中年テクスだが、非常時には人が変わったように緻密で俊敏な兵士へと変わる。
武装税務官特別措置により、転属となった元自衛官。
若い頃に外交官として赴任した地で、自爆テロに遭い妻と娘を失う。復讐心と自暴自棄から傭兵となり、世界各地の紛争地域を渡り歩く。
流れ着いたかつての故国では、食べる為だけに自衛隊へと入隊した。
反りの合わない弟が税務省上層部で管理職に就いている。
⚪︎登戸アスム(30)
リョウヘイの歳の離れた弟でありヒューマ。現政権での中枢官僚ポジション。
知略を使い発言権を強め、影の支配者への階段を着々と上がっている。
⚪︎黒家ヒメカ
コードネーム〈クロヒメ〉。ほぼ十頭身の人工人体を、強固なレアメタルで構成したテクス。その身体能力と戦闘力は人智を超える。
富裕層に属し人生の成功者である事を匂わせるが、ヒューマと生体人体に強い嫌悪感を抱く。クリエイティブの支配者。
⚪︎鴎外トキコ(53)
三課課長。冷淡で口が悪いが仕事に真面目。テクスである事にプライドを持ち、卓越した洞察力と判断力で部下を導く。
⚪︎織旗ハジメ(34)
三課職員。警察省機動部隊出身のテクス。常に滞納と犯罪を結びつけたがる。
⚪︎坂倉メイナ(24)
三課職員。ムラサメに先輩風を吹かせているテクス。だが実は、知識も経験も大差ない。
⚪︎藤巻ハルカ(28)
三課司令管理官。ムラサメにとっては憧れの大人の女性であり、捜査に精通したヒューマ。警察省出身のキャリア組。
⚪︎山守エイタ(36)
三課職員。消防庁出身の元消防官のテクス。実はネットオタクでハッキングスキルは特A級。
⚪︎相田タカハル(52)
三課職員。元海上自衛隊官のテクス。卓越した射撃能力を持つが、反社会コングロマリットとの関係を疑われる。
⚪︎錆野ムネヒコ(27)
第一話にのみ登場するムラサメの先輩公務員。
世界観の設定
⚪︎先送り政策が産み落とした、極度の重税にあえぐ世界。
⚪︎中間層が完全に消滅し、進む富裕層と貧困層の格差。
思考を止め搾取される一般貧困層と、智略により権力を握る富裕層。
⚪︎職を奪われ、糧を得る術を失う一般貧困層。臓器や手脚売却の日常化。
⚪︎合法化された遺伝子操作が発展させる、生体部品適合技術。
潜在能力の徹底拡大と拡張を遂げる生体部品。
⚪︎生体の一部または全てを交換する事で、富裕層は更なる延命と健康、そして頑強で健康な肉体を獲得。
⚪︎安価な素材を主体とした人工人体は脆く、耐久性や経年劣化性の点でも、生体人体には遠く及ばず。
それらが構成人体差別を強くしていく。
⚪︎憲法第9条が改正されないまま進む国際紛争への受動的参入。
不満を抱えたまま置き去りにされる自衛隊経験者。
⚪︎インターネット社会ではリスティング(PPC)が完全にAI化して発達。
個人へ最適化された情報が配信されると同時に、それを受け取る事への社会の抵抗感は鈍化傾向へ。
登場する用語
⚪︎ダイブ
生活と未来に絶望し、高い建物から空へ飛び込む症状。その数は、ここ十数年で以前の二十倍へと跳ね上がっている。
建築物高層階への立ち入りチェックは強化される傾向にあるが、それらをすり抜ける過程こそ自殺後の平穏に繋がると流布されている。
⚪︎サンカ(三課)
新橋駅周辺の雑居ビルに拠点を置く税務省直轄の部署。
税金滞納者が武装化し、難易度が進む徴収業務に対し編成された。税務省徴収業務第三課、通称名サンカ。税金滞納者に対する行政代執行を主な業務とする。
国内全域での捜査権及び逮捕権を持ち、専用ヘリと戦闘車両等を保有している。
⚪︎ジブンコード
出生届時に割り当てられるコードで、それが記載されたIDカードをジブンカードと呼ぶ。
高齢者を除くとカード携行率は低く、コードをデバイスに収めたり、光学式のダークタトゥーとして身体の一部へ入れているケースが多い。
国民一人一人の情報が、ネットを介して日々更新され全て集約されている。
立案当初は過去の失策を背景に、野党や国民からの反対が根強かった。また、衛星軌道上から個人を特定しスキャニング出来る機能まである為、未だにその使用を危ぶむ声も多い。
しかし与党は過去の例に習い、クレジット関連企業や金融機関との普及キャンペーンを強行。今やこのコード無しでは、いかなる決済も困難といった状況が作り出されている。
税金等の徴収にも使用され、その際には親族情報へもリンクが可能である。滞納者自身が死亡や資産消失となった場合は、即座に親族への自動転換請求が行われる。
⚪︎超機動車〈メガフォレストHN3〉
サンカに配備された徴収業務用車両。AWD専門メーカーの羽島重工が軍事用に開発した装甲車。
