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vol.10 理系の女③

目まぐるしく進むキャッシュレス化。
やがて淘汰されるであろう現金派。

キャッシュレス化の波は居酒屋さんやラーメン屋さんにも押し寄せている。
それでもまだまだ「お会計は現金のみ」というお店も多い。

一方、僕は末期のギャンブル、アルコール、セックス依存性で、信用情報はブラックリスト入り。
そのためキャッシュレス化がなかなか進んでいない。

だがしかし、時と場合によってはPayPay決済に救われる局面もある。

僕が現時点で使えるのはPayPayとデビットカードのみ、ただし銀行口座の残高がゼロのため、キャッシュレス決済はPayPayだとキャリア決済のみ、デビットカードは事実上使用不可となっている。

PayPayのキャリア決済の限度額は10,000円。限度額と睨めっこの日々、限度額が復活すればすかさず目一杯PayPayチャージをするのであった。

僕はお盆真っ只中、妻に仕事と嘘をつき野毛で16時から飲んでいた。
相手はマッチングアプリで知り合った女性Uさん。
地下のもつ焼き屋、テーブルに向かい合わせた。Uさんのノースリーブ、むき出しの真っ白な肩にどうしても目がいってしまう。
全身の血液が股間に集中する、はやる気持ちを生ホッピーで飲み込む。

ちなみにUさんの名前はとても可愛らしい名前だったが、酔っ払って呂律が回らなくなると、
なかなか正しく発音できない名前だった。
僕は何回も名前を呼んだが、後半ぐらいからちゃんと呼ぶことができず、Uさんに笑われていた。
でもとても美しくて、笑顔の可愛いUさんらしい名前だった。

そして現在は18時位だろうか。
Uさんがトイレに立った隙に、お会計を頼む。そして運良くPayPay決済に成功し、想定外の僥倖に小躍りしていた僕は、2軒目のお店に向かっていた。
Uさんと手を繋ごうと思ったのだが、まだ微妙に距離感を感じたので、野毛の地下でもう1軒ハシゴをすることにした。

1軒目のもつ焼きから、斜向かい数秒の大衆居酒屋。

僕はメガハイボール、Uさんは梅干しサワー(だった気がする)で本日2度目の乾杯をする。フードは何も頼まなかった気がする。
※今となれば、お通しが出たことすらも覚えていない。
そう言えば1軒目のお店で頼んだ料理は、豆腐、枝豆、モツ煮込み、千枚刺しぐらいだったか。
ほとんど空きっ腹に近い状態だったかもしれないが
かなり酔っていて、すでにもう空腹かどうかすら良く分からなくなっていた。

こちらのお店は一杯目限定で380円でメガジョッキハイボールが飲めるお店ということは、事前にYouTubeで見ていた。

僕は調子に乗っていた。もちろんメガジョッキに臆することなくグビグビと飲み続ける。

このあたりから僕の記憶がさらに断片的になっていく。
テーブルは向かい合わせ、Uさんはとにかく笑顔が可愛いこと、Uさんは2杯目に甘めのサワー系を飲んでいて、「少し味見してみる?」みたいな感じで、お酒を飲ませてくれた。

なぜかシーシャの話題になり、気づけば無意識のうちに僕から「このあとシーシャバー行ってみませんか?」と誘っていた。
Uさんも意外にノリ気で「そろそろお店を出ましょうか」という流れに。

僕の残金は大丈夫なのか。ホテルinまでもつのだろうか。
PayPayが残り2,000円、現金が10,000円ぐらいだろうか。

テーブルでお会計をしようとすると、おもむろにUさんが財布を出し支払いの準備をしている。
僕はUさんのその小さくてかわいらしい革製のお財布を見つめながら、お支払いする手を制する素振りを試みるも、僕の残金状況もあるので、制する力も弱めでついついUさんのご厚意に甘えてしまうのであった。

Uさんが支払いを済ませ、2軒目を出る。
上りのエスカレーターに乗り、シーシャ屋を目指して地上へ向かう。

地上に出たところで、僕は何気なくUさんの手をとった。
Uさん自然に手を繋いでくれた。

手を繋ぎ歩くも、僕はすでに前後不覚の状態。Googleマップを頼りにシーシャ屋を目指す。

僕とUさんは互いに手を取り、恋人のようにくっつきながら、シーシャ屋さんへ向かった。

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