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ジャングルポケットのあのプリズムの意味と考察<後編>

この記事はジャングルポケットが持っているプリズムは何を表しているのかを考察する記事です。
<後編>なので、まだ<前編>を見てない人は<前編>から見ることをオススメします。
また、内容は盛大にネタバレなので映画をまだ見てないよって人は読まないほうがいいです。

シーン⑨ 夏合宿(1)

アプリでもおなじみ夏合宿です。
ここではポッケ、カフェ、ダンツを遠くから見るアングルからスタートします。ポッケはプリズムを上に投げてはキャッチ、上に投げてはキャッチ、という動作を繰り返します。
何気ない動作ですが、この動作って何かを持て余しているときにしますよね。これって、ポッケはプリズム=ウマ娘の本能を持て余していることを表していると思います。

このあとだんだんと事態が明らかになっていきますが、タキオンがいないダービーを勝ったポッケはウマ娘の本能を失いかけ、自分とタキオンの幻影に悩まされることになります。
夏合宿のこんな冒頭から不穏な空気が漂っているんですね。

フジキセキに呼ばれて3人はトレーニングを開始しますが、ポッケが一歩踏み出したとき、「カチ」という音がしてポッケが「ん?」と怪訝な顔をします。このとき、この音が何なのか明かされません。

それは合宿後の帰りのバスの中のシーンで明かされます。ポッケはプリズムをキャッチしそこね、地面に落としていたのです。これはウマ娘の本能を失った暗喩です。しかもこのときポッケは一瞬、プリズムを落としたことに気づいていませんでした。それくらい本能を失っている、レースから気持ちが離れているわけですね。
ちなみに、プリズムを無くしたわけではないので、このあと気づいて拾ったと思われます。
ダンツの水着姿もっと見たかったなぁ…

シーン⑩ 夏合宿(2)夏祭り

そのあとしばらくはトレーニングのシーンが続きます。走り込みではなく筋トレをするポッケ、それを見て心配するダンツ、浜辺で先頭を走らないポッケ、食事の量が減っていくポッケ、ふわふわキャラへと変貌したアヤベさんなどが描かれます。

そして夏祭りへのシーンへ移ります。ここは分かりづらいのですがけっこう重要なシーンです。
ポッケとフジキセキがラムネを飲みながら会話します。
このとき、祭りにはつきものの花火がたくさん上がっていて、夜空を彩っています。花火だけが映るシーンがありますが、よく見るといろんな色がありまるで虹色です。そう、虹色です。
このシーンでは「虹色の花火=ウマ娘の本能」を表しているのだと私は思いました。

「ダービーを勝ってくれてありがとう」とポッケに礼を言うフジキセキ、それを聞くもどこか冴えない表情のポッケ。
花火がどんどん上がりますが、ポッケはそれを見ようとしません。
つまり、ポッケはウマ娘の本能から目を逸らしているわけです。もしくは直視できないのかもしれません。
周りの祭り参加者はみんな花火を見ていますから、”他者”と”ポッケ”を対比させているとも言えます。

またラムネもひとつの小道具として意味があります。
ラムネを飲むには口のところにあるビー玉をビンの中に落とす必要があります。つまり「飲む」ためには「ビー玉を落とす」という動作が必要です。
しかしポッケはビー玉を落とすことができないでいます。
何かを成しえるためには行動が必要です。
これは「ビー玉を落とせない」=「前に進めない」というポッケの精神状態を表していると思います。

それに対してフジキセキはビー玉を落としています(前に進もうとしている)。
このシーンでのフジキセキはダービーでのポッケの走りを見て「また走ろう」と決意している状況です。
実際に、ラムネを購入する直前に「キミの走りを見てまた走りたいと思ったのは本心さ」と語っています。
前に進もうとするフジキセキと前に進めないポッケを、花火とラムネを使って表現しているのですね。

シーン⑪ 菊花賞のあとに

合宿の帰りのバスの中でポッケはタキオンと自分の幻影に悩まされます。
そしてウマ娘の本能を失った状態で菊花賞を勝てるわけもなく、カフェが勝利します。
ここでタキオンとカフェの部屋のシーンになり菊花賞の映像をタキオンが見ているのですが、ここでいろいろと思わせぶりなシーンはあるものの、正直何を表しているのか分かりませんでした。
具体的には、「ブツッ」とPCの映像再生を止めたような音が2回入ること、途中からカフェが姿を消すこと、です。
プリズムとは関係ない場面ではありますが、個人的には理解が難しいところでした。もし何か掴んでいる人がいたらぜひ教えてください。

シーン⑫ 自販機の横で

陸橋下のナベさんの家?から出たポッケは友人たちと食べ歩きします。その際、ナベさんの家の中にプリズムを置いたままにしてしまいます。
いつも持ち歩いていたプリズム=ウマ娘の本能をついに置き忘れてしまうのですから、かなり深刻な状況です。
それを見たフジキセキは、ポッケを救うことを決意します。

自販機横でうなだれるポッケにジュースをご馳走するフジキセキ。
プリズムを見ると傷が入っています。夏合宿で落としたときについた傷と思われますが、これはもちろんウマ娘の本能に影が落ちている状態です。
「プリズムが光らない」のと「プリズムに傷がついている」のは意味が違うと思うので、「本能を失っている」ではなくあえて「本能に影が落ちている」という表現にしました。

フジキセキはポッケを励ましながら、「これは私は預かっておく、明日川沿いのコースに来て」と誘います。
ちなみにこのシーン、『ROAD TO THE TOP』で三女神様の前でトプロがアヤベさんを救うシーンに似ていませんか?
RTTTではトプロ=光:外灯でしたが、今回はフジキセキ=光:自販機です。ポッケは柳の木側に座り、フジキセキは自販機側に座っています。フジキセキがその光をもってポッケを闇から救い出していると見ることができます。

シーン⑬ 川沿いでのレース

ポッケの前に勝負服で姿を現すフジキセキ。
2人はレースをしますが、そのスタートの合図はフジキセキがプリズムを上に放り投げ、ポッケがそれをキャッチすることです。
ポッケのレースを見てウマ娘の本能を思い出したフジキセキが、今度はその”本能”をポッケに与え返すという印象的な演出です。

スタート直後はポッケはまだ苦しい顔をしており、レースに集中できていません。
しかししばらくして、フジキセキが映画冒頭の弥生賞のときに見せたような光の道が現れる演出が入ります。
フジキセキの前には虹色の光が広がり、そこに向かって手を突き出します。フジキセキがウマ娘の本能に従い”走ろう”とする姿勢を身をもってポッケに示しているわけです。
それを目の前で見たポッケはウマ娘の本能を取り戻して完全に復活します。時間帯が明け方から朝にかけてなのも、「これから待つ輝しい未来」を表していていいですね。

シーン⑭ タキオンの部屋を訪れるポッケ

ここは「シーン⑪菊花賞のあとに」と同じくらい解釈が難しいシーンでした。
ポッケはタキオンの部屋を訪れ、「併走してくんね?」と頼みます。この瞬間、窓からサ~と風が入ってタキオンの髪を揺らします。
これはタキオンの「ウマ娘の本能が揺さぶられている」を表していると思います。

このあと、右にタキオン、左にポッケと真横から見たアングルがありますが、このとき右半分タキオン側の壁には、プリズムで太陽光が反射・屈折した虹色の光が点々と差し込んでいます。
これは、タキオンの中でウマ娘の本能が輝きを取り戻しつつあることを表していると思います。きっかけはもちろん日本ダービーでのポッケの走りです。

このあと、ポッケは今の素直な気持ちをタキオンに伝えます。ガラスにポッケの顔が映ったり、タキオンの顔が映ったり、かなり幻想的なシーンです。
ポッケが言葉を紡ぐにつれて、壁にうつる点々とした虹色の光が部屋全体へと広がっています。
これはなかなか解釈が難しいですが、ポッケとタキオンという二人のウマ娘の本能が混じり合い、反応し、部屋全体を包み込んでいるのではないでしょうか。
ポッケの言葉が終わりに近づくにつれ、カフェがいつもいるソファ付近の光り方もコロコロ変わります。額縁の中もカラフルな模様が浮かび上がっています。ここが個人的にもっとも分からなかったところで、どう解釈すればいいのでしょうか。
カフェやオトモダチが関係しているのか…

最終的にポッケの提案は断られ、ポッケはその場を立ち去ります。
そのあと、タキオンはカーテンを閉めて部屋を片付けます。なぜカーテンを閉めたのか、タキオンは外出してどこに行ったのか、部屋の中でところどころ青やピンクに光っているのか何を表しているのか…、ここも難しいところです。
タキオンが外出したところは、私の個人的な解釈では「医者」です。
タキオンが部屋を出たあと、点滴液が青とピンクに光っていたのがそう思った理由です。

タキオンはポッケの提案を断りつつも、ウマ娘の本能を取り戻しつつある自分を自覚していたのでしょう。いつも歯切れよく話すタキオンが、ポッケに言葉を返すところでは、ゆっくり話していました。
併走というポッケの提案を受けたいけれど、自分は本当に走りたいのか、この足で走れるのか、迷いがありその場では決められなかった。

だからポッケが去ったあと、自分の足に治る見込みがあるのか本気で知りたいと思い、医者のところに行ったのではないでしょうか。

シーン⑮ ジャパンカップ ~フィナーレ~

ここはもう説明不要ですね。
レースで走ることを怖いよなぁって思いながら、ポッケはレベルの高いウマ娘たちに、トゥインクルシリーズ最強のテイエムオペラオーに挑んでいきます。

最終直線ではオペラオーが先に抜け出すも、ポッケは自慢の末脚でオペラオーに迫ります。その際、ポッケの目の前には虹色の光が溢れ、ウマ娘の本能が躍動していることは分かります。
そして今まで自分を苦しめていた幻影を打ち破りゴールします。

ところで、ポッケがラストスパートをかけたとき、ちらっとタキオンを見ます。
「先に行くぜ」
そんな想いをタキオンに伝えながら。
それを受けてタキオンは外に出て走り出します。勝手な想像ですが、ここで走れたのも、医者に「大丈夫」と言われていたからではないでしょうか。
タキオンは橋の上を駆けていきますが、最後には画面左端に虹色の光が現れタキオンはそこに向かって走っていきます(けっこう一瞬なので分かりづらいですが)。
タキオンもポッケ同様にウマ娘の本能を完全に取り戻したとみて間違いないでしょう。

実装されてよかったね

最後に、なぜプリズムなのか

劇中の最後はポッケ、タキオン、カフェ、ダンツが揃ってレースに向かうところで終わります(有馬記念?)。
その後のライブでは楽曲『PRISMATIC SPURT!!!!』が披露されますが、タイトルが「PRISMATIC」…。虹色はこの映画のテーマなのですね。

ところで、<前編>のはじめでも言ったように劇中ではポッケが持っているプリズムが何なのか一切言及はありません。ではなぜこのプリズムを登場させたのか。
これは割と単純で、ウマ娘の本能を表す具体物がないと様々な表現がやりにくかったからだと思います。
この映画はスポ根であり、友情物語であり、ポッケの成長物語ですが、ストーリーの中心は「ウマ娘の本能を失う過程と取り戻す過程」に焦点を当てています。
何度も述べてきたようにウマ娘の本能=虹色の光です。光は物体ではなくある意味抽象的ですから、「失う。取り戻す」を表現するのは難しい。
というわけでウマ娘の本能=虹色の光のメタファーとして具体物が必要、それがプリズムだったわけですね。

以上、長文なのにここまで読んでいただきありがとうございました。
偉そうに書いてきましたが、私が書いたことが正解とは限らないし、そもそも正解はないのかもしれません。
この映画は登場人物が何かを説明するということはほとんどなく、徹底的に観た人の想像に委ねています。
もし私の考えと違うところがあったり、私も気づいていないシーンがあったりしたら、Xで教えてくれると嬉しいです。解釈が難しいと言ったシーンを理解できている人がいたら、ぜひ教えてください。

また、記事を読んだ感想もくれると泣いて喜びます。けっこう頑張って書いたので。

2月?くらいのぱかライブでタキオン世代が映画化すると聞いて本当に喜びました。
タキオンがアニメで動いてしゃべるなんてこの上ない幸せです。
そしてその映画がこれほどまでにクオリティの高いものに仕上がっていることも嬉しかった。
素晴らしい作品は何回でも見たくなるものですが、新時代の扉はまさにそれです。Cygames、CygamesPictures、ありがとう。

また見に行きたい

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