タイヤを市街地用に換装してあるが、ロケットランチャー着弾時でも搭乗者を守りきるほどの頑強さを誇る。
⚪︎UPed〈アップド〉
羽田電算(wing)が展開する、この時代の情報収集・通信用メインデバイス。
コンパクトさが受けて国内で広く普及し、再度のガラパゴス化を始めている。腕に着けるリング型のものが多く、無骨な物からカラフルなデザインまで様々。
表情操作や音声操作(舌打ちやウインク等のオリジナルジェスチャーを含む)により、眼前数センチに選択情報がグラフィック表示される。指向性データを使用する為、他者からは基本的に認知視聴されない。モードの切り替えにより、共有も可能。
アカウントを切り替えて、ビジネスユースとプライベート双方で使われる事も多い。
ここからリスティングと称して、個人向けに最適化された映像と音声やテキスト情報が流されている。
なお、プログラムウィルスによる意識下の操作が行われる可能性は否定出来ない。
⚪︎グレインカーボン
前時代に枯渇した石油資源につぎ、鉱物類も全てレアメタルとして高騰した。
その為の代替物質として見直された、穀物から精製されるファイバー素材の総称。
主に低賃金諸国で生産され、安価で粗悪な人工人体部品の主原料として普及している。
⚪︎羽崎化成工業
人体再生技術を生み出した謎多き企業。戦前戦後の歴史の闇に隠れ、政権を影から操ってきた財閥の一つ羽庭がその母体。系列企業多数。
横浜中央医療試験所事故を演出し、事実上のクローン技術禁止方針策へと国の舵を切らせた疑いは強い。
米国軍産複合体のクラクトマットマティックス、CMM Incとの繋がりも噂される。
⚪︎ウエポナー5.5
テクス体と銃兵器とのリンクをスムーズ化する名目で、羽田電産主導で開発されたプログラム。
未だ試験開発段階にあり、睡眠や意識障害の副作用が報告されている。
その実は、兵器人体運用化に向けたプロセスの可能性が高い。
⚪︎反社会コングロマリット
改正されない法律により、国防職に就く人間達には冷遇が続いていた。
そのような背景から〈元自衛隊員による任務や処遇に不満を持つ層〉を主体として〈かつて反社会勢力と呼ばれたヤクザ層〉〈旧経営者層でありながら現貧困にあえぐテクス〉が組み合わさり、闇社会の複合企業体が形成される。
税金滞納や脱税をはじめとするあらゆる係争に、陰から関与するネットワークとなりつつある。使用する火器も強力で大型化している。
⚪︎メイジュウェル
5月の宝石。半年前から活動が活発化し始めた反社会コングロマリット。海外からの兵器調達能力に長けている。
裏で羽庭との黒い関係が浮上しつつあり、アラブ諸国への兵器部品売却ルートは今後の捜査対象。
⚪︎クリエイティブ
超人的な身体能力を持った男女による謎多き人物群。
出現当初は単体だと見られていたが、後に複数体である事が確認された。
その人工人体は強固なレアメタルで構成されている。
⚪︎misree〈ミスリー〉
ネット上のtoxoplasma(トキソプラズマ)と称される意識下ウィルス。リスティングの普及した社会に忍び込み、利用者の意識操作を行う。
⚪︎タイムシフトハック
UPedの機能の一つであるリスティングとタイムシフトを利用し、設定された時間に強制的な情報注入を行う。
富裕層をターゲットとし、各々に内容を変えた大規模展開が密かに進行中。
⚪︎超高層建築物基準法
衆参両院を通過したばかりの新法。五十階以上の高層建築物に適用され、主にダイブを防ぐ為の対策強化を施工主に促す内容となっている。
頻発化するダイブへの対抗策として、①構造的に高層階への入場者を限定化するものと②テック全てを締め出してしまうもので構成されているとなっていた。
しかし裏では真逆の、ヒューマをダイブへ誘い込む為のシステム混在が後日露見していく。
物語の展開
第一話
満月の高層建築物最上階。
柵をまたぎ越える一人の老いた人影。
ネオンに包まれた街を見下ろして呟く。
「潜るにはいい夜だ」
同日昼間へと時間が戻る。
雑居ビルを包囲する主人公の土門ムラサメ(税務省三課新人職員)と先輩職員の錆野、そして警察省機動部隊隊員数名。
全員が完全武装をしている。
錆野のインターコムに管理官からの情報と指示が届いた。
「了解。行政代執行入ります!」
錆野が応える。
税金滞納者とその協力者のライフルを使用した抵抗が始まる。
激しい銃撃戦の末に行政側が制圧して代執行終了。雑居ビル不動産の差押えと滞納者達を拘束した。
「つくづく俺たちは、何の仕事をしているのかよく分からないよ。こいつら滞納者連中の武装は本格化し過ぎだし。闇で協力する組織の噂までありやがる」
と錆野がぼやく。
