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Origamiの勝算とメルペイの失態~勝敗を分けた両者の戦略~

今回は、経営統合で話題になったOrigamiとメルペイの戦略を中心として、近年のスマホ決済市場について語っていきたいと思います。

メルペイによるOrigami買収

先日、メルペイがOrigamiを買収したというニュースが入りました。買収金額は公表されていませんが、日経新聞によると、買収時のOrigamiの企業価値417億円だったそうです。この金額だけ見ても相当大きな取引であったことが分かります。

売却という選択

Origamiについて調べていて、設立されたのが2012年と分かり驚きました。すごいなこの会社はと舌を巻いたものです。Origamiはわずか7年あまりで企業価値417億円ものビックカンパニーに築き上げたのです。2012年といえ ば、日本ではまだ「キャッシュレス」のキの字も耳にすることがなかった時期でしょう。その頃からOrigamiはキャッシュレス化に可能性を見出していたわけです。                            企業価値とは厳密に言うと、現在の企業の価値ではなく、将来の価値を現在の価値に割ったものなので、Origamiが売却を公表した際は「今後もっと事業が広がって今より何倍もの利益を得られたかもしれないのにもったいない」と疑問を持つ人が多かったそうです。               しかし、私はOrigamiの選択はむしろ正しかったと思います。なぜそのように言えるのか以下で見ていきましょう。

スマホ決済業界の比較

QR決済企業

上のグラフはMMD研究所によって明らかになったQRコード決済の利用率です。さらにもっと詳しく見ていきましょう。

Origami Payの利用低迷

こちらもMMD研究所による調査結果で、どこのQRコード決済サービスがどの程度使われているかというのが分かりやすくまとめられています。   これらの調査結果を見てもらえると分かるように、スマホ決済サービスを提供している会社の中では、PayPay、LINE Pay、Rakuten Payが圧倒的にリードしています。                            また、最近LINE Payとヤフーが経営統合したというニュースは記憶に新しいと思いますが、これに拍車を掛けるかのように、PayPayとLINE Payの親会社が2020年に統合する予定だそうで、将来的にはこの2社がスマホ決済の覇権を握ることが予想されます。                     

しかし、一方のOrigami Payとメルペイはどうでしょうか。上図の利用率を見れば、メルペイやOrigamiがPayPay、LINE Pay、Rakuten Payと比較して見劣りすることが窺えますし、Origami Payとメルペイが経営統合したとしても、PayPay、LINE Payの利用率には及ばないことが分かります。       つまり、メルペイは将来大きな価値を生み出すであろうOrigamiを買収して、スマホ決済サービスに厚みを増そうと試みたが、それでもLINEとヤフーの規模には追い付かないというわけです。               このように言える要因は、スマホ決済の利用率だけではなく、利用者数に対する店舗数が大きく関係しています。以下の図を見てください。

Yahoo!news:モバイル決済

メルペイの失態

これは先日Yahooニュースに掲載されていたものです。スマホ決済サービスを提供している各社の利用者数と店舗数が示されています。       これを見て、私自身改めてスマホ決済業界の実態を明確に理解できました。驚くことに、メルペイとLINE pay、PayPayの利用店舗数がほぼ同等であるにもかかわらず、利用者数に雲泥の差があるのです。           つまりメルペイは一店舗当たりの利用者数が著しく低いということです。 さらに、今後PayPayとLINE Payが経営統合するとなると、両者の差はより一層広がりを見せることになるでしょう。

スマホ決済導入店の対応

これは、メルペイやOrigami Payを導入する店舗側にも関係する話です。まず決済サービスを導入するのにはランニングコストが掛かります。さらに売上何%かの手数料も支払わなければいけないので、今後決済サービスの導入を検討している店舗は、メルペイよりも利用者数が圧倒的に多いPayPayやLINE Payを導入すると考えられます。それによって一方的に差が開いていき、 スマホ決済サービス業界は二極化に分断していくことが見込まれます。  

Origamiの勝算

そうなってくると、先ほどOrigamiの企業価値は推定417億円と述べましたが、実際はもっと低いのではないかと考えられます。        Origami自身もそのことを分かっていたからこそ売却に踏み切ったのではないでしょうか。もし将来的に自社が確実に伸びていくという自負があるなら、売却するのは長い目で見たらその会社にとって損になる可能性が高いです。つまり、このタイミングでの売却はOrigamiにとって絶好の機会であるといえるでしょう。                         

消費者の動向

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私たち消費者側にとっても、同程度の店舗数で利用できるのならば、あえて2社の決済サービスを並行するようなことはしないと思うはずです。   そうなると、PayPayやLINE Payかメルペイのどちらのサービスを利用するかという話になります。当然、規模が大きい前者の方が消費者に対するサービスも手厚いですし、利用者数が多い方が同調効果などの心理的な部分によって、前者を選ぶ人が増えていくと考えられます。            

まとめ

スマホ決済会社

以上のことを踏まえると、Origamiはこの時期に事業を売却したことは良い選択であったと思います。その一方で、Origamiを買収したメルペイにとって今まで以上に赤字が増して、その赤字の回収も困難になりかねない状況となるでしょう。とはいえ、日本ではまだスマホ決済を利用したことがない人の割合は7割以上いるので、将来的に日本のスマホ決済市場は大きな需要があるでしょう。今後メルペイがどのような戦略を練っていくか気になるところです。

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