【赤裸々に喫茶-1】 珈琲伊藤/福岡市西新

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【赤裸々に喫茶-1】
2020年9月27日 (日) 珈琲伊藤(福岡市西新)
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この季節は空気に触れるたびに、心がほろほろに溶けていく。頭の奥から足先まで気持ちよくてくすぐったい。

「目的地まで17分」
速度制限がかかったiPhoneXRを片手に目的地へと向かう。いくら進んでも時間が減らないのは、秋晴れのせいではなかったことに今更気づく。

途中、映画で見たブルックリンを思わせるような並木道で、木の間から溢れる光にうっとりする。これを書いているあの日から3日経った今でも、その瞬間を鮮明に思い出せるほど煌めいていた。

学校の前を通り過ぎ、大通りに出る。
横断歩道で立ち止まりながら再起動したGoogleマップを見る。
「目的地まで1分」
横断歩道を渡ると、綺麗な赤の看板が見えた。


珈琲伊藤。
ここが今日の目的地だ。

シックな珈琲伊藤の扉を押す。
初めて行くお店の扉を開く時が一番ドキドキする。特別な空間へと導かれるまでのわずかな時間で、素敵な空間でありますようにと願う。

店に入るとクラシカルな雰囲気が漂っていた。
店奥から背筋のピンとしたおじいさんが「どうぞ!」と案内してくれた。

店には5〜6組ほどの人が入っていた。若い方からおじさまおばさままで。
BGMは優雅なゆったりとした音楽で(こういった音楽には詳しくないので語れない)、空気の流れが柔らかだ。
多くの人の大切な場所として愛されていることが、店の雰囲気でわかる。

席につき、多くのメニューをみて悩み、悩みに悩んだ結果キャンパスプレスサンドの珈琲セットを注文することにした。

珈琲にはミルクの代わりに固めのホイップがついてきた。ホイップが入ったカップは、キラキラと色とりどりに輝いていて、粋な計らいがさらに幸福度を上げるのだった。

珈琲を一口飲む。美味しい。そりゃあ美味しいに違いない。
(珈琲の味をちゃんと言葉にできるほど、まだ味わえていないのでこれからたくさん知っていきたい)

ただ私は目の前にあるホイップの誘惑に負け、開始数口でホイップを投入することにした。

ぽちゃん。珈琲の上でホイップが溶けて広がってゆく。見ていると私まで一緒に溶けて広がっていった。
ホイップを入れても、勿論美味しい。
こうやって、2度の味を楽しめることを「贅沢」以外に伝えられることがない。

プレスサンドは一緒に来た幼馴染のものと一つ交換した。
種類豊富で味が選べない人は、友人とこうやってシェアするのもいい。

そうやって手に入れたプレスサンドのキャンパス味とケンタッキー味を私は夢中になって食べた。

プレスサンドも付け合わせのサラダも、耳スティックもとてもおいしかった。
特に耳スティック(勝手にそう呼んでいるが)のサクサクさには驚いた。ただ、書いている今、あのめちゃくちゃ美味しかったサクサクを思い出せなくなっていて悔しい。
そしてお砂糖を少しかけると、これまた最高に美味しかった。罪深いけどそんなことも優雅だと思わせてくれたのは、珈琲伊藤だからだと思う。

食後には昆布茶が出てきた。
予想外のサービスで「珈琲伊藤に一生ついて行きます!」そんな気分になった。
だって!珈琲もプレスサンドも美味しくて、それだけでもう胸いっぱいにときめいていたのに、昆布茶まででてきたら私はどうしたらいいんですか。一生ついていくしかないじゃないですか。。

そうしてのんびりと過ごしてしまい、帰る頃にはお客さんが私達とあと一人。
入り口のレジに向かうまでの夕方の光は、今日という幸福を綺麗に包んでくれた。
珈琲伊藤が日曜日の夕方に溶け込んで、今日が終わって行くのを実感する。

生きる力が湧いた日曜日、珈琲伊藤に感謝したい。

2020年9月27日、珈琲伊藤に入って良かった。幸せだ。

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