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Story cubes story 7 虹の人

雨上がりの空に虹がかかっていた。
私は、虹の端が落ちる山々を見つめ、また視線を虹に沿って戻し、蒼穹を見た。
すると、虹の頂点となるところから、手を振りながら降りてくる人が見えた。虹はいつしか、山々への裾を移動させて、私の傍にその裾を下ろしていた。その人は燃え滾る手を振りながら私の方に近づいてきた。

私はしおれた花のように、その人の前に伏した。
静かに燃える火が、そのお方の手でゴウゴウと揺らめいていた。
そのお方が懐から取り出した榊によって私は祝福を授けた。
その日から、私の運は上向いた。
あらゆる政争に勝ち、人に金にモノに恵まれた。

幾年月が流れ、私の刻(とき)は終わりを告げようとしていた。
私はあの方の住まう場所に帰る。
山々の間にある虹のエスカレータに乗り私はあの方の元へ行くのだ。
あの方の燃える手によって、現身の私は焼き尽くされ、魂だけが行くのだ。虹の高いところには、星の船が迎えに来ている。
あの方が、待っている窓が見えた。

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