錆野と昼休憩でラーメン屋へ。
年寄りや歳上が嫌いな土門は消極的に同行し、書籍アプリを開いて本の虫となる。
錆野はそんな土門に構わず話しかける。
「新人君はキャリア組らしいな?さっき指示出ししてた管理官様達は、キャリア様な上にヒューマ様だけどな」
ヒューマとは、金をかけた生体部品の富裕層が自称している造語だ。
錆野が続ける。
「おかしな話さ。俺たちテックの方が脆いし死に近いのに、安全とは程遠い仕事をしている」
テックとは粗悪な人工部品で構成された貧困層の事だ。
土門も錆野も貧困層出身だった。
そんなテックの飛び降り自殺〈ダイブ〉件数増加のテレビニュースが流れてくる。
「ダイバーシティか。よく言ったもんだよ」
見ていた隣の老人客が呟いた。
飛び降り自殺が多いこの東京を、昔流行った言葉で揶揄して人々が言うのだそうだ。
夕刻に2人は特殊車両で出動。
高層ビル街の影に建つ一軒家へと向かった。
滞納者は中高年男性。妻が2人を静かに迎え入れた。
しかし油断したのも束の間。
大型の軍事ドローンが出現してバルカン砲が火を吹いた。
錆野負傷。危機に陥る。
税務行政への不満をぶちまける夫婦。
負傷した怒りもあり錆野は「自分達のせいではない」と主張。
特殊車両から重火器を持ち出す土門。
本好きの能力から、仕様書を素早く使いこなし装備する。
俯き気味で言った。
「それでも、利用する人にとっては、目の前の自分達が代表者なんじゃないでしょうか。公務員である前に社会人だし、自分は」
満月がのぼる頃、ようやく現場を鎮圧する2人。
しかし何かが飛来落下して錆野が絶命する。
『ここはダイバーシティ。潜った人間が降ってくる街』
第二話以降のストーリー
数日後から、ダイブに奇妙な変化が起きる。
それはテックだけではないヒューマの混在だった。
恵まれた環境にあるはずの者達の、相次ぐ自殺は世間で謎を呼ぶ。
彼らは死を快楽とでもとらえはじめたのか。
土門は新たなるバディとなった登戸リョウヘイ(39)と共に捜査を開始した。
ムラサメが父親との確執から歳上男子を敬遠するのに対し、リョウヘイは歳下男子を毛嫌いする最悪の組み合わせでスタート。
土門ムラサメが歳上男性や年寄りを嫌うルーツとなる、父親から捨てられ生活に困窮した過去が描かれる。
そして苦学の末に、現存する本から全ての知識を得られる、いわゆる特殊能力を獲得。国立トップの東門大を首席で卒業し、キャリアとして税務省に入省する。
登戸リョウヘイのキャラクターは、常に周囲の何かに寄り掛かる仕草の多い疲れた中年。
しかし、非常時には人が変わったように緻密で俊敏な兵器男へ変貌するといったアウトライン。
武装税務官特別措置法により、税務省に転属となった元自衛官であり、若い頃に外交官として赴任した地で、自爆テロに遭い妻と娘を失っている。
復讐心と自暴自棄から傭兵となり、世界各地の紛争地域を渡り歩いた過去を持つ。
流れ着いたかつての故国では、食べる為だけに自衛隊へと入隊。現在に至る。
リョウヘイの歳下男子毛嫌いの元凶である、反りの合わない弟の名は登戸アスム(30)。
政権の中枢官僚であり、闇のある人間。
現政権は人体再生技術を生み出した羽崎化成工業と密接な繋がりを持つが、戦前戦後と強大な権力を握ってきた羽庭がその母体。
この集団が公務員としての主人公達を翻弄し、物語の一つの核となり進行していく。
羽庭が三十年前の横浜中央医療試験所事故を演出し、事実上のクローン技術禁止方針へと国の舵を切らせた事は後にエピソードと共に判明する。
二つ目は反社会コングロマリットと定義された存在であり、その一組織〈メイ・ジュウェル〉が滞納者達を影からコミットして武装化をさせている事が明らかになっていく。
彼らは相変わらず改正されない法律によって[冷遇され続けた国防職に就く人間達]や[かつて反社会勢力と呼ばれたヤクザ層][旧経営者層でありながら現貧困にあえぐテクス]が組み合わさり形成された、闇社会の複合企業体だった。
そして更に三つ目が、経済的に成功したテックから生まれた謎多き集団のクリエイティブ。
ヒューマを嫌悪する彼らは、ネット上のトキソプラズマと称される意識下ウィルスを使って大量の自殺者を作り出していく。
その支配者である黒家ヒメカ、通称クロヒメは人工人体を強固なレアメタルで構成したテクスだった。
以上の三つの核と時に対立し共闘し、自分達の職務に悩みながら2話以降が進行していきます。
サブタイトルには〈コンプライアンスは傾かない〉を考えています。